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小話詰め合わせその1(英米)

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物音一つ聞こえないドアの前に立ち唾を飲み込む。
俺がアメリカがいるだろうと目星をつけたのは昔、あいつのために用意した
部屋だった。
そのことをアメリカに言ったことは無いのだが、何故かあいつはこの部屋が
自分の為に用意されたものだと知っていた。
そして喧嘩するたびに拗ねたあいつはここに閉じ籠って、俺が謝りに来るまで
籠城し続ける。
所在を確かめるために軽くノックをするとずずっと鼻をすする音がかすかに聞こえた。
やはりアメリカはここにいたらしい。
「アメリカ、入るぞ」
返事をまたずにノブを捻ると鍵の掛かっていないドアはあっさりと俺を迎え入れる。
中は薄暗く様子を窺いにくかったが、アメリカがどこに居るかはすぐにわかった。
あいつのために用意した少し大きめのベッド。
その上でシーツがこんもりと膨れている。
まるで酔っぱらった翌日の俺みたいだと妙な共通点にへこみそうになるが
そんな場合ではないと俺は慎重にアメリカに近づき、ベッドの端に腰かけた。
「アメリカ、酷いこと言ってごめんな」
「・・・・・・」
返事はない。当然だ。
俺がアメリカの立場だったら一カ月は顔も見たくない。
それでも俺はアメリカに話しかける。
「俺の為に作ってくれたんだよな。本当に悪い」
「・・・・・・別にキミの為なんかじゃないんだぞ」
スーツの中からくぐもった声が聞こえて安堵した。
どうやら話を聞いてはくれるらしい。
「ピクシーに聞いたんだよ」
「こんなときにまで幻覚の話かい。まったくキミらしいね」
悪態をつく声にも元気がない。
それだけアメリカを傷つけてしまったかと感じると胸の奥がずんと重くなるが
落ち込みたいのはアメリカの方だ。
「・・・アメリカの作った料理を食べれて嬉しかった。けど、不安になったんだよ。
 あんなに作れるんだったら、俺の料理なんて必要ないって」
「・・・・・・」
「それであんなこと言っちまった。反省している。だから許してくれアメリカ」
「本当に馬鹿だよね、キミ」
くぐもった声とともに俺の視界を何かが掠める。
とっさに振りかえろうとした俺にアメリカは後ろから抱きついて首に腕を回している。
身動きがとれないほどがっちり拘束されて、振り返ることを諦めた。
代わりに鎖骨の辺りでぎゅっと組まれている腕に触れる。
宥めるように擦るとアメリカが顔を押し付けている肩にじわりと何かが染み込むような
冷たさを感じた。
「キミの料理を食べたくないなんて言ったことないんだぞ」
「ああ」
「まずいけど、俺はヒーローだから食べてあげるんだ」
「ああ」
くぐもった声で告げられる言葉一つ一つに俺は頷く。
頷くたびに後ろから抱きしめるアメリカの腕に力が入って苦しいが
それは何とか堪えてアメリカの声に耳を傾けた。
「俺がヒーローであることに感謝してくれよ。そうじゃなかったらキミのこと
 許さないんだぞ」
「ああ。ありがとなヒーロー」
いつものようにからかうことはなく、俺は純粋に感謝した。
その通りだったからだ。
アメリカがヒーローでなかったら俺は赦してもらえなかっただろう。
だから今だけはこいつがヒーローであることに感謝する。
アメリカの拘束が緩んだ隙を狙って俺は身体を捩じり、向き合った。
さんざん泣いたアメリカの瞼は腫れぼったくなっていて痛々しい。
思わず瞼に口付けるとアメリカは驚いたように身体を震わせたが拒みはしない。
調子に乗って瞼どころか頬に口付けてもアメリカは嫌がらなかった。
「くすぐったいんだぞ」
「・・・嫌じゃないのか?」
「別に・・・キミならいいよ」
視線を俺から逸らして頬を赤くしたアメリカに俺はたまらなくなり
唇にも口付けた。
さすがに軽い抵抗があったが、舌を入れてキスをしているうちに
その抵抗も収まっていく。
思う存分アメリカの中を探り弄った俺は目を潤ませて
肩で息をしているアメリカを改めて抱きしめた。
「好きだアメリカ」
「・・・言うのが遅いんだぞ」
やっと告げることのできた気持ちにアメリカは遅いと文句を言ったけれど
その表情は嬉しそうで、俺はようやく長年の思いが叶ったことを知った。