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小話詰め合わせその1(英米)

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アメリカの淹れたコーヒーに口をつけて、イギリスはふうとリラックスした表情で
息をつく。
アメリカがイギリスがコーヒーを嫌いではないと知ったのは付き合い始めてからだ。
付き合う前は公式の場で出されたものにすら口をつけなかった。
コーヒーはアメリカのことを彷彿とさせたし、何よりもイギリスは大の紅茶党だ。
だから今まで飲まなかったのだと付き合い始めてから半年経った頃、アメリカは
イギリス本人の口からそう聞いた。
似たようなことはフランスから聞いていたけれど、本人に直接聞くのとは大違いだ。
イギリスがコーヒーを飲まなかった理由に落ち込まなかったわけではないけれど
自分も似たようなことをしていたのだからお相子だと結論付け、今では英国に渡った時は
アメリカもイギリスの淹れる紅茶を楽しむことにしている。
先ほど、にゃおにゃお鳴いてズボンの裾に爪を立てて存在をアピールしていた
アルフレッドは猫用ミルクをたくさん飲ませてもらい、今は窓際の暖かい場所に丸まって昼寝をしている。
イギリスはミルクをたくさん飲ませ過ぎだと怒っていたが、飲みたいのならば
いいじゃないかとアメリカは構わずにアルフレッドにたくさんミルクをあげている。
今はまだ小さいけれど、ヒーローが育てているのだからきっと立派な猫になるはずだ。
頑張って育つんだぞと眠っている子猫をひと撫でして、アメリカはイギリスの
隣に腰かけた。
「今回は何日居られるんだい?」
「3日ぐらいだな。次の仕事はカナダだから9日の昼間にここを出れば大丈夫だ」
「3日か・・・」
何をしようとアメリカは考える。
久しぶりに買い物も行きたいし、映画も見に行きたい。
ゲームを一緒にやりたいしアルフレッドを連れてセントラルパークに
散歩に行くのも悪くない。
ミュージカルを見に行くのもいいなと頬を緩ませたところで、アメリカは不穏な動きを
見せるイギリスの手をぺちりと叩いた。
「いてっ、何するんだよ」
「それはこっちの台詞だよ。こんな昼間から何をするつもりなんだい」
「何って・・・ナニ?」
「いい加減にしてくれよ!」
お尻をぐにぐにと揉まれたアメリカは容赦なくイギリスの腕を捻り上げた。
痛いと悲鳴をあげても力は緩めない。
イギリスとするのが嫌ではないけれど、せっかくの逢瀬なのだからそれ以外の
ことだってしたい。
そんなアメリカの心をイギリスはちっともわかってくれない。
イギリスはたまにアメリカにデリカシーが無いと言うけれどそれはイギリスの方だ。
逢ってすぐにセックスなんて最悪じゃないか。
「わかった、止めるから腕を解放してくれ」
「・・・・・・」
むう、と口を尖らせてとりあえず解放する。
イギリスはそうとう痛かったらしく、慈しむように腕を撫でたり、擦っている。
俺は悪くないんだぞと内心で呟いてアメリカは妥協案を提示した。
「別にキミとしたくないってわけじゃないんだぞ。ただ、そういうことは夜に・・・」
「おう。じゃあ夜への楽しみに取っておくか。覚悟しろよアメリカ」
アメリカの言葉を聞いてすぐに復活したイギリスはニヤニヤと笑いながら
頬にちゅうと吸いつく。
早まったかなと思うが言葉の通り嫌ではないのだからそれもよしとしよう。
妙な達観を抱いたアメリカはテーブルに置いておいた菓子に手を伸ばす。
パッケージを剥がしてぱくりと口に入れるとイギリスがこぼれてるぞと
ハンカチで口を拭う。
付き合い始めてからも世話を焼くイギリスをアメリカは素直に受け入れた。
付き合う前は子供扱いをしてとよく憤慨したものだったが、付き合い始めてからも
変わらない態度にいちいち怒ることは止めたのだ。
それにアーサーがそこまでして世話を焼くのがアメリカ一人であるということも
知っている。
彼は周りの評に反して情深い一面があるが、それは自国民やアメリカ、英連邦の
メンバーにだけ発揮されるもので、その中でもアメリカは特別であった。
だから世話を焼く彼を否定しない。―――――時々は反抗してしまう時もあるけれど。
「たまには外に散歩しに行くのもいいな」
しばしの間、外を見つめていたイギリスがぽつりと漏らす。
彼にして珍しいポジティブな提案に驚いたが、アメリカは嬉しそうに笑って
返事を返した。
「いいね。アルフレッドも連れて行こうよ」
「あいつ寝てるぞ。起こさない方がいいんじゃないか?」
「平気だよ。おーいアルフレッド!」
眉を顰めるイギリスに構わず、上機嫌のアメリカはアルフレッドを呼んだ。
すると本当に寝ていたのかと疑いたくなるほど間をおかずに「うにゃあ」と返事が返り
むくりと起き上ったアルフレッドが二人の座っているソファーに向かって
とことこと歩き、待ち構えていたアメリカの腕の中にぽすんと収まった。
「よーし、これで行けるんだぞ」
「・・・じゃあ行くか」
うきうきとコートを取りに行くアメリカにならってイギリスも立ち上がる。
時計の針はもうお昼を回っていたけれど、散歩するならちょうどいい時間帯だ。
両手に抱えたアルフレッドに軽くキスを落として、アメリカは久しぶりのデートを
満喫するべく、まずはどんなコートを着ようかと頬を緩ませた。