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こらぼでほすと すとーかー3

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「あのさー、今夜から、刹那とロックオンは、うちに来るって、どう? 明日、休みだしさ。うちの近所なら、ジョギングしても大丈夫だろうし、俺、トレーニングの相手もするぞ? 働いてるおっさんなんだから、休み以外は昼に現れることはないんじゃないか?」

 おやつを食べ終えた悟空が、大人組の議論に、いきなり参戦してくる。で、悟空の意見は満更でもない。

「ティエリアたちは、どうすんだよ? サル。」

「ラクスんちへでも避難すれば? 」

「おまえ、刹那と遊びたいだけだろ? それなら、全員、オーナーんとこへ避難すりゃいいだけじゃねぇーか。」

 悟浄の指摘に、ちっっ、と、悟空が舌打ちしたことで、目論見がバレた。そこへ、背後からアスランにがばりとキラが抱きついてくる。

「ねーねーねー、明日、休みなんだから、みんなで別荘へ避難すればいいんじゃない? 悟空も一緒においでよ。そうすれば、みんな、無事だし、安全だよ? 」

 で、当人はストーカーについての被害を微塵も感じていない大明神様は、基本的に刹那の心配をしているだけだ。あのストーカーと顔を合わせないように配慮されているから、危険な目にも遭っていない。ただの良い人という認識だと言うのだから、さすが電波天然、と、他の者たちは呆れていたりする。

「とりあえずは、そんなとこでしょうか? ロックオン、明日、何か予定は? 」

「これといってはないです。」

「それなら、今夜から、あちらへ泊まって下さい。帰りは、水曜日の午後くらいにすれば゛、ストーカーと鉢合わせもないでしょう。」

 それに、別荘なら、雑用は、あちらの人間たちがやってくれるし、トレーニングも本格的にできる。どちらにせよ、週に一度か二度は、別荘へ行くことになるのだから、それでいいかもしれない、と、八戒も、キラに賛成した。 



 月曜日の夜に、そのまんま別荘へ逃走ということになった。となると、マイスター組の管理をしている八戒も同行かと思っていたら、キラがニパニパしつつ、悟浄に近寄ってきた。

「ちょっと遅れたけど、これ。」

「ああ? なんだよ? 」

 一通の封筒を手渡して、キラは刹那のほうへ走り去る。黒子猫と遊べるのが、とても楽しいキラは、もう、悟浄なんてものは無視だ。

 中身は、どっかの御食事券らしいチケットだ。それも日付は明日とある。

・・・・あいつ、無理なこと言いやがるな・・・・・

 どう考えても、明日は別荘にいるのだから、このチケットを活用できるはずがない。これは嫌味か? と、それを丸めようとして、アスランに止められた。

「悟浄さん、それ、使えますから。」

「はあ? おまえまで何言ってんの? アスラン。」

「キラが、どうせ、エロカッパさんは、何もしないだろうからって、用意したんですよ。」

「あいつ、喧嘩売ってんのか? 今ならもれなく買うぞ? 」

「だから、俺が、別荘のほうは仕切りますから、悟浄さんたちは、そっちへ。ロックオンがいるから、八戒さんの手を煩わせることはないでしょう?」

 弱っていた親猫だったから、世話が存分にできなかった。そのために、八戒が借り出されていたわけで、とりあえず親猫が日常生活に支障がないまで回復しているから、子猫たちの世話ぐらいなら容易いものだ。

「やっぱ、イベントはやらんと意味がないだろ? 悟浄。」

 横手から、そのチケットを取り上げて、ハイネが大笑いしている。それぞれ、ホストなんて仕事をしているので、そういうイベントには敏感だ。

「おまえまで何を・・・・」

「だって、あんたらときたら、月曜日にぴんしゃんしていらっしゃるんだからさ。キラじやなくても気を回すだろ。・・・・たまには女房を喜ばせることしとけよ? 」

 がばっと首に腕を巻きつけて、最後は小声でハイネが、悟浄の耳元に囁いた。そして、取り上げたチケットを悟浄のスーツの内側ポケットへすとんと落とした。

・・・・て、うちは、あそこの全開ばかっぷるみたく新婚でもないんだしさ・・・・・・

 もちろん、悟浄だって、自分の連れ合いの誕生日ぐらいは覚えている。だからって、花を贈るような恥ずかしいことはできない。昨年、ものすごく凝ったメガネのフレームを贈ったから、今年は、何もしなかった。連れ合いのほうも、それで拗ねるほどのことはないし、どうも、いちいちイベントをやろうという気力がない。だから、日曜日はいつものように過ごして、月曜日を迎えたのだ。



 別荘のほうは、アスランと、なぜか鷹まで加わって同行することになったから、八戒は、そのまま休暇を楽しんでくれ、と、押し切られて家に戻った。

「よかったんですかね? 」

「いいんじゃねぇーか? ママニャンも普通に動くのは問題ないんだし、どうせ丸一日ぐらいだからさ。」

 別荘には、使用人もいるし、家事一切をやるなんてこともないから、ロックオンにとっても楽はできるだろう。

「なんで鷹さんがついてるんだか、僕は、そっちのほうが心配ですよ。」

「あれはさ、たぶん、それなりに警戒してるんだと思うぜ。キラのストーカーが軍人だって言ってたからな。」

「あと、ロックオンですかね? 」

「無理しなきゃいいらしいけどな。あの性格じゃなー。」

 詳しいことまでは把握していないが、どうも鷹は、ロックオンのことを心配しているらしく、何事かあった場合のサポートを申し出ている。あの子猫たちがへばりついているから、そうも心配しなくても大丈夫だろう。

「何か飲みますか? 」

「いや、それよりさ。・・・・明日、これな。」

 内ポケットから、そのチケットを差し出して、八戒に手渡す。はい? と、それを受け取りつつ、つれあいも不思議そうに首を傾げた。

「なんですか? これは。」

「キラが、おまえにってさ。」

 それで、全てを理解したらしい八戒は苦笑している。毎度の事ながら、キラは、倦怠期夫夫とでも思っているらしく、イベントごとに、それを推進してくるのだ。

「つまり、このために、僕らは、こっちに残ったわけですか? 」

「そういうことらしいぞ。・・・・・て、言っても、今更な、俺、おまえにいろいろとお祝いを述べるつもりは、これっぽっちもねぇーんだけど? 」

「僕も祝われるつもりはありませんよ。祝う年齢でもありませんしね。」

「どうする? 」

「三蔵と悟空も呼んで、たまには、ちゃんとした食事をさせましょうかね。」

「ま、そういうとこだよな。」

 ふたりっきりで食事なんて飽きるほどしているわけで、今更、イベントにかこつけてまでやることはない。どうせなら、このチケットを楽しく消化したほうがいい。悟空は、次の日に学校があるから夕刻までに戻ってくる。それを回収して、三蔵と待ち合わせれば良いだろう。

「メールしておきます。」

「俺、シャワー浴びるわ。」

 風呂場へ向う悟浄の背中を見送って、八戒は忍び笑いを漏らした。さすがに、向かい合ってイベントのお祝いなんてものを口にするのは、自分たちにはできそうもない。何かが欲しいと思えば、その時に口にしているし、言いたいことも、その都度、消化している。だから、何気ない食事でいいのだろう。