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小話詰め合わせその1(英米)

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3.猫(英米とねこたりあ/猫の名前が人名)


「お前、猫飼い始めたんだって?」

そんな台詞と共にイギリスが現れたのは、アメリカが休日に入って二日目のことだった。
元々は昨日からアメリカの家に泊まるはずだったのだが、どうしても外せない仕事が
入り込み、一日遅れてのアメリカ入りとなった。
急でどうしても外せない仕事なので仕方ないとわかっていたが
それでもイギリスと過ごす時間を削られて不満だったアメリカはこの間から飼い始めた
「アルフレッド」と朝から遊んで鬱憤を晴らしていた。
アメリカの家に着くなり、猫のことを気にする恋人にアメリカは頬を膨らませる。
「そうだけど・・・キミ、来て一番最初の発言がそれかい?」
「悪かったって。・・・逢えて嬉しいよアメリカ」
「俺も」
身長差の関係でほんの少しだけ背伸びしたイギリスがちゅっとアメリカの唇を啄ばむ。
深いキスをしないのは以前玄関で事に及んでしまいアメリカを怒らせたことが
あったからだ。
それ以来、イギリスは挨拶のキスは軽めのものしかしない。
そのことにアメリカは満足しているけれど、物足りないときもある。
今がまさにそうだ。
恥ずかしいけれどもう一度キスをせがもうとアメリカが控えめに服の裾を引っ張った時
イギリスは「お」と嬉しそうな声を上げて足元に視線を落とした。
「おーこいつがアルフレッドか。小さくて可愛いな」
でれでれといった様相の声につられてアメリカも視線を落とす。
しゃがみこんだイギリスの膝にかりかりと小さな爪を立てているのは「アルフレッド」だ。
久しぶりの逢瀬を邪魔されないようにと寝室に置いてきたはずなのに
いつの間にか抜け出してここまで来てしまったらしい。
アメリカには目もくれず、だらしない笑みを零しながらイギリスはアルフレッドの
喉元をくすぐる。
「うちのチビに会わせたら気が合うかもしれないな」
「そうかもね」
同意するアメリカの素っ気なさにもイギリスは気付かない。
いよいよ面白くなくなってきて、ぷくりと子供のように唇を尖らせる。
同じ「アルフレッド」なのに猫の方ばかり相手をするのはどうなんだい?
キミの恋人は俺だろ。
そう主張したくても照れくささが邪魔をして言えない。
「アメリカ」
ひとしきりアルフレッドを撫でまわしたイギリスがしゃがみこんだままアメリカを呼ぶ。
仕方なしにイギリスにならって隣に座りこむとニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべた
イギリスがアメリカの頬に軽く口付けた。
「お前、猫にまで嫉妬するとか可愛すぎだろ」
「べ、別に嫉妬なんかしてないよ!!」
己の感情を見抜かれていたことにアメリカは真っ赤になって否定の言葉を叫んだ。
本当にイギリスは意地悪で性格が悪い。
こちらが焦れているのを知っていてスルーするなんて最低だ。
真っ赤になったアメリカが騒いでいるのを余裕の笑みを浮かべて見つめていたイギリスが
また視線をアルフレッドに移す。
相手をしてくれるかと思ったらすぐにこれだ。
本当にイギリスは自分のことを恋人だと思っているのだろうか。
自分以外のものを見ているイギリスなんて見たくないと顔を背けていると
怒るなよと笑いを含んだ声をかけられる。
それでもアメリカは振り向かない。
別に怒っているわけではない。ただつまらないだけだ。
「そんなに怒るなって。俺はアルフレッドに礼を言っていたんだよ」
「礼・・・?」
訝しげに振り向くとイギリスはそうだよと返事をしてアルフレッドの耳をくすぐる、
小さなアルフレッドはにゃおと鳴いてくすぐったそうに身を捩った。
「俺がアメリカに会えない間、相手してくれてありがとうな」
「な、何言っているんだい!俺がアルフレッドの相手をしたんだぞ!!」
勘違いしないでくれるかいと真っ赤な顔で反論するが、それが否定の意味を
為していないのは一目瞭然のことだ。
アメリカの腕をひいて立ち上がったイギリスは真っ赤な顔で俯いている恋人を
抱きしめる。
抱きしめられたアメリカはびくりと身を震わせたが、抱擁を嫌がるそぶりは見せず
むしろ積極的にイギリスの背に手をまわして抱きつく。
イギリスとの抱擁はほぼ二カ月ぶりのことだった。
付き合うまでは仕事の関係上半年近く会わなかったこともあるし、会わなくても
平気だったが、付き合い始めてからは少なくとも月に一回はプライベートで
顔を会わせられるようにぎゅうぎゅうに詰まったスケジュールを何とか調整して
二人の時間を捻出していた。
しかしここのところ、近年稀にみる忙しさに翻弄され、二か月もの間イギリスに
逢うことができなかった。
もちろん仕事の合間にメールや5分程度の電話はしていたけれども
その程度で満足できるはずもない。
ようやく触れることのできた恋人を堪能するようにアメリカは肩に顔を埋める。
ふわりと香るのは紅茶と薔薇と自分に逢う時だけつける香水の香り。
アメリカ専用だと教えてくれた香水はお菓子のような甘さではないけれど
普段つけているものよりもずっと甘くて、アメリカはその香水がとても好きだった。
「そろそろリビングに行くか?」
「ん、もう少しだけ」
密着して身体を僅かに離して尋ねてくるイギリスをアメリカは抱きついて
もう少しだけと強請る。
そうだなとイギリスもいつになく素直に答えて、再びアメリカを抱きしめる。
忘れ去られていたアルフレッドがにゃおと鳴きながらズボンの裾をかりかりと
引っ掻くまで二人はお互いの存在を確かめあうようにぎゅっと抱きしめ続けた。