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短編にする程でもない断片色々

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寒い




「寒いんだ、ここはひどく寒い」
兄さんがぽつりと呟いた言葉に、俺は首を傾げる。ぽかぽかとあたたかな日差しが差込み、庭先にはカタツムリやテントウムシの姿も現れるようになったし、近くのビーチへ行けば気の早い連中がビーチバレーでもしているようなあたたかな陽気の日だった。それなのにカーディガンをしっかりと羽織って、ブランケットまで膝に巻いた兄さんは白い顔をして窓の外を睨んでいる。だがふいにその目が睨んでいるのはこの青々とした木々が揺れる庭ではないような気がし、眉を寄せる。
「兄さん、もう春だ。これからどんどん暑くなる」
今年はとりわけ異常気象らしいから、と続けた俺の言葉を振り被るように兄さんが頭を振る。するとそのパサパサとした銀髪が何か白痴めいた光を帯びて揺れる。
「寒い。寒いだろうが」
お前は寒くないのか?と言葉を続けたそうな兄さんに、俺は戸惑った。