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こらぼでほすと 逆転

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 食事が終ると、シンたちも店に戻って行った。後片付けをして、ふうと息を吐いた。何か出来ることをしておこうと思っても、綺麗に片付いていてすることがない。そろそろ汗臭くなってきたから、シャワーを借りて着替えはさせてもらった。酒量について、ちょっと考えて、ビールぐらいにしておかないと、また、あの劇薬の世話になるな、と、その部分については悔い改めることにした。


 翌日は定休日で、朝からトダカの家には親衛隊がやってきて、掃除やら洗濯なんかを、さっさかとやっている。つまり、毎週、こうやってトダカ家というのは、綺麗になっているらしい。
「手伝います。」 と、ロックオンが手を出そうとしても、「これは我らの仕事ですから。」 と、手も出せない。さらに、自分の汚れ物まで洗われてしまった。
「座ってなさい、ロックオン君。」
「いや、でも・・・」
「いいんだ。うちのものたちは、ボランティア精神に溢れてるから。」
 いや、そういうもんではないでしょう、と、内心でツッコムより先に、トダカと自分の前に珈琲なんかが置かれる。ほぼ一人暮らしの家なので、それもすぐに終る。すると、それぞれに飲み物なんか用意して、居間で寛ぎ体勢になった。邪魔じゃないのかな、と、立ち上がろうとしたら、アマギに止められた。
「気にしなくてよろしい。トダカが、楽しんでいるので同席してください。」
「たっ楽しんでいるんですか? トダカさん。」
 別に、これといって会話しているわけでもないし、ふたりして珈琲を飲んでいただけだが、トダカは、「楽しんでいるよ。」 と、笑っている。
「まあ、座ってなさい。・・・アマギ、CBとの交渉はどうなっている? 」
「MSのほうは、技術工廠のほうで解体が終わり、使用できる部品と、再生させたもの、それから太陽炉については、CBのほうへ運搬する手筈までが整いました。次に、クサナギが離陸する折に、それらも宙に送ります。それから、こちらから開発しているものについても、使用できるものについては、先に設計書で、CBに連絡してありますので、あちらから要望があれば、それも組み立てて渡すようになります。プラントからも同様になっているはずですから、あちらの物資はエターナルが運搬するものと推察されます。」
「ご苦労様。・・・ということで、着々と、あちらも復興は進んでいる。とは言っても、新しい機体がロールアウトするには、相当時間がかかるだろう。」
 すらすらと報告されていることは、機密事項に該当しているはずだが、トダカは気にした様子もない。それから、さらに、アマギが報告するのは、オーヴの軍部についての報告とか、それ、部外者が聞いたら、マズイだろうことのオンパレードだったが、それすらも、トダカはスルーだ。
「キラ様にも同様の報告をしてくれるか? 」
「それは、カガリ様から直接、連絡されているはずです。」
「なら、結構。カガリ様のほうは問題はないのか? 」
「今のところは。先日、キラ様がいろいろと攻撃してくださった様子で、大人しいものです。」
 あいつ、隠れていろいろとやってんだなーと、キラの行状を耳にして感心する。のほほんぽややんとしているから、うっかりするのだが、電波天然だが、キラは最強のコーディネーター様だ。何がしかのことは、こっそりやっているらしい。
「トダカさん、キサカさんが、たまには本国へ顔を出してくれまいか? と、伝言を預かっているのですが、どうしましょう? 」
 アマギではない者が、そう口にする。
「私は引退したんだ、と、申し上げてくれ。」
「私も、そう申し上げたのですが、『元ウヅミ親衛隊の同士として頼みたい』と、熱心におっしゃるのです。」
「そう言われてもなあ。一度、連絡だけはしておこうか。」
 やれやれとトダカが立ち上がると、アマギが即座に、ヴィジホンの準備をする。他のものは、トダカの背後に立って、牽制する様子だ。いろんな繋がりが判明してから、ロックオンも驚かなくなった。もう、どんな関係者がいようとも慣れた。というか慣らされた。
 トダカは繋がった相手と、楽しそうに近況を話していたが、「そちらには顔は出さない。」とだけは、はっきりと言った。
「そう、おっしゃるだろうとは覚悟していました。だが、たまに世間話には付き合ってください。」
 と、相手も、穏やかにそう申し込んでいる。ちらりとロックオンが、ヴィジホンを覗き込んだら、カガリの傍に、いつもついているキサカの顔があったので、やっぱりかい、と、息を吐いた。
 そのまま、日曜の夜までトダカ家で世話になった。入れ替わり立ち代り、親衛隊が現れるし、食事も、卒なく、彼らが作ってしまうので、やることはない。そろそろ、帰りますと言ったら、家まで送ってくれるという親切ぶりだ。帰り際に、トダカは、「退屈だとか寂しいとか思ったら、いつでも泊まりにきなさい。」 と、送り出してくれた。

・・・・確かに、悪くはないんだよな。別に、何かを強制されることもないし、トダカさんが自然体だから、こっちも気遣いが少なくて済むしな・・・・・

 マンションの前で降りる時に、アマギからも、「トダカが楽しそうだったから、是非、また訪ねてください。」 と、念押しされた。




 それで、少しは悔い改めたか、というと、相変わらず、貧乏性なので、午後早くから店の掃除をしているわけで、アスランたちがクローズするまで働いているという勤務形態は、依然として変化してない、ということになっている。まあ、それはいいのだ。どうせ、どっかで限界が来る。
「唐突にきますから、そうなったら、呼んでください。」
 と、ドクターからも通達されている。少しずつ蓄積する疲れが、ピークに達したら、たぶん、起き上がれなくなって、当人もびっくりするんじゃないですか? と、付け足されて、それなら限界まで放置しておこうということになった。
 週末ごとに、どこかの家に居候するような形になってしまい、だいたい、トダカ家と三蔵の寺、それから、ハイネのマンションなんかを順番に回っている。それで、のんびりと過ごしているから多少、回復はするのだろう。二週間は、何事もなく過ぎた。三週間目に、ちょっと動きが鈍いかな、と、鷹が気付いた。
「なあ、ママ。今夜、俺と遊ばないか? 」
「はあ? 」
「今日は、ウィークデーで予約もないからさ。早仕舞いになるだろ? 」
「だから、俺は、ノンケだってーのっっ。」
「そっちじゃない。」
「じゃあ、どっちだよ? 」
「お洒落なショットバーへ繰り出して、かわいい子猫ちゃんを誘うとかさ。」
 それで、適当に飲ませて潰して、休ませようという算段だったわけだが、日頃の行いの悪い鷹の誘いには、ロックオンも乗らない。読みたい小説があるから、と、すげなく断られた。

 翌日、開店時間になっても、親猫が現れないということになって、やっぱり、あれが危険信号だったんだなーと、鷹も納得はした。
「ハイネ、付き合ってくれるか? 」
「確認できたら、連絡してくれ。スタンバっておく。」
「アスラン、合鍵貸してくれ。」
「鷹さん、ドクターは捉まえた。あっちへ向かってくれるから合流しろ。」
作品名:こらぼでほすと 逆転 作家名:篠義