こらぼでほすと すとーかー1
。食事に行くなら、一緒に行きませんか? ついでに、スーパーとか近所の案内もします
よ? 」
「悪いけど、お願いするよ。」
ぶらぶらと食事に出かけると言っても、地理がまったくわからないから、アスランの申
し出は有難い。
「刹那、僕の出身地域ではね、引越しすると、引越しソバっていうのを食べるんだ。だか
ら、今夜は、お蕎麦ね。」
「おそば? 」
「うん、あっさりしてる和食の麺なんだ。後ね、天ぷらっていうのもあるから。ティエリ
アとアレルヤは、お蕎麦って食べたことある? 」
すでに、晩飯のメニューが、勝手に決定されているらしい。この地域ならではの風習が
あるなら、まあ、それには従っておこう、と、アスランたちのお誘いに、機嫌良く従うこ
とにした。
「おい、じじい、やって欲しいことがあったら遠慮なく言ってみな。」
朝から、珍しくハレルヤが顔を出して、珍しい言葉を吐いた。
「荷物持ち頼めるか? 」
「ああ、お安い御用だ。それから? 」
「え? うーん、昼飯のメニューは何がいい? 」
「それは、欲しいもんじゃねえーだろ。今日なら、なんでも買ってやるぜ? 」
「はあ? おまえ、どうかしたのか? 」
「今日は、あんたに親切にする日だって、キラが言ってたんだ。だから、たまには親切に
してやろうってな。」
そこで、昨夜の夕食風景について思い浮かべた。引越し祝いなるもので、結局、ハイネ
や八戒、悟浄、シン、レイたちも合流して、みんなで、日本蕎麦の会席なるものを食べた
のだ。ここまで、大人数になってくると、店の個室で宴会状態だった。たぶん、そこで、
キラが何事か言ったのだろうことは、予想が付いた。
「今日って、何かの記念日なんだよな? 休日だとか言ってたから。」
「ああ、俺らには関係ねぇーけど、あんたには関わりがある。」
「ん? 」
「自覚ねぇーよな? はははははは・・・・・・まあ、今日の真夜中までは、俺は親切だ
ぜ? ロックオン。」
からからと笑いつつ、部屋から出て行ったハレルヤに、首を傾げつつ、八戒から渡され
た宿題の本に目をやった。今度は、ティエリアが部屋に入ってきた。刹那は、トレーニン
グの一環で、ロードワークに出ている。
「何か欲しいものはありますか? 」
「どっか行くのか? 」
「ええ、コンビニまで。」
「ティエリア、今日は、何の祝日か知ってるか? 」
「確か、敬老の日といって、老年者を敬う日だったと、昨日、キラから聞きましたが?
」
・・・・ハイ?・・・・・
それは、俗に言う年寄りというか高齢者を敬うということではないか? と、気付いた
。
・・・・いや、確かに、じじいって呼ばれてるけどさ・・・・・
ハレルヤは一番の年長者に向かって、「じじい」 と呼んでいるわけだから、あいつ的
には、そういうことになるんだろう、と、ロックオンも納得した。
「どうせ、午後から買い物に行くから、今はいいよ。」
「そうですか。では、出てきます。」
ティエリアが部屋から出てから、おかしいものが吹き上げて、ロックオンは笑い出した
。理由は、かなりおかしいのだが、それでも、ハレルヤが一日限定で親切にするというの
が、かなり笑えた。普段から言動は乱暴だが、アレルヤと同じくらい気遣いをしているの
だ。たぶん、自分たちだけが目の治療も終わったので気にしているのだろう。敬老の日に
かこつけているところが、なんとも可愛い、と、思ったからだ。
「ロックオン、どうした? 」
笑い声が聞こえるほど大きかったのか、ハレルヤが部屋に入ってきた。いやいや、なん
でもない、と、手を振ると、また出て行く。しばらくして、また戻ってきて、ミネラルウ
ォーターのペットボトルを渡された。
「そんなに笑ったら、喉が渇くだろ? 」
「・・・・・別に、いつも親切だろ? おまえらはさ。いちいち、敬老の日とか言わなく
てもいいぞ。」
「うっせぇーんだよ。俺様がやってやるっていってんだから、素直に言えってっっ。」
「風邪ひいたら、看病してくれる権利とか欲しいな。あと、俺が弱ってる時の家事代行と
か、ティエリアのお小言引き受けチケットとかさ。そういうのが欲しい。」
ロックオンの言葉に、ハレルヤは心底、呆れたというように口をぽかんと開けた後、け
っっと舌打ちした。
「んなもんは言われなくても、やってやんよ。」
「おう、そうか。あはははは・・・・悪いなあ。」
バタンとベッドに伸びたら、上からハレルヤが真剣そうな顔を覗かせた。
「前から気になってたんだが、じじいの身体、本当に大丈夫なのか? 」
「まあ、あまり回復は早くないな。結構、擬似太陽炉の粒子を浴びたらしいから、遺伝子
段階でヨタってるんだろ。」
「・・・・やっぱりな。そうじゃねぇーかと思ってた。アレルヤも気にしてたんだ。フォ
ローは俺らがするからよ、じじいは無理すんな。」
元のように筋肉が付いていれば、階段を転がり落ちたぐらいで、そんなに痛みは長引か
ない。それ以前から考えても、やっぱり回復は遅いだろう。ティエリアが、きっちりした
タイムスケジュールを組んで管理しようとしているのも、たぶん、そういうことだ。
「しばらくは頼む。」
「おう、任せろ。」
「しかし、両側が違う目の色ってのも、なかなか綺麗なもんだな。」
見上げると、そこにはクロムイエローとシルバーグレーの瞳があって、両側とも視力を
取り戻している。ぎろりと、こちらを睨んでいるのは、二人ともが見えている証拠だ。
「今更、そんなこと言ってるなよ、じじい。」
対して、ハレルヤから見えているのは一対のピーコックブルーの瞳だが、ひとつは、動
いていない。それを見ると悲しくなる。これが治らなければ、マイスターへの復帰は難し
いだろう。
右目のこともあるし、そろそろCBにも連絡しておいたほうがいいかもしれないな、と
、考えていたら、「そういう趣味があったのか? アレルヤ。」 という声と、「あなた
がたはっっ。時と時間を考えなさいっっ。」 という声が聞こえた。
「ティエリア、それ、『時と場所』じゃないか? 」
「・・・・じじい、ツッコミどころは、そこじゃないぞ。」
ふたりして重なるようにして、ベッドにいるわけで、まあ、そういう行為に見えなくも
ない。ゆっくりと、ハレルヤは起き上がって、刹那のほうへ振り向いた。
「ハレルヤのほうか。」
「刹那、俺の好みから、じじいは外れてる。今日は、敬老の日だから、じじいに優しくし
てただけだ。」
「ああ、了解した。」
それだけの弁明で、刹那は納得したのか、廊下を歩いて行った。それも、ツッコミどこ
ろに問題がないか? と、ロックオンは疑問に思いつつ、首を捻る。
「ロックオン? それは事実ですか? もし、同意なしということなら、俺が、これを殲
滅しますが? というか、無事ですか? 遅かったということはありませんか? 」
「・・・・ティエリア、落ち着け・・・・・始まりもしてないし、そんなことやってねぇ
作品名:こらぼでほすと すとーかー1 作家名:篠義