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なにより嫌う束縛をなによりも愛した

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その2・帰りを待っていたら『待ってなくていいから、寝て!』と言われた。

池袋に行くと言ったから怪我を予想して救急箱を用意して待っていただけなのに血相を変えてまで怒られた。
この時、どうして彼が怒ったのか分からなかったけれど、次に怒られた事はもっと分からない。そして、この日も一度も目を合わしてくれなかった。



それは唐突に訪れた出来事。


「…俺、出張行ってくる」

いきなり言われた言葉に自分の心臓が跳ねたのが分かった。
出張なんて、何処へ行くというのか。今まではそんなことなかった。

いつもなら、他の誰かに頼んで行かせていたのに。
だからだろう。焦ったんだと思う。彼に拒絶されて。

「急、に…どう、したの」

これで何回目だろう。今までのことがフラッシュバックする。
声が震えているのが自分でも分かるくらいに動揺していた。

「波江、さん…?」

それを知ってかどうか、臨也の動作が鈍くなった。私はそれに必死に堪えた。
何に堪える必要があったのか、それは、今気を緩めると何かが切れてしまう気がしたから。

涙を、零してしまいそうだった。

「波江さん…泣いてるの……?」

だけどそれは叶わない。
零してしまった、涙。

泣きたくなんてなかった。だけどもう止まらない。
ぼやける瞳にはもう、臨也の顔を映せなかった。