エコロジスト≒ノスタルジスト
午後からの授業は現代社会だった。
担当のフィンランドは他の教師と比べると温和な事で知られており、授業の仕方にも温かみがあって評判だ。また、やむなく始業時間に遅れてしまった者や宿題を忘れた者、そして明らかなサボリにまで割と温情的な対応をすることで知られている(勿論、限度を超えるとそれなりの指導へと切り替わるが)。
今日の授業もいつもと変わらぬ和やかなムードで進行しており、おまけに時間帯も昼下がりとあって うつらうつらと舟を漕ぎだす生徒もちらほら。
授業内容は、昨今世界各国で叫ばれているゴミ問題に焦点が絞られたものだった。
「―で、古くなって不要になった物もすぐには捨てずに工夫して大事に扱う― いわゆる
リサイクルですね。そうしてみると案外、斬新な製品になったりするんですよ~」
・・・・・・始業から既に10分が経過しており、ついにしびれを切らしたスイスが手を挙げ『無人の席の主』を連れ戻す旨を伝えると、フィンランドは快く承諾した。その後も授業は相変わらずほんわかとした体で再開され、生徒たちの眠気も更に増長されたようだ。
もう少し締まりのある授業にしてはどうなのかとつい口を出したくなるが、それよりもさっさと連れ帰らないと自分もノートをとる時間がなくなってしまうので
早々に席を立ち教室を後にする。
「本当に世話の焼ける・・・・・・まったく、昔から変わらん奴なのである」
廊下をずかずかと歩きながら独りごち、先を急ぐ。
向かう先は既に決まっている。3階に位置する音楽室だ。
作品名:エコロジスト≒ノスタルジスト 作家名:イヒ