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背中の守りは任せたぜ

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言葉を発すると同時に小十郎の持つ刀の刃を握り、これ以上自身を傷つける事を阻んだ。小十郎からはそれ以上の血は流れなかった。代わりに政宗の血が畳を紅く染めた。政宗は、小十郎が短刀を握る手を緩めた事に気付き、同じように短刀から手を離した。金属音が静寂の中響き渡る。
「なんということを!」
金属音が合図になったかのように、小十郎は驚愕した声を上げた。その一方で勢い良く着物の袖を引き裂いた。手から流れ出る血を拭い、これ以上出血しないように縛る。その様子を見ながら、政宗は静かに口を開いた。
「小十郎の役目ならあるだろう。いかなる時もオレの背中を守れ 」
この申し出に小十郎は首を横に振った。
「できませぬ。政宗様の背中を預かるはずの身でありながら、刀を握る事などできなくなった身です。その役目を果たす事などできましょうか。・・・ならばこの身が存在する理由などございません 」
折れない小十郎。同じように政宗も譲らなかった。
「守ることができなくても、オレに知識を与えれば良い」
「政宗様に授けられる知識など、当の昔になくなっております 」
「だがっ!」
尚も小十郎の考えを改めようとする政宗に対し、小十郎は深く息を吐いた。 その様子に、政宗は己が身を乗り出していることに気付き、姿勢を正した。
「家臣と民を両方取る事が全てではないのです。一人の家臣が姿をなくす事と、多くの民を失う事・・・どちらかを選んでくだされ。分かりきったことです」
以前、似たようなことを言われた事を思い出したのか、政宗は僅かに苦笑したが、すぐに表情を元に戻した。
「秤にかけることは嫌いなんだよ」
「では、小十郎は秤に載せなさるな 」
「・・・っ!」
小十郎はすでに政宗の家臣でもなければ、奥州の民でもないと言ったようなものだ。 この言葉に政宗は息を呑んだ。
「小十郎は武士として、またあなた様の右目として十分に生きました。今が引き際とも思っております。ですが、そう易々と命を落とすつもりはありません。 」
「小十郎・・・」
「山に入ればお会いする事はできなくなるでしょう。ですが、山から政宗様の治める奥州が天下を取るのをこの目で見届けましょうぞ。 」
政宗を見る目は彼が幼少の頃と相も変わらず、芯を持っていた。それを折ることは政宗には出来ようにもなかった。
「・・・I see. そこまで言うんだ。俺が天下を取るまで・・・生きろよ?」
「承知!」
言うと同時に部屋に入ってきたときよりも深く頭を下げた。その様子を見た政宗は、胡坐をしていた足を片方立て、頬杖をついた。
「Ah...まいったな。小十郎の野菜が食えなくなるのか」
「政宗様、ご冗談を」
先ほどまでの張った空気は政宗の一言でいつもの二人がかもし出す雰囲気に変わった。


作品名:背中の守りは任せたぜ 作家名:ギリモン