lost heven 01
『紅い人形は蒼き衣の男に愛され、紅と蒼が混じり蒼紅人形となり心を取り戻す。蒼紅人形は蒼き男の大切なヒトとなる。これは、嘘じゃなかったな。』
「なにかね?その不可思議な文章は?」
『私の故郷の昔話だよ。アンクは紅の子供を信じたくない。だから、あの子の事を金の子供と言っているんだ。焔の大佐、本当に紅き人形を蒼紅とし心を与えられるのか?』
「出来る。」
『そこの階段を上がれ。アンクはそこに居る―ただ・・・私も連れて行け。』
「はい・・・。」
鋼の・・・無事でいてくれよ?必ず、二人で帰るから。
ここは、精神空間とか言ってたっけ・・・?そんなのありえない。じゃあここは真理の扉の内側か、グラトニーの中にあった疑似真理の扉の中ってことか。それにしても、何回ここで喘がされたんだろう?それにエンヴィーの事も気になる。
「ロイ・・・!たすけ、て。」
「何でうち以外の人の名前を呼ぶの?行為中にほかの人の名前呼ぶなんて。駄目じゃん?ほらもっと喘いでよぉ?」
「ひぃ・・・。ふざけんな、あっ!」
「身体はいうこと聞いてるよ?キモチいいんでしょ?」
「よくなんか・・・ない!」
「うそだ?ほらこことか!」
「やめて・・・。やだっ!かえしてょ?おれをかえして!もう二度と心理なんか求めないからぁ。」
「なんのことかな?うちには関係ないよね?」
どうしてこんなことに・・・!なんでお願い大佐来てよ?裏切らないでしょ?もう、オレ壊れちゃうよ?なぁ大佐・・・
「なに?失敗作01。焔の大佐を連れてきた・・・?何してんだ!蒼なんて連れてくるなといっただろ?」
焔の大佐?もしかして大佐のこと・・・?蒼って何だ?
『蒼き男は紅と交わり蒼紅となる―それは本当なんだよアンク。』
「うるさい。人形のくせに!」
人形?そういえばさっきも人形って・・・。関係性はなんなんだろ?紅は、オレかな。そして蒼紅ってのはどういう意味だ?あかとあお…。
あかと・・・あお?確か昔読んだ文献にそんな感じの事が・・・。蒼紅・・・交わり・・・蒼?紅?人形―
―紅い人形は蒼き衣の男に愛され、紅と蒼が混じり蒼紅人形となり心を取り戻す。蒼紅人形は蒼き男の大切なヒトとなる―
「にいさん!見てこれ」
「なんだよアル?」
「これすごいよ!父さんの親友の人の故郷に昔から伝わる物なんだって!」
「なんだよ?そうく?なんだそりゃ!」
「でさぁ、この紅に当てはまるのが兄さんそっくりなんだよ!」
「言ってみろよ」
「ん~とね、紅に当てはまるのは金色の髪を持った紅き衣の小さな少年。彼は道化に支配されるが、黒い髪で蒼き衣を着た男に愛され二人は交わる。その時に蒼紅となり紅は心を取り戻す・・・だって」
「嘘だろそれ!男同士だぜ?ありえないし!オレ紅い服なんて持ってねぇしさ、それに蒼い服っつったら軍人ぐらいだろ?」
「そうだけど・・・。(この絵は兄さんにしか見えないんだよなぁ・・・)」
「アル~?ちゃんと、人体錬成について調べてるか?」
アルは・・・あの時あの文献に何を見たんだろう?もしかしたらオレが戻る方法も・・・なんてな。
「エドワード!」
・・・うそ。大佐?
「エドワード!取り戻すんだ心を、心を・・・君のその強い意志を!」
『紅・・・この声は届いているはずだろう。聞こえているだろう?愛しい彼の声が!』
「なに?何語りかけてんの?ウチのエドだよ?紅じゃない!金の子だよ?」
『アンクが一番わかってるはずだよ?この子の事―。ずっと見ていたから。』
え・・・?どういう、こと。
『ホーに紹介されてから、ずっとエドワード・エルリックという少年に魅かれていたから。だから、わざわざ軍に背いて一度死んで幼い姿になったんでしょ?この子に釣り合うように・・・。でも、夢で逢った時に彼の心に自分がいないってことにイラついてわざわざ大総統にエンヴィーを化けさせて命令したんだよね?ここに来いって。』
「・・・。うんそうだよ?なんかおかしい?」
おかしいも何も、狂ってる・・・こんなにオレの事思ってる・・・。でもオレは。
「エド、ワード・・・エド。すまなかった!私のせいで君を軍に引き留めたから。」
ロイ…オレあんたの隣に居たかった。ずっとずっとだからこの道を選んだんだよ?どんなに辛いかはしってるよ?だから泣かないで―
その時、オレの意識は現実世界に引き戻される感覚を感じた。
『だめだよ?!エド!ここから出たら辛いことも嫌なことも全部、全部・・・体験しなくちゃいけないんだよ?』
【わかってる。知ってる。この世界は広いから―どんなことがあってもオレは平気なんだ・・・だけど、まだあんたが望む世界には行きたくない。オレには・・・ロイが居るから】
『そんなに?焔のがいいの?』
【うん・・・オレの意志だけじゃあっちに戻れないんだろ?どうすればいいんだよ?】
『等価交換…ねぇ、ウチを殺してよ?それで、ウチを忘れないで?』
【・・・。何であんたが死ななきゃ何ねぇんだよ?】
『ウチ…私はもう死んでいる人間だから。そろそろ、意識は戻るよ?』
【まて・・・!】
その一言を言う前にオレは今日二回目の気絶をした。
「鋼…エド!エドワード・・・!」
気付けば頭上で大佐の声が聞こえる
「た・・・いさぁ。」
「よかった・・・、エドワード。ホントによかった・・・。」
大佐はオレをやさしく抱きしめてくれた。そのぬくもりに思わず涙を流した。
「ロイっ・・・ロイ。もう、一人にしないでよ・・・。」
「すまない。今回の件は私にも非があるな。」
『お取り込み中悪いんだけど・・・。私の意志を殺してくれないかな?』
「あ・・・。」
『すまないね。焔の・・・。君の恋人にこんなことさせてしまって、しかしアンクが望むんだ。』
「そうですか、エドワード。」
「ん・・・わかってる。オレはそれだけじゃ壊れないから!」
「そうか・・・。」
大佐はオレを心配するような眼で言った。ホントは掛けさせたくないんだ・・・大佐が不安になること。
「さよおなら、アンク・・・」
「さよなら、私が愛した金色の少年。」
人形をばらばらに引き裂いたときに中から蒼い珠と紅い珠が転がってきた。その二つの珠にアンクの思いが詰まっているような気がした。
「エド?」
「ロイ…。オレさ。やっぱりあんたを愛してて正解だと思った。」
「そうか」
「それじゃあさ・・・東方司令部かえろう!」
そういうと大佐は優しげに微笑んだ。その顔に思わず顔が熱くなる。
「鋼の・・・どうかしたか?顔が赤いぞ」
「なんでもねぇよ・・・速くかえろーぜ!」
「鋼の。」
「ん・・・?なんだよ。」
ポン
大佐はオレを抱いて言った。思わず大佐の事を正面から見た。綺麗な顔だった―
「んっ・・・はぁ、んっく」
「はぁ・・・エド、へいき・・・か?」
「へぇきだよ・・・、ロイ」
「いきなりしてすまないな」
「いいよ。それがあんたがオレを愛してるっていう証拠なら」
そう言った時オレの手から二つの珠が落ちた。
「エドワード、それは?」
オレは掌に紅い珠蒼い珠を乗せていった。
「アンクを引き裂いた時出てきたやつ。」
「ほう・・・紅い珠は君のようにもえているね・・・。」
「じゃあ蒼はあんたか?どうも見えないな・・・ただ軍服が青いだけ見たいな?」
作品名:lost heven 01 作家名:空音