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エコロジスト≒ノスタルジスト

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尚も言い募るオーストリアを遮り、御託は要らぬからいい加減に戻れ と
口にしかけた、その時。
不意に彼が何を言っているのかを悟るや否や、スイスは目を見開き絶句する。

「なっ・・・・・・貴様―」

「この私が時間をロクに守れないなどとお思いですか? ・・・・・・相変わらず鈍い人ですね」

道標を見失ったのなら分かりませんが と続けながらピアノを後にし、立ちすくむスイスに歩み寄る。
こうして面と向かい合うのも随分、久方振りなことだと彼は思う。目の前の相手は自分よりも頭ひとつ分ほど背が低く、歳の割りには小柄な方だ。
あの頃は大して差はなかった筈なのに、いつの間に、こんなに追い越してしまったのか―


「・・・・・・誰が、鈍い だと? 」


しみじみとスイスを眺めていたオーストリアは、やおら発せられたそれに目を瞬かせる。その声音はひどく低く、鋭い聴覚を持つ彼の耳には微かに震えているようにも聞こえた。



・・・・・・1度目、2度目、そして今回も。
自分が連れ戻しに行く際に彼が弾いていたのは同じ曲だった。そういった偏った選曲をするのは滅多にないことで、不審に思ってはいた― だが気付かないふりをしていた。
幼い頃によくオーストリアが練習しており、いくら音楽に疎いスイスでも記憶には残っていたのだ。

その曲名を“KINDERSZENEN”  意味は
“子供の情景” ― 大人が、子供時代に抱いた儚い夢を表した楽曲。



「ふざけるのもいい加減にするのである! わ、我輩だって・・・・・・
我輩とて 一度も ― ! 」

忘れたことなど― と そう続く己の発言に、はっと我に返ったスイスは不自然に言葉を切り顔を逸らせる。意に反して顔に昇る熱は止まることを知らない。
それを見せまいと そっぽを向きつつも葛藤のあまり動くことは叶わず、やはり立ちすくんだままであった。