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小話詰め合わせその1(英米)

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「だって、キミ、俺のこと恋人だなんて思ってないじゃないか」
「はあ?何でそういうことになんだよ」

泣きながら告げた言葉にイギリスは逆上した。
ぶっとい眉毛が吊りあがって、瞳の緑が色濃く染まる。
そんなふうに怒られても俺の主張は変わらない。
キミが悪いんじゃないか。
俺はこんなにもイギリスのことが好きなのに通じていなかったなんて。
そんなことを訴えるのは恥ずかしくて、俺は怒ったイギリスを前に
貝のように口を閉ざしたままだった。
それでも俺の扱いに慣れたイギリスは俺を椅子に腰かけた自分の上に向き合うように
座らせ、キスを何度も繰り返して、俺の主張を聞きだしていく。
イギリスはブリタニアエンジェルとかいう変態チックな格好になると魔法が
使えるらしいけど今のままでも十分に使えていると思う。
だって、俺がこんな風に話してしまうのはイギリスにキスをされた時だけだ。
きっとイギリスのキスには魔法が掛かっているんだと思う。間違えない。
俺の主張を全部聞きだしたイギリスはそっかと呟いて俯いた。
そういう風に俯かれると彼の表情は見えなくなってしまって、不安を掻き立てられる。
―――――もしも、そうだと、俺のことは弟としか見れなかったらと言われたら。
ちらりとそんな考えが浮かんだだけでも駄目だった。
せっかくイギリスに拭ってもらったというのに堪える間もなく涙は溢れ出していく。
その涙が俯いているイギリスにかかって、顔を上げたイギリスはびっくりしたように
眼を見開く。
そうだよね。俺でもちょっとおかしいくらい泣いていると思う。

「まったくお前は」

優しい、小さな子を宥めるような声。
その声に違わず穏やかな笑みを浮かべたイギリスは俺の涙をちゅっと吸い取った。
落ち着けと撫でている手は昔と変わらない。
泣きすぎて呼吸を忘れた俺を落ち着かせるために彼はこうしてよく撫でてくれた。
でも、唇で涙を舐めとるのは違う。
いくらイギリスが幼い頃の俺を好きだからって唇で涙を舐めとったりなんてしなかった。
彼がこうするようになったのは俺と付き合うようになってからだ。
初めてされた時は驚いてイギリスを突き飛ばしてしまったこともあったけれど
今ではされないと物足りないくらいで、恥ずかしいけどされるまで
泣きやめない時もある。
俺を抱きかかえているイギリスが少し背伸びをして額に額を合わせた。
あまりにも近い距離に恥ずかしくなって身体を逸らそうとしたけど
イギリスが俺の腰に手を回しているせいで離れることができなかった。
真近で見るイギリスの瞳は昔と変わらず綺麗な緑で目を泣き腫らした俺を
映しこんでいる。
ふ、と表情を緩めたイギリスが額を合わせたまま口を開く。

「お前と付き合うことができて嬉しかったんだよ。んで、お前の喜ぶ顔が
 見たいと思った。そう思ったら身体が勝手に動いちまって・・・・・・けど
 嫌ならもうしない。だから泣くな。お前に泣かれるのはベッドの上だけでいいんだよ」
「ホント・・・に?俺のこと、弟だと思っていないのかい?」
「アメリカは俺が弟だと思っている奴にあんなことできると思うか?」

イギリスの言うあんなこと、の意味がすぐにわかった俺は首をぶんぶんと横に振る。
いくらイギリスがそういうことでオープンで大好きでも弟に対して
そういうことはしない、と思う。
絶対にとは言えないけどほぼ信じていいはずだ。

「ほら、せっかくの可愛い顔が台無しだ。お前は笑っている顔が一番いいんだよ」

そう言って彼が唇の端にキスをしたのはたぶん今が会議中だからだと思う。
そうじゃなかったら俺はとっくにベッドに引き込まれている。
ここで会議室でよかったと心の底から思いながら俺は今まで黙っていてくれた皆に
「さあ会議の続きをするんだぞ」と明るく宣言した。