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B.PIRATES その2

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「あのですね朽木隊長。ご覧の通り、負傷者が山のようにいるんです。誰も彼もが働きづめで、人手も足りない。船長に、つきっきりで看護することなんか、やりたくても出来ないんですよ。」
「……。…そうか。…人手が必要なら、海軍から何人か、人を派遣しよう。部下の山田花太郎などは、医療の心得もある…」
「ああ、そう言ってくださってよかった。花ちゃんなら、もう使ってます。恋次さんも、あと、伊江村さんも、お借りしてます。あの人、かなり使えますね。もっとも、不眠不休で働いてもらったので、みなさん今少し壊れていらっしゃいます。覚醒したら、また働いてもらいますね。」
「……貴様は…許可もなく、部下を…」
「だから、今、許可を頂けたじゃないですか。」

 …この図々しさは、誰の教育だ…と、白哉は思った。
 白哉に怒りはなかった。だが、ひどく呆れた。…ただ単に、怒りを通り越しただけかもしれないが。
 どちらにしろ白哉は、数日間の浮竹船での滞在で、この手の船員のマイペースさに慣れてしまっているようだ。
 …まあ仕方ない。この船の現状を知っていながらも、海軍から早急の協力を出さなかった私にも、非はあるか…と、白哉は諦めたように軽くため息を吐いた。
 そうして黙ってしまった白哉に、荻堂は続けて言った。
「今のところ、この船の内部に精通していて、よく働いてくれる海軍兵はすべて(勝手に)お借りしていますので、それ以外の助っ人はもう必要ありません。義務的に働くような人は居ても邪魔ですし。ただ、困ったことにあと一人、使えるのに働いてくれない人がいるんですよ。」
「誰だ。」
「あなたです。朽木隊長。」
「………。」
 荻堂は、手に持っていた包帯や薬品を取り分けて白哉に押し付けながら、早口で言った。
「さっきも言ったように、浮竹船長は最初の処置を施して以降、放っとかれっぱなしです。多分、船長は今頃、大変なことになってます。
 包帯替えて、血止めが必要そうならこの薬を患部に塗布。あとは、こちらの飲み薬を、無理やりにでも口移ししてでも、浮竹船長に飲ませて、寝かしつけてください。よろしくお願いします。ありがとうございます。」
 勝手にそうまくし立てると、荻堂は早足で去って行ってしまった。
 白哉は、押し付けられた薬品類を持ったまま、当分の間動けずにいた。 

 …反論する暇も、怒る暇もなかった。 …荻堂は何と言った?…この私が…?浮竹の手当てを…?

 白哉は呆然としながらそう思い、少し考え込んでから、こう結論を出した。

 …荻堂の無礼に関しては、浮竹から厳重注意をするよう言っておけばよい。どちらにしろ、私は浮竹の様子を見に来たのだ。このまま引き返すわけにもいかぬ。この医療品は持っていくだけして、後は他の者に任せよう…。

 そして白哉は、またひとつ軽いため息を吐いてから、ややゆっくりとした足取りで浮竹の船長室に向かって行った。


 船長室を訪ね、部屋に入るなり浮竹の姿を確認した白哉は、言葉を失った。
 浮竹は、床に座り込んで書類を眺めていた。何故、床に座るのか解らなかったが、それはべつに問題ではなかった。問題は、傷を負った浮竹の左腕だった。
 傷が完全に塞がってないためであろう、ひどく出血していて、腕に巻かれていた包帯は真っ赤に染まり、浮竹本人がなんとかその出血を抑えようとしたのか、別の布が患部に、痛々しいほど不器用に巻かれていた。流れ出る自分の血液に悪戦苦闘したのか、浮竹の衣服も所々赤く染まり、見れば床にも点々と、赤黒く固まった血の模様ができていた。
「…何を…しているのだ、浮竹。」
「よう。白哉。来てくれたのか。よかった。話したいことがあったんだ。」
 半ば怖々と声を掛けた白哉に、浮竹はいつものように嬉しそうに言った。だが、振り向いた浮竹のその顔は、出血のせいであろう、かなり顔色が悪かった。
「何をしている、と、聞いている。」
「何って。船がこんなになっても仕事はあるし、…死傷者の数や被害状況も把握して事後処理しないといけないし…」
「…何故、床に座っている。」
「掃除がしやすいと思ってな。所々に血が落ちて、困るんだ。下手に動けん。」
「その前に、動き回るから出血するのであろうが。何故、大人しく寝ていないのだ。」
「……荻堂と同じことを言うなぁ…。斬られたのは腕だけだし、仕事ができない訳じゃないよ。やることは山ほどあるのに、ゆっくり寝ているなんて、嫌だよ。」
「何を言っている!」
 白哉は思わず大声を上げていた。
 …荻堂が、浮竹が「大変なことになって」いるだろうと言った意味が解った! 何なのだこの男は!物を知らぬ子供か?!
 そう思いながら、白哉は叱る様に浮竹に向かって言った。
「まずは傷を治すことが先決であろう?!『仕事ができない訳じゃない』だと?その顔色はなんだ!むやみに動き回ったせいで出血した結果がそれだ。やがて貧血で倒れるのは目に見えている!」
「あ…ああ…うん…すまん…。で・でも…もう血は止まったみたいだし…。」
「やかましい!今すぐ!黙って!腕を出せ!」
 白哉の剣幕にたじろぎながら、浮竹は大人しく従って、その場に座ったまま腕を出した。
 白哉は浮竹の傍らに座って、血まみれの、巻かれているのか縛ってあるのか解らないような布と包帯を解いた。
 露になった傷口は、とても痛々しかった。
 綺麗に縫合をされてはいるが、肩から肘にかけて深く切られたそれは、到底簡単に塞がるものではなく、いまだに縫った間から肉が見え、血が少しずつ流れ出ている。
 白哉は顔をしかめ、荻堂に手渡された医療品を使い、てきぱきと浮竹の腕に、指示されたとおりの処置を施した。

「…ありがとう、白哉。」
 綺麗に包帯を巻き終えた白哉に、浮竹が礼を言うと、白哉は険しいその表情を変えずに、すっと立ち上がり、言った。
「服を脱げ。浮竹。」
「…はい?」
「聞こえなかったか。服を脱げと言ったのだ。」
「は?え? 何で?」
 戸惑う浮竹に、白哉は苛ついたように言った。
「着替えるのだ。当然だろう。その血まみれの衣服で、ベッドに横にはなれぬ。嫌なのか?…脱がぬと言うなら、脱がすまでだ。」
 言いながら、剣に手を掛けた白哉に、浮竹は焦って言った。
「わ!解った!脱ぎます!脱ぐけど……、…何で『脱がす』って言いながら剣を抜こうとするんだ、白哉…」
「決まっている。衣服を切り裂くのだ。手っ取り早く、手が汚れぬ方法だ。…何故手を止めている。もたもたするな、浮竹。」
「…あ・うん。すまん。脱ぐ。すぐ。」
 そうして、浮竹は着替えさせられ、白哉に見張られながらベッドに横になった。
「眠れ。」
 ベッドの傍らで白哉がそう言った。浮竹はなんだかくすぐったいような、幸せな感じを覚えた。
 だが、それも束の間で、白哉は次の瞬間にはくるりと浮竹に背を向け、寝室を出て行こうとしていた。
「白哉。戻るのか?」
「私は看病に来たのではない。ここに居たら、またどんな面倒を押し付けられるか解らぬ。」
「ああ、それは悪かった。面倒かけたな。 だが、もう少し居てくれないか。話さなければいけないことがあるんだ。」
「眠れ、と、言っただろう。お前には安静が必要だ。」
作品名:B.PIRATES その2 作家名:おだぎり