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こらぼでほすと すとーかー3

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 水曜日の午後から、マンションに戻ってきた。クルマで送迎してもらったので、マンションの玄関で合流だ。

「今日は、クルマはやめてタクシーにしてくださいね、ロックオン。」

 マイスター組のデビューということで、マイスターたちは、お客様にわやくちゃにされてしまうだろうし、おそらく飲まされることになる。そうなったら運転なんてできないから、アスランが、そう忠告する。

「ん? 俺の客は、大食いだけど、ウーロン茶だぜ? アスラン。」

「あの方の相方さんは飲むんですよ。アレルヤ、ハレルヤに今日は変わってもらってくれるかな? 橘様は、ハレルヤとティエリアを、ご指名なんだ。」

「ああ、はい、お店に行ったら入れ替わります。僕は、あまり飲めないし、ティエリアも無理だと思うんですが? 」

「そっちは、バックヤードに任せてくれ。きみたちのは、なるべくノンアルコールか薄いものにするつもりだから。ティエリアは、普段通りに振舞ってくれ。橘様には、きつめでもいいから。」

「わかった。」

 少し休んだら、店に移動するので、ここで、その打ち合わせをやってしまおうと、アスランがエントランスを入ったところで、それらをざっと説明した。で、こういう話になると退屈しちゃうのが、キラと刹那だ。ぼぉーっと、刹那が親猫の右腕を掴んでいたら、キラが、つんつんと、その頬を人差し指でつついた。

「刹那、コンビニまで、お菓子買いに行こうか? どうせ、この話は、もうちょっとかかる。」

「ああ。」

 で、お財布を持っていないキラは、今度はアスランの腕をつついて、おこづかいを貰う。コンビニまで徒歩十分とかからないから、アスランも、すぐにいくらか渡してくれた。

 出発と、キラたちが出かけて、アスランの説明が終わってから、ロックオンが、コンビニまで迎えに行くつもりで歩き出す。

「俺が行きますよ。」

「いや、明日の食パン買ってくるの忘れてた。」

 ほんと、過保護だな、と、アスランも、それを見送ることにして、部屋に戻った。アスランにしても、キラの上目遣いのうるうる攻撃は避けられない。あれを受けると、好きなモノを好きなだけ買っていい、なんて、ついつい、口走ってしまうのだ。その点、それに流されないロックオンは、逆に拳骨で阻止してくれるので、アスランにとっても有難い存在だ。





 コンビニまで、徒歩十分だし、まさか、こんなウィークデーの昼日中だと油断していたら、コンビニまでの途中で、声をかけられた。

「やあ、キラ。」

「グラハムさん、こんにちは。」

 キラは、朗らかに手を挙げて挨拶しているのだが、刹那は、ぎょっとした。そこにいるのは、先日、二時間以上追いかけっこをした変人だ。相手も刹那に気付いたのか、キラの背後を覗きこんで目を輝かせた。

「なんということだ。キラは、まさに、私の運命の女神だ。私、このグラハム・エーカーの運命の恋人を導いてきてくれたというのか? 」

「ん? 刹那のこと? え? 刹那、グラハムさんと知り合いなんだ? 」

 いや、昨日は、なぜ、別荘へ泊まったと思ってるんだ? と、刹那は、キラに問いただしたい。キラと自分にへばりついたストーカーから避難したはずだ。だのに、キラは、それを忘れているみたいな態度だ。

「こいつは、おかしい。キラ、逃げよう。」

「え? いい人なんだよ、グラハムさんは。刹那が風邪ひいたことがあっただろ? あの時も、初対面だったのに、心配してお見舞いを買ってくれたんだ。」

「では、キラが見舞いに行くといったのは、この少年のことなのか? では、私たちは、あの時、運命の出会いを果たしていたということかっっ。まさに、愛っっ、これは、間違いなく愛の成せる業だっ。」

「あはははは・・・・グラハムさんは、刹那が大好きなんだねぇー。」

 そこで、ほのぼのと笑っている場合ではないだろうと、刹那は、ぐいっとキラの腕を引っ張って回れ右をした。しかし、だ。それより早く、その変人が刹那の腕を掴んでいた。

「少年、これは、もはや逃れようのない運命だと、私は感じた。さあ、私と親交をより一層深くしようではないか。・・・ふふふふ・・・何、怯えることはない。私は紳士だ。きみを優しくエスコートすることができる。」

「離せっっ、俺に触るなっっ。」

 きっしゅあーーーーーっっと、いつもより激しく威嚇するように睨むのだが、なぜか、その変人は、さらに笑みを深めただけだ。

「グラハムさん、刹那と付き合うなら、ママの許可がいると思うよ? ほら、ママが来た。」

 キラは、そう言って走り寄ってくるロックオンに視線を向けた。ものすごく慌てているところを見ると、やっぱり交際なんて難しいんじゃないかな? とか、キラは考えている。

「あんたっっ、うちのに何をするっっ。」

 腕を取られて逃げられなくなっている刹那を、ロックオンが、その腕から引き剥がした。

「何をするんだ? きみは? 」

「俺が悪いみたいに言うなっっ。刹那、大丈夫か? キラ、生きてるか? 」

 ふたりを背後に隠しつつ、とりあえず安全確認をする。その間に、相手は、ふむと、それを見て、口を開いた。

「お義母様、初めまして、私くし、グラハム・エーカーと申します。」

「はあ? 今なんつったよ? なんで、おかーさま? なんだよ? 俺のどこを見たら、女に見えるんだ。」

「私の運命の女神 キラが、あなたを、『ママ』と呼んだから、それに従った。そんな外見上のことは、どうでもいいだろう。少年は、私の運命の恋人だ。何モノにも、この絆は断ち切れまい。よって、お義母さまは、この交際を認めるしかあるまい。」

 とりあえず、落ち着こうと、ロックオンは深呼吸する。もう、なんていうか、いろいろと痛い台詞なので、頭が理解するのを拒絶している。まずは、キラに拳骨をぽかっと一発食らわして、刹那に視線で、「走れ」 と、命じた。たったかと走り出した刹那を追い駆けようとしたグラハムを足払いして、キラを担いで、ロックオンも走り出す。

「刹那、大通りで、タクシーを捕まえろっっ。」

「了解したっっ。」

 走り回ったところで゛、相手が諦めないのは、前回でわかった。となれば、さっさと距離を空けるしかない。

「ロックオンさん、なんで、僕を担ぐの? 」

「おまえに理解させるより担いだほうが゛簡単だからだよ。」

 事情のよくわかってないキラに、いろいろと説明するより、このほうが手っ取り早い。タクシーに飛び乗ってから、アスランに連絡することにした。



 そのままへ店のほうへ逃げてください、とのことで、クルマで十分とかからない店のほうへ移動した。店のほうは、準備のために午後から開いているからだ。だいたい、店を開けるのは、トダカか八戒で、閉めるのはアスランということになっている。

「おや、早すぎますよ? キラ様。」

 入り口から、キラが入ってたので、トダカは目を丸くした。ナンバーワンなので、それほど早く来る必要はない。

「今日は特別。」

 ちゃっかりと、近くのコンビニで買い物までして、やってきた。続いて、刹那とロックオンも入ってくる。