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小話詰め合わせその1(英米)

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「・・・・・・」
「イギリス?」
「・・・・・・うまい」
「本当かい!?」

興奮するアメリカに俺は力無く「ああ」と答えた。
本当にアメリカの作ったオムレツは旨かった。
髭ほどじゃねえが少なくとも俺よりもずっと旨い。
ベーコンもちゃんと肉の味がする。
黙々と食べ続ける俺と違いアメリカはひどくご機嫌だった。
当たり前だ。
俺だって美味しいって言ってもらえたら機嫌が良くなる。
だからアメリカが機嫌が良いのは理解できる。
けど、胸のどこかがムカムカする。

「食べ終わったんだぞ」
「・・・御馳走さま」

結局俺は最初の旨いと口にした以外はまったく話もせずに食事を終えた。
にこにこと笑いながら片づけをするアメリカを見ながらぼんやりと考える。
こんだけ作れるんだったら、何もまずいって言う俺のメシを食う必要なんか
ないじゃないか。
もしかしてアメリカは俺を貶めるためだけにメシを作らせているんだろうか。
本当は自分で美味しいものを作れるのだからその可能性が高い。
だったら俺は・・・・・・

「なあアメリカ」
「なんだいイギリス」
「お前さ、こんだけ作れるんだったら、俺に作らせる必要ないんじゃないか?」
「何言っているんだい。キミが勝手に作っているんだろう」

唇を尖らせて向けられた台詞に思わず俯いた。
そんなことはない、とは言いきれなかった。
確かにアメリカの言うとおり、俺が勝手に作る時もあるが大半はこいつに
せがまれて作っていた。
けれどアメリカにとってはそんな好意は邪魔だったのだろう。
なら、俺が言うことは一つしかない。

「じゃあもう作んねーよ。その方がいいんだろ」
「っ、何言って」
「今日だって自慢したかったんだろ。俺はこんなに料理ができるんだって」

アメリカが目を見開く。
その瞳が潤み始めているのを俺は苦々しい思いで見返した。
言い過ぎているって自覚はある。
けど、アメリカの言ったことだって負けず劣らず酷いことだ。

「もう、いいよ」
「アメリカ?」
「もういい。イギリスの馬鹿」
「お、おいアメリカ!!」

エプロンを脱いだアメリカは俺にそれを叩きつけて走ってリビングを出て行った。
俺はすぐに追いかけるべきだったが、アメリカが走り去る間際に見せた
とても辛そうで悲しそうな顔が俺の脚を地面に縛り付ける。
喧嘩をしたときだって、あいつはたまに泣くけど、あんな顔を見せたことはなかった。
初めてではないと思うがめったに目にしない表情に胸の奥が締め付けられた。

「あらイギリス。アメリカの手作りのご飯を食べられたというのに不機嫌ね」

「ピクシー」

アメリカに投げつけられたエプロンを手にしたまま佇んでいる俺に
声をかけてくれたのはピクシーだった。
アメリカがいなくなったから出てきたのだろう。
ふわふわと宙に浮かぶ友人は機嫌良さそうに微笑んだ。
「今日の朝ねアメリカに頼まれたのよ。イギリスを起さないでって」
「アメリカに?」
「そう。『本当に妖精とやらがいるならイギリスを起さないでくれよ』って。
 酷い言い方よね。でも、理由を聞いたら赦しちゃったわ」
笑いながら話すピクシーの姿に俺は言いようのない不安を感じた。
もしかして俺はアメリカに取り返しのつかないことを言ったのではないだろうか。

「アメリカはね、イギリスにお礼をしたかったの。いつもご飯を作ってくれる
 イギリスにもご飯を作ってもらえる幸せを分けたいって。
 大好きなイギリスにお礼をしたいって」

「―――――ッ」

「イギリス、美味しかった?」

にこやかに尋ねてくるピクシーに俺は何も言うことはできなかった。
言えるわけがない。
俺はアメリカの好意を穿った見方でしか見ることができなかった。
最低じゃねえか。俺は。
あいつが嬉しそうだったのは俺が作った料理を食べて旨いって言ったからだ。
俺を嘲笑ったんじゃない。
俺は何もわかっていなかったんだ。
「あいつの気持ちを疑って泣かせた」
正直に告げるとピクシーはまあと声を上げた。
そして小さな頃の俺を叱ったように顰め面を浮かべて腰に手を当てる。
「駄目じゃないイギリス。好きな子を泣かせるなんて紳士失格よ」
「ああ。そうだよな」
「ちゃんと謝らないと駄目よ。あの子に嫌われるのは嫌なんでしょう?」
「謝ってくる。あいつが許してくれるかわからねえけど」
頷いて約束を交わすとピクシーは「頑張りなさいイギリス」と言い残して
妖精の世界へと帰って行った。
残された俺は息を吸って、気分を落ち着ける。
玄関のドアが開閉される音は聞こえなかった。
ならばあいつはきっとあそこにいるんだろう。
リビングを出て俺はあの場所に向かう。きっとアメリカはそこにいるはずだから。