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なにより嫌う束縛をなによりも愛した

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こうして彼女を見つめて、何分が経っただろう。
決して長くはないはずだけれど、俺には何時間にも感じた。

そしてそれも終わりを迎えた。

「いざや」

波江が俺の名前を呼んだ。泣き止んだ彼女の声は少し、掠れていた。
しゃがんだままの俺は固まった足の痺れの痛みに耐えながら、体を立ち上あげると彼女の手を引いてソファーに誘導した。

彼女を座らせてから自分も隣に座って、さっきまで散々問いかけた言葉を再び口にする。

「どうしたの?」
「……」

また、沈黙が訪れた。だがさっきとは少し違う。
波江が俺の手を震えた手でぎゅっと握ってきたんだ。

そして赤く、薄い唇から言葉は紡がれる。

「あなたは…、わたしをどうしたいの」
「…何のこと?」
「わたしがいやなら、そういえばいいじゃない…っ」
「は…?」

涙を零して激昂する彼女を見て、戸惑うと同時に首を傾げた。
彼女の言っていることが分からない。嘘ではない、本当に彼女の言葉の意味が分からなかったんだ。

再度、何のことだと彼女に問い直しても、首を振るだけ。
肝心なことは何も分からないまま。ただ彼女の涙だけが流れた。

もどかしい、彼女が泣いていることが。
彼女が自分を見ないことがもどかしい。

「波江さん…──波江…!」