Kissing cousins
さてと。
「押収物の管理は?」
「一通り調査が終わり、第三資料室に保管されています」
「鍵を持ち出せるのは一部のヤツだけだな?」
「通常の資料も一部保管されているため、尉官以上は許可申請すれば使用は可能です」
ホークアイの返答に、よし、とヒューズは一つ頷くと部屋にいる一同を見渡した。
「今回とっつかまえた下っ端の上に何かいるのは確実なんだが、そいつのシッポを掴みたい。今回こっちにとばっちりが来たのは、多分そいつにとって都合の悪いもんが押収された市長の中に混じっちまってるからだろう」
でないと今更また資料洗い直せとか言い出さないだろうからな。
「私の指示なしに押収物に近付いた者がいれば、その行動をマークしろ」
「…査問となると、それまで大佐はこの件にはノータッチになるのでは?」
「あー、そこがミソなんだよな」
ハイ、と手を挙げたヒューズに皆の視線が集まる。
「実は軍法会議所の方で一つの判断が降りた。事実確認は当然のことだが、あまりにとんとん拍子に話が進みすぎている。一旦ある程度の時間を置いた方が良いってことで」
にやり、とヒューズは人の悪い笑みを浮かべて言葉を切った。
「だから今回のこれの指令がオレに降りるのは明日になってる。こっちへの連絡は午後になるだろう」
「…緘口令ですか?」
「指令が飛んでくるまでは、な。だから今回の件は、軍法会議所の中でも一部しか知らないと~ってもシークレットな情報のはずなんだが」
「それまでは監査とは関係ない別件で捜査協力に来ている、ってことですかい」
「そう、今日はフレンドリーな調査員、明日はこわーい査察官。よろしくな」
・・・・・・って、あれ?
そこまで聞いて、何か違和感を感じて上官の方へ視線を向ける。
物言いたそうな視線を受けて、彼はゆっくりと口元に笑みを引いた。
「――――何処ぞの早耳な閣下からは今朝早々に厭味のプレゼントを頂いた。・・・いったい何処から話を聞き付けたのかは知らんがね」
「そりゃおかしいよなぁ、まだ出回ってないはずのネタなんだがなぁ」
「私のサインが入っているらしい裏取引の証明書は、明日押収物の中からさり気無く発見されるはずなんだがな?」
あー・・・・・・そういう事、ですか。
「・・・つまり本命はその早耳な閣下って事なんですかね」
「先日お前がふんじばった奴は、その限りなく黒に近い閣下の元部下でな。当時中央で妙な不祥事やらかして飛ばされた、つー見事に灰色な前歴の持ち主でな」
そしてその時の不祥事でバラバラになった元部下の面々が数人、この東方司令部にも勤務してたりするわけだ。
つまり先ほどのリストはヒューズの仕入れてきた、現在東方司令部にいる灰色組の一覧てことで。
「一旦甘い汁を吸うことに慣れた奴は余程の事がない限り、同じような誘惑に負ける。中には未だ蜜の味を忘れられん奴がいるかも知れねぇ。リストの名前と顔の一致しない奴がいるなら、すぐ確認を」
「・・・面倒ごとは事足りている。なるべく早いうちに尻尾をふんづけてしまいたい。さっきの連中から目を離すな」
「Yes,sir」
作品名:Kissing cousins 作家名:みとなんこ@紺