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ミュンヘンの夢

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第五場。
第二場と同じ、ミュンヘン市街。
ロケット仲間、舞台下手でやる気なさげに立ってたり座ってたり。
舞台中央手前ハイデリヒ。彼にだけ照明。
「けれど、それ以降はどうやっても、弟のアル君の声は聞こえなかった」
舞台下手のロケット仲間A。札束をばさばさと振る。
A「これだけマルクがあったって、燃料1本も買えやしない」
B「もう、ロケットなんか無理なんだよ」
うなだれるロケット仲間。
舞台中央ハイデリヒ「なのにエドワードさんは、静かに笑うんだ・・・」
舞台上手よりエドワード登場。ハイデリヒの照明に入ってくる。
「いいんだよ、アルフォンス。弟が無事だった。オレはもう、それだけで十分だ」
「エドワードさん」
「もう、いいんだ」
エドワード、握っていた銀時計をアルフォンスに突き出す。
「これ。やる」
ハイデリヒ、思わず受け取る。
「そんな、こんな大切なものを!」
「持ってると、未練になるからさ。もらってくれよ。売ればちょっとは資金の足しになるだろ?」
「エドワードさん!」
「いいんだ・・・・・・ありがとな、アルフォンス」
ハイデリヒに背を向けて、エドワード退場。
ハイデリヒ、エドワードを追おうとするが、咳き込んでしまう。
一人残され、手の中の銀時計を見つめるハイデリヒ。
照明、舞台全体に。
ロケット仲間「ハイデリヒ、どうするよ?」
ハイデリヒ、あわてて銀時計をポケットにしまう。
「お金なんて無いよ」
「ちくしょう。ここまで来たのに」
そこへ、下手よりノーア登場。片眼鏡ラングを連れてくる。
「やあ。君たちかロケットを作っているのは」
「あなたは?」
「フリッツ・ラング。映画監督だよ。今、月旅行の映画を企画していてね」
「月へ?」
「君らの模型ロケットを私の映画に使いたいのだが。代わりに、資金のツテを紹介しよう。彼らも君らの技術に興味を持っているそうだ」
「本当ですか?!」
「今夜、私のパーティーに来たまえ。そこで引き合わせよう」
「は、はい!ありがとうございます!」
やった!と喜ぶロケット仲間とハイデリヒ。
そのままハイデリヒ中心に賑やかな男役の群舞。曲<ロケットを飛ばそう!>
曲が終わり、ポーズ。
ハイデリヒ、歩き出そうとして再び咳き込む。胸をなで、息を吸い、けれど明るい笑顔。
「月へ。月へ!そうだ、ボクらにはロケットがある!」

舞台下手。ノーアとラング。
「監督、もう一人、呼びたい娘がいるのだけど・・・その子はドレスのひとつも持っていないの」
「いいだろう。撮影所に連れておいで。髪も靴も整えてあげよう。なに、君の能力を私のために使ってくれるというなら、その位安いものだ」
ノーア、悲しげに目を伏せる。
ノーアとラング、退場。
作品名:ミュンヘンの夢 作家名:utanekob