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B.PIRATES その2

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「確かに、私は呆けていた。お前の話の途中からは、少しも頭に入っておらぬ。悪かった。だが、本当に疲れているわけではないのだ。浮竹、話の続きをしてくれ。何を、言いかけていた?」
「……したい。」
「何?」
「…キスしたい。」
「……な…?」
 浮竹は、真剣な表情でそう言い、すっと白哉に近寄ると、抱き寄せようとするかのように、白哉の二の腕をぐっと掴んだ。
 白哉は、驚きのあまり声も出せずに、目を見開いて浮竹を見た。
 白哉のそんな表情をじっと見つめながら、浮竹がゆっくりと顔を近づけ、片手をそっと白哉の頬に添えた。
 白哉は、いつの間にか逃げられなくなってしまっている状況に気が付き焦って、浮竹の身体を離そうと、浮竹の胸に手を押し当てて、言った。
「…う…浮竹…っ 待て…。」
「嫌か?」
 顔に息がかかる位に近づいた浮竹は、囁くようにそう言った。浮竹の熱く、低い声が、白哉の身体を震わせた。
「嫌…では…、嫌ではない…、だが…浮竹… 」
「白哉…。」
 浮竹が、じっと白哉を見つめた。いつもの穏やかな瞳ではない、情欲を含んだ、熱い眼差しで、白哉を見つめた。そして、一言、呟いた。
「…したい。」
「浮…ッ…」
 白哉が何か言おうとするのを遮るように、浮竹の唇が白哉のそれに重ねられた。
 最初の一瞬、白哉の反応を見るように軽く触れるだけのそのキスは、すぐに、貪るような深いものへと変わっていった。
 浮竹に、余裕がないのがわかる。
 後ずさろうとする白哉を力強い腕で引き寄せ、逃がさないと言わんばかりに掻き抱く。
「…う…、んっ…」
 浮竹の激しさは止まることを知らず、白哉は浮竹の腕に包まれながら、ソファに押し付けられるように抱かれ、深く口付けられていた。
もはや白哉には、自分が座っているのか寝ているのかも解らなかった。
「…は…ぁっ…」
 白哉が掠れた吐息を漏らした。
 …胸が熱い。身体中が、…熱い。
 浮竹が、すっと白哉の唇を解放した。白哉は閉じていた目をゆっくりと開け、熱に浮かされたようなその瞳で浮竹を見た。浮竹の背後に、天井が見えた。
 …ソファに、押し倒されている、と、白哉は気付いた。
 けれどそんなことは、白哉にとってはどうでもよかった。今はただ、浮竹がキスを止めて、何もせず不安そうに自分を見つめているだけなのが、不満だった。
 …もっと、欲しい…と、それだけを考えていた。

 …他のことなど、どうでもいい。
 何も考えたくはない…。
 ただ、このまま、浮竹だけを…、 …………。

 そう、考えて、白哉はふと、我に返った。
「……あ…、…。」
 驚いたように目を一瞬見開いて、白哉は、状況を確認するかのように、周囲を軽く見回した。

 浮竹は、白哉をソファに押し倒した状態で、ひどく困惑していた。キスに夢中になって、勢いでこの体勢になってしまったのだ。我に返ってつい唇を離してしまったが、浮竹は、この体勢で、この後どうしたらよいのか解らなかった。
…して、しまっても、いいのだろうか…、と、欲望と理性の間で、ひたすら悩んでいた。

 …白哉に許可を…とるべきだろうか…。

 そんなことを考えていた矢先、目を閉じながら息を弾ませていた白哉が、うっすらと目を開けた。
 そして、目元がほんのり赤く色づき、熱っぽく見えるその瞳を、まっすぐに浮竹に向けた。同じように色づいて濡れた赤い唇が、何か言いたそうに、微かに震えた。
そんな白哉が今、浮竹の下で、無防備に横たわっている。
 浮竹は堪らなくなり、白哉の服に手をかけてしまいそうになった。その一瞬先に、突然白哉が驚いたような表情をして、体を強張らせた。
「…白哉…?」
 白哉は、不安そうに名を呼ぶ浮竹に答えず、無言で、上に乗っていた浮竹の身体を押しやりながら、ソファから身を起こした。その表情は険しく、多少怯えたような感もあった。
「白哉…、すまん…!気を悪くしたか?本当に、すまない…!」
「…いや、浮竹…。謝らなくていい、…私は…。」
 白哉は、ひどく混乱している様子で、額に手を当て、考え込んでいた。
浮竹のほうは、白哉が怒っている様子ではないことが解ったものの、それでも、自分の不埒な行為が、白哉を不愉快な気持ちにさせてしまったのは間違いないであろうと思い、深く反省し、後悔していた。
「白哉…さっきのことは…、」
「浮竹。すまないが、 今日は、…もう帰る。」
「…! 何でだ?!やはり、俺のことを怒っているのか白哉?!」
「違う。そうではない。そうではないが…考えたいことがあるのだ…。私は、部屋に戻る。」
 そう言って立ち上がった白哉の手を、浮竹は素早く掴んで引きとめ、言った。
「白哉!…俺は、お前に嫌われたくはない…。俺の、先程のお前に対する強引な行動が、お前を傷つけたのなら言ってくれ。頼むから…!」
「…浮竹…。」
 必死な表情で白哉に言う浮竹を、白哉は少し悲しそうに見つめ、「お前を嫌ったりなどせぬ。」と言い、浮竹に向き直って言った。
「お前が悪いのではない。…ただ、本当に、…少し、一人で考えたいのだ。…浮竹…。」
 白哉は、浮竹を見上げて言った。浮竹が、心底不安そうな顔で白哉を見つめていた。
「…俺は、白哉のことが、好きだ。どうにかなりそうなほどに…。お前と、ずっと、傍に居たいと思う…。」
「………。」
「お前が好きだ。白哉…。」
「……解って、いる…。」
 白哉は浮竹を見上げながら囁くようにそう言い、いまだ不安そうな浮竹の表情を見て、少し困ったような顔をした。
そして、何を思ったのか白哉は、ふと目を伏せて、少し首を傾げたかと思うと、そのまま、すっと背伸びをした。
「……!」
 白哉の唇が、浮竹の唇の端を掠めるように、とん・と、触れた。
「………。」
 呆然とする浮竹に向かって、白哉が先程と変わらない口調で言った。
「浮竹。今日は、もう部屋に戻る…。明日、また話そう。」
「……うん。」
「ではな。」
「……うん。」
 白哉の、可愛らしいとさえ思える初々しいキスに、浮竹は魂を抜かれたようになり、白哉が退室した後も、当分はそのまま、うっとりとしていた。

 白哉は、早足で自分の部屋へ向かった。
 胸がきりきりと痛むような感じがした。…とても、気分が悪かった。
 自室に入り、扉を閉めるなり、そのまま倒れこむように床に膝を付いた。そして、頭を抱え込み、絶望感に満ちた表情で、心の中で叫んだ。

 …私は、なんと愚かなのだ…!
 白哉の胸を痛めていたのは自己嫌悪の念だった。

 …浅はかだった…!
 自分が、こんなにも…浮竹を求めているとは…!
 何もかも捨ててしまいたいと、思ってしまうほど、浮竹を欲しているとは…、なんと、愚かなのだ…!!

 白哉は、恐ろしかった。
 自分は、感情を常にセーブできる人間だと思っていた。事実、今まで、そうであった。だが、浮竹を前にすると、もはや感情を乱され、何も考えられなくなる自分が居る。
 もう、感情を抑えることなどできない。
 浮竹が、欲しいと思った。

 海軍としての誇りも、任務も捨てて…? 私は、無様にも欲に溺れ、堕落していくのか…?
そう、…このままでは、そう、なってしまうのだ…。
作品名:B.PIRATES その2 作家名:おだぎり