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すずき さや
すずき さや
novelistID. 2901
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glamorous striker

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 佐野はわずかに顔を赤くさせた。それを見て周囲は答えは言わずとも分かった、という空気が流れてしまう。
「ほお」
 緑川は感心したような声を上げたせいで異様な空気が流れる。佐野は周囲に誤解を与えたことに狼狽した。
「いいなぁ、佐野君。おれも聞かせて欲しいなぁ」
 気が動転している佐野を見て石神が茶化したように言うと、佐野は慌てて首を横に振った。
「おれは聞いていません。知っているのは結果だけです」
 佐野はやっと重い口を開いてそれだけつぶやく。そして、再び貝のように口を閉ざした。
「結果だけ……」
 緑川は長い指を顎に置き「もったいないことを」と聞こえるようにつぶやいた。隣の村越は難しい顔を向けるが、緑川は涼しい顔だ。
「じゃあ。堺から言うしかないな」
 丹波は佐野がこれ以上、口を開かないと決めたことを悟ると堺に顔を向ける。
「俺だって言わねえよ!」
 堺は憮然とした表情のまま腕を組んでいた。
「どうして言わなくちゃならないんだ」
「よし、言わないとくすぐるぞ」
 丹波はそう言って立ち上がり堺の背後に回る。
「どうしてそうなるんだよ!お前、何するんだ!」
「言葉通りくすぐる」
 丹波は遠慮のない様子で嫌がる堺の脇の下へ手を突っ込む。
「覚悟しろ、堺!」
「やめろ!バカ」
「やめない」
「子供か!」
「俺は少年の心を永遠に忘れないぞ」
 開き直った声を上げながら容赦のない手で丹波は堺の脇腹をくすぐろうとする。抵抗する堺の肩を石神が笑いながら押さえて来た。
「よせって。バカ!」
 二人がかりで囲まれたため、堺は本気で抵抗する。力いっぱい腕を振りまわしている堺に対して二人は苦戦している。
「堀田っ。手伝え!」
「やだなぁ」
 丹波の声に堀田は小さく本音を漏らすと佐野に「今、加わったら本気で殴られるよな」と耳打ちした。
 佐野は黙ってうなずく。アルコールの入った人間に何を言っても何をしても無駄だ。そう悟ると微妙な年齢の二人は静観を決め込んだ。
 もう一人の杉江は考える顔つきで、一見じゃれ立っているようにも見える年長のチームメイトたちを眺める。
「堀田君。見てるだけか!」
「とりあえず様子見を言うことで」
 不平を洩らす石神に向けて堀田はしれっとした顔をして受け流した。佐野もとりあえず堀田に同意するようにうなずいて見せた。
「それじゃあ。俺が」
 杉江が珍しく反応を示し立ち上がる。
「堺さん。ごめんなさい」
 そう言って頭を下げると激しく抵抗している堺の体を押さえた。
 体格の良い杉江に押さえつけられ堺は抵抗もむなしく動くことができなくなる。
「杉江、よくやった!」
 丹波が笑いながら「覚悟しろ」と言いながら堺の体をくすぐり始めた。
「バカ。やめろよ」
 最初は笑いながら身をよじっていたが、身動きできず苦しそうに目を閉じた堺を見て丹波は一瞬、どきりとするがためらわずに脇腹をくすぐる。
「マジで、やめろって」
 弱弱しく首を振って嫌がる様子を見せていたが、構わずに手を動かしていると堺はぐったりとうつむき抵抗しなくなった。
 身を震わせ頬を上気させた堺を見て、少し変な気分だぞ、と丹波は思ったが構わず弱そうな場所をくすぐり続ける。
「……あっ。……やっ」
 じっと息を殺していた堺は耐え切れずに最後に漏れた小さな声をあげた。それを耳にして抑えつけていた全員の手が止まる。
 堺はその隙をついて息も絶え絶えになりながら逃げ出しテーブルから距離を置した。
「もう。本当にやめろよな!」
 顔を赤くして怒っている堺を真面目な顔つきで全員が見つめた。
 真面目腐った顔つきをしたチームメイトの視線を受けて堺は思わず身をかばうように胸の前で腕を交差させる。
「な……なんだよ」
「ごめん。俺が悪かった」
 丹波は謝りながら水でも飲むか、と言って突然労わり始めてきた。堺は訝しみながらもうなずいた。
 一緒になって押さえつけていた杉江と石神はそっと二人から距離をこそこそ距離を置く。
「冗談でもやっちゃまずかったな」
 石神はこっそりと杉江に耳打ちする。杉江は神妙な顔をして黙ってうなずいた。
 アルコールのせいだけでなく頬を赤くさせた二人がテーブルに戻ると傍観者たちと目が合う。
 何故かその場にいた全員は後ろめたい目つきでお互いの顔を見合わせた。
 一人、飄々としたまま緑川はあごに手をやりながら少し離れたところに立つ堺へ視線を向ける。
「これは予想以上だな」
 動揺を見せずに緑川は沈黙を貫いていた村越へ耳打ちした。一拍の間を置いて村越は重々しく口を開く。
「……そうですね」
「あっ。あれで満足した?」
「なにがですか」
 緑川の言葉にぎょっとなりながら「ああ。悪ふざけが過ぎてましたね」と、はぐらかす。
「キャプテンは助けなかったのになぁ」
 村越の言葉に緑川はそう言ってグラスを傾けた。
「暴れたら止めるつもりでしたよ」
「あれ。そうだったの?」
「そうですよ」
 取りつくろうに咳払いをした村越を横目に見て緑川はふふ、と口端で笑う。
「まぁ。色々な想像を掻き立てる声だったな」
「えっ……」
「世良がうらやましいなぁ」
 村越は返答できずにグラス傾けた。隣の村越を半分からかいながら緑川は怒る堺となだめる丹波の二人を見る。
 息の整わない堺を丹波がごめんごめん、と謝りながらミネラルウォーターの入ったグラスを差し出していた。
 緑川の目には感情的になって苛立つ堺を丹波がなだめているように映った。
 好き勝手に言われて好き勝手にいじられれば怒るのも無理はない。
 だが、こうやってアルコールの勢いで自らの秘密を暴露させられた方が後々、ストレスが少ないはずだ。
 そんなことを考えながらテーブルに集まった面々を観察する。
 全員、納得しているような達観したような顔つきだ。薄々気付いていた人間関係はこうしてはっきりと浮き彫りになったことで、少しはすっきりするだろう。
 堺も好奇の目で見られることも減り居心地が良くなるだろう。
 しばらくの間、堺の興奮の収まらない様子だったが、グラスから冷えた水を含むと少しずつ落ち着きを取り戻し始めていた。



「想像以上に色っぽい声で驚いたな」
 緑川のよく通る声を耳にして居合わせた全員、ぎょっとなって思わず声の主へ目を向ける。視線を受けた緑川は首をかしげて見つめ返した。
「おかしなことを言ったか?」
「いいえ」
 村越は思わず首を横に振ると咳払いをして誤魔化した。
 年長者組に混じっていた赤崎は顔を真っ赤にさせてうつむいたまま身動きがとれっずじっとしている。
「若者には刺激が強すぎたみたいだな」
「みたいですね」
「えっ。何スか?」
 赤崎は慌てて顔を上げる。緑川と村越から気の毒がるような目を向けられていた。
 生意気盛りの赤崎もチームのキャプテンとベテランGKに向けて言葉が見つからない。赤い顔のまま口をへの字に曲げて黙ってしまう。
「赤崎は飲み過ぎだから顔が赤いってことで。な?」
 堀田が助け船を出すように言うと、赤崎は別に飲んでませんけど、と言って横を向いた。
「素直じゃないぞ」
 赤崎の態度に堀田は苦笑する。プイと横を向いて強がっている赤崎を面白がるような目で周囲の大人たちは見つめた。
作品名:glamorous striker 作家名:すずき さや