こらぼでほすと すとーかー4
さすがに、店内で騒ぎは起こさないだろうが、キラや刹那に抱きつかれでもしたら、元フェイスとか元スナイパーとか元エンディミオンの英雄とかが、黙ってはいないだろう。ついでに、キラのパシリ二名と、マイスターのふたりも参加するに違いない。それなら、穏便に済ませられる方法で対処したほうが安全だ。
「鷹さんと虎さんを呼んでください。打ち合わせをさせてもらいましょう。」
「というか、フロアーでやろうぜ? 八戒。どうせ全員参加になる。」
こういうことには、乗り気になるのが、『吉祥富貴』のスタッフだ。店でサービスという名目でやることなら、問題はない。さて、一丁締め上げましょうかね? と、素晴らしく綺麗な笑顔で、八戒も同意した。
もしかしたら、という仮定の下に、フロアーやら事務室にいたのやらを集めて、打ち合わせをした。サービス業の辛いところで、お客様である限り無茶な暴行などはできないが、そこはそれ、言葉はソフトに、行動は、少しアクティブに、ということで、過剰サービスと言い換えることは可能だ。
「くくくくくく・・・・・そうかそうか、とうとう、直接攻撃か。ならば、俺のスペシャルブレンドをごちそうするべきだろうな。」
虎は、楽しそうにスペシャルブレンドを考えている。まあ、その程度で対峙できるようなものではないが、弱ることは弱る。
「それなら、キラさんの手料理のほうが絶大の効果が期待できますが? 」
「レイ、それ、限りなく殺人だと思うんだが? 」
家事生活能力を放棄しているキラの手料理というのは破壊的に怖ろしい。なぜ、ただのオムレツが、あんな虐殺兵器となるのか、というほどのものが出来上がる。レイは食べていないが、アスランから必死に止められたことがある。もちろん、ハイネは、それを食べて、地獄の一歩手前まで散歩した経験がある。
「それは最終兵器ということにしたらいいじゃん。それよりさ、とーさんに強力カクテルを作ってもらって酔わせるほうが安全じゃないか? 」
「口当たりが軽く、ベースはウォッカということなら、『カミカゼ』がいいだろう。いろいろと混ぜるほうが酔いも早いので、アルコール度数の高いもので、他にもいろいろと準備しておくよ。」
キラ様のためだから、と、トダカは、シンの意見を肯定する。とっても爽やかに微笑んでいるのが、余計に迫力がある。ホストクラブなのだから、そのサービスは一番マトモな攻撃だ。
「あのさ、せつニャンに、わざと触らせるっていうのも有効だぞ。たぶん、キラが怒るだろうからな。」
「ちょっと、フラガさん、うちの刹那が触られるなんて拒否します。だいたい、あのおかしな言動だけでも刹那の精神によくない。」
鷹の意見には、ママにゃんが反論し、傍にいる刹那をぎゅっと自分の傍へ寄せて隠す。
「フラガさん、そんなことになったら乱闘になりますよ? 僕もハレルヤも黙っていられない。」
アレルヤも反対したが、ティエリアだけは、「それは有効だろうな。」 と、鷹に同意した。
「刹那に誘導させて外へ出してしまえばいい。なんなら、あいつのカスタムフラッグにでも連れ込ませれば、攻撃しやすい。」
「おいおい、ティエリア、刹那が怪我したら、どーすんだよ。そんな作戦は許可できません。」
「だが、ロックオン。それなら、この店の被害も少ないだろうし、刹那をすぐに救出するから問題はない。」
「救出するって、どうやって? 俺らのMSはないんだぞ? 」
「別荘にあるのを借りればいい。刹那、ミッションだ。やれ。」
それは正当性からすれば、マトモな作戦ではあるのだが、相手がKYで粘着気質の変態の場合、とても危険ではある。絶対にダメ、と、刹那が口を開く前に、親猫が却下する。
「ティエリア君、それは危険すぎますよ? そこまでしなくても、どうにかできるでしょう。」
攫われてしまうと、回収が大事になる。それは、避けたいと八戒も反対する。さらに、悟浄が、その言葉に続ける。
「どうせさ、出たとこ勝負にはなるだろ? せつニャン、ちょっとばかしお触りされても我慢して、キラのほうへ逃げ込め。そういうのなら、どう? ママにゃん。」
「そのぐらいなら・・・・刹那、それはできるか? 」
「できる。」
「キラが、どういうことやるかわかんねぇーけど、あいつ、本気だと怖いんだろ? 虎さん。」
「・・・・・種割れすると、殺略者になるな。」
「キラの生身のバーサーカーモードなんて見たことないぜ? 悟浄さん。イザークがやられた時も種割れてたっけ」
「うるさい、ディアッカっっ。あいつのは洒落にならん。」
ここには、キラに過去ボコボコにされたのがいる。普段、あれほどぽややんとしているのに、何かのスイッチが入ると豹変する。それを種割れと呼んでいて、やられたものは畏れているのだ。
「じゃあ、それやってもらおうぜ。アスランなら止められるんだろ?」
「アスランもMSをダルマにされてた。」
「今なら止められるんじゃないか? シン。できれば、オーナーがいらっしゃると確実だと思うんだが。」
「ああそういうのなら、うちのサルに止めさせるさ。」
アスランもボコボコにされた経験が、たくさんあるのをシンが、ぽつりと呟いた。あれは見事すぎて、止めに入ることもできなかった。ふむふむと、悟浄が、それなら、悟空に力技で止めさせればいいか、と、結論した。
「とにかく、今の話は、ナタルさんのお連れ様が、あれだという仮定のもとの話です。それが判明した時点で、トダカさん、お願いしますね。」
「こちらはオーケーだ。それと、ロックオン君、お客様だから、あくまで言葉遣いは丁寧に。」
「はい。」
「せつニャン、ヤバイと思ったら、キラにしがみついて泣き真似でもしろ。それで、キラも本気で守ってくれるからな。」
「わかった。」
「明日の予約の確認は以上ですね。アスランにも、この話をしておいてくださいね。」
本日は、出勤が遅れているキラとアスランにも話は通しておくことにした。明日、あれが現れたら、撃退モードになればいい。そうでないなら、通常モードということで、打ち合わせは終わった。
会議で何度か顔を合わせていた相手だが、唐突に尋ねてきて、「『吉祥富貴』に行って見たいのだがメンバーでないと入れないから連れて行ってもらえまいか? 」 と、低姿勢で頼まれて一度くらいならいいかと応じた。
「いらっしゃいませ、ナタル様。」
優雅に、レイに迎えられて店に入った途端に、席に案内されるより前に八戒から、たまには気功波のマッサージはいかがですか、と、勧められた。
確かに、連れて来たのはいいが、親しいわけでもない相手と一緒するのは面倒だ。
「私の連れのほうの相手をキラに頼めるか? 私のほうは、シンとレイでいいんだ。」
「もちろんでございます、ナタル様。では、奥の部屋にご案内いたします。」
いつものようにシンとレイが、自分をマッサージ専用の部屋に案内していく。後は好きにしてくれ、と、連れには挨拶だけした。
作品名:こらぼでほすと すとーかー4 作家名:篠義