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ミュンヘンの夢

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第四場。
ハイデリヒのアパート。隣がエドワードの部屋。
エドワードとノーア登場。
「エドワードさん、遅かったじゃないですか…その人は?」
エドワード、ノーアとつないでいた手を慌てて離す。
「ノーアって言うんだ。軍人っぽい怪しい奴に追われていたから、逃げてきた」
「そんな危ないことは」
「いいだろ、オレの勝手だ。こいつしばらく、オレんちに住むから」
「え?!」
「だって、ジプシー仲間にも迷惑かけられねえって言うし」
「でも」
ノーアが歩み寄る。にっこりと女の笑み。
「よろしくね、お隣さん」
戸惑うハイデリヒ。かまわず握手。
「あら、貴方…」
「何、でしょう」
あとずさりして、手を離す。
「いえ、何でも」
エドワード、ドアを開けて退場。ノーア、思わせぶりな笑みをハイデリヒに向け、エドワードの後を追って退場。(さーあ三角関係だ!)

翌日。
ノーア、ドアを開けてからコンコン、とノック。
「いいかしら?」
ハイデリヒ(しぶしぶ)「どうぞ」
ノーア、椅子に座って、菓子か何かの籠を差し出す。
「これ、ここの管理人さんから。ちゃんと貴方にも渡したか後で確かめますから、ですって。ジプシーは誰でも盗人だって思ってるんだから。どうせ貴方も同じでしょうけれど?」
「いえ…」
「ねえ、アルフォンス。貴方、エドとあまり親しくないのね」
「な…!そんなこと、貴女に関係ないでしょう?」
「言ったでしょう?私は人の心が見えるのよ。貴方、知りたいんでしょう?エドのことを」
「占いですか?あいにくボクは科学者だ。そういう非科学的なことは信じない」
ノーア、ふと沈んで
「…占いか科学かなんて、知らないわ。私には…見えてしまうのだもの」
「…?」
「貴方、医者にはかからないの?」
「えっ?!」
「肺の、病気。お金もないし、治るかも分からない。まだ誰にも言えない。特に、ボクのほかに知り合いもいないという、エドには決して」
バン!とテーブルを叩くハイデリヒ。
「ノーア…どうして、それを」
「言ったでしょう。私には見えると」
「彼には…」
「話してないわ。これからも、秘密にしてあげる」
ノーアを睨むハイデリヒ。
「見返り、は」
意外そうに「あら見返りなんて」
ノーア、立ち上がる。 くるりと振り返り。
「じゃあ、エドを信じてあげて」
「ボクはエドワードさんを信じてますよ?」
「そうかしら?」
「…」
「ねえ、本当は、知りたいんでしょう?昨日の夜、エドと私が、何をしていたか」(<おおっ!?)
「何を!…っ、知りたくなんか、ありません!」
「だって貴方、ヤキモチでいっぱいじゃない。エドが気になって気になってしょうがない。心を見なくたってわかるわ。顔に書いてあるもの」
「っ!もう、出て行ってください!」
「何も、無かったわよ?」
「え」
「お茶を飲んで、おしゃべりして、眠っただけ。だって、女同士ですもの。何も起こるはず無いじゃない」
「え…」
「エドは、女の子なのよ」(出たーエド子設定!だってヅカの娘役に男役やらせらんないじゃん!てか清く正しいタカラヅカでホモはNGだろ!)
ノーアソロ<私には、見えてしまうの>
踊りながら。

 私には見えてしまうの。
 貴方の戸惑い。傾く気持ち。恋の心。
 私には見えてしまうの。
 エドの孤独。
 私は誰の心も見えるけど、私の心を見る人はいない。
 彼女は皆を知っているけど、彼女を知る者は誰もいない。

エドワード、舞台端に立つ。
ノーアの影となって踊り始める。ノーアの歌が続く。

 私は誰の心も見えるから、誰もが私を恐れるの。
 けれど彼女は恐れなかった。私の孤独を分かってくれた。
 私には見えてしまうの。
 彼女の故郷、彼女の家族、遠く離れて、もう届かない。
 私は誰の心も見えるから、もう夢なんてみられない。
 けれど彼女の心には、まだ夢が。
 いつか帰るあの故郷へ。今にも消えそうな、夢が。

ノーアソロ終わる。
ダンス止まった時点でノーアとエドワードの位置が入れ替わっている。
ハイデリヒの前にエドワード。見詰め合う二人。
ノーア、静かに退場。
「エドワードさん…」
ぱっと逃げ出そうとするエドワード。その腕をつかむハイデリヒ。
「待って!エドワード!」
「アルフォンス…」
「ごめん。エドワードさん、気付かなくて。君が、女性だったなんて」
俯いて首を振るエドワード。
「座って?」
二人、椅子に腰掛ける。
「聞かせて欲しい。君のことを。君の、世界のことを」
戸惑い、逡巡するエドワード。
ぱっと立ち上がるハイデリヒ。
「あっ!こ、この間はご免なさい!せっかく話してくれたのに、ボクは笑ったりなんかして」
「い、いいって!笑うの当たり前だし」
「でも」
「い、いいからさ。もう座れよ」
「う、うん」
ハイデリヒ、腰掛ける。
エド、ぽつぽつと話し出す。
「オレさ。オレんち、親父いなくて母さんも病気で、あと弟がいてさ。オレが家族を守らなきゃって、そう思って、男の振りして弟にも兄さんって呼べって言って…馬鹿みたいだろ?」
ハイデリヒ、首を振る。
「でも。母さんは死んでしまった。
オレの世界には、伝説があった。宙(そら)の彼方にはオレの世界と同じ姿かたちの人が住んでいると。
けれどそこへ行って帰ってきた者はいないと。だから、宙を目指すことは禁忌だった。やってはいけないことだった。
けれど、オレは母さんを取り戻したくて、弟と一緒に宙を目指した。
そして、失敗した」
「…」
「オレは気付いたらこの世界に一人だった。伝説の通り、この世界にはオレの世界にそっくりな人たちが住んでいた。けれどその誰一人として、オレのことを知らない。
これが禁忌を犯した罰だったんだ」
「エドワード…」
「アルフォンス。お前はさ、まるで俺の弟の、成長した姿なんだ。だから初めて会ったとき本当にびっくりした。名前まで同じなんだもんな、アルフォンス。
でも、弟のアルと、お前とは違う。全然違うぜ?だから、分かったんだ。母さんと同じ姿の人がいても、それは母さんじゃない。
無くした者は取り戻せない。
オレがこの世界に飛ばされたのは、神様とやらがそれを知らしめるためだったんだ。
…オレの世界は、つまり、パラレルワールドって言うのかな…その、別の世界の、月だったんだ。だから、オレの世界から見る月は、青かった。アルフォンス、お前の眼のように・・・・・・」
二人、見つめあう。
見つめ合ったまま立ち上がる。
BGM<私には見えてしまうの> 先ほどのノーアとエドをなぞり、ハイデリヒとエドが踊る。
ハイデリヒが歌を乗せる。

 けれど彼女の心には、まだ夢が。
 いつか帰るあの故郷へ。今にも消えそうな、夢が。
 けれど彼女の心には、まだ夢が。
 いつか必ずあの故郷へ。いつか帰してあげる。僕が。

ダンスが終わり、向かい合って見詰め合う二人。
無音の中、そっと互いの手を取る。
寄り添って、口付け・・・・というところで暗転。(笑)
作品名:ミュンヘンの夢 作家名:utanekob