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lost heven 02

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エド自身もこんな言葉が出てくるとは思わなかった。流れだけの言葉なのかもしれないと思ったがそれは、自分の本心だと感じたからだ。きっと、大佐に言われるまで実感しなかったんじゃないかと思うほどだ。それまではただ・・・いや好きだったのかもと考えていると。
「エドワード君、それに大佐お茶をお持ちしました・・・二人とも顔を赤くしてどうしたんですか?」
「中尉…?!いや、なんでもないが。」
「そうですか・・・」
「あ・・・あははは!ありがと中尉!!うん話聞いたからもう仮眠室で休むな!それじゃあな!大佐。」
「ま…待てはがねの!」
エドはそれだけ早口で言い残すと部屋から出て行ってしまった。
「大佐…何かしたんですか?」
「いや・・・」
ロイがリザに問い詰められている間、エドは仮眠室で横になっていた。
「・・・やばい、受け入れちゃったな」
先ほど、ロイの告白を受けてしまったエドは自分の性格を省みようと思った。そして、それと同時に戦争について考え始めたのだった。
「大佐のことは良いとしてってよくねぇけど・・・戦争行くのか…」
正直そこまで心が回らなかったとエドは思った。戦争に行く上に自分の上司に告白されて冷静に判断できるものがいるだろうか?そう考えていた。
「軍に頭を下げたことはわかってたし、戦争に行くというのはいつかあるとは思っていた。でも、実際は関係ないと心で思ってたのかもしれない・・・だから、それを最初に認められなかったんだ・・・」
人を殺すことにつながる戦争に加担することなんかないと思っていたエドは今になって後悔したのだった。
「大佐も…行くんだよな」
「どうしたの?兄さん?」
「ア・・・アル?!」
アルフォンスがいきなり声をかけてきたので、思いっきり大きな声で叫んでしまった。
「って・・・!なんでいるだよ?!」
「あれ?大佐の方がよかった?」
「ちげぇ!」
「そうなのかね?」
否定した瞬間にロイが入ってきた。
「嫌味言いたそうな顔だな…」
「そうじゃない・・・が。君の告白の真意を確かめようと思ってな。」
「・・・真意じゃなきゃだめ?」
「兄さん!大佐と付き合ってたの?」
「は?」
エドとロイは同時にアルの方向を向いた。
「そうなんだね!おめでとう兄さん!!」
「え・・・ちょっ、アル?!」
「じゃあ、ばっちゃやウィンリィに報告してくるね!」
「アルフォンス?!待つんだ」
「あ・・・」
「「なんだ?」」
「お幸せにぃ~」
「待て!アル!アルぅ~」
赤い顔したエドと呆然と固まっているロイを置いて、アルは仮眠室を出て行ってしまった。
「・・・あ、」
お互い顔を見合わせた二人は目があったことに顔を赤らめてしまった。
「あ・・・あのさぁ、大佐・・・勘違いしないで欲しいんだけどさ・・・」
「なにかね?」
「さっきの・・・流されたわけじゃないから」
「と・・・いうと?」
「それ以上は言わせんな!」
「・・・君に言ってほしいのだがね」
エドはそのキザっぽいロイの一言にますます顔を赤らめた。実際、その時の顔はどの女性もいや・・・男性でさえ赤くなるような顔だった。しかし、エドはそんなロイの顔に悲しみや困惑に似た表情を見つけ憂いと笑顔が混ざった顔に見惚れてしまっていた。
「鋼の?」
「うわぁぁ!」
上目遣いで顔を赤らめこちらを見ていたエドはロイの声に異常に反応してしまった。実を言うとロイも下からのぞくエドに見惚れていた。だが、あくまでポーカーフェイスを気取りエドの二つ名を呼んだのであった。
「あ・・・えっと」
「なんだい?言ってみなさい。」
ロイは、エドの肩に手を置き優しげに言った。その低い声と肩に置かれた温かい手にエドはまた顔を赤らめ、バツの悪そうに呟いた。
「・・好き」
「なんだい?聞こえなかったもう一回行ってくれないか?」
「好き・・・!」
実は、最初の好きも聞こえていたロイだったが恥じらいを含んだエドの声が聞きたくてわざと聞こえないふりをしていたのであった。そして、ロイはエドが二度目の好きを言った時思いっきり抱きしめた。
「あんた何してん…」
「君には、これからひどく悲惨なこと苦しい現実というものを知ってもらうよ。」
「たい・・・さ?」
「人が死に、そしてそれを代価に自分は生き残る・・・世界とのつながりを自分の身で体感することもあるだろう」
エドは、ロイが戦争のことを告げているのだと分かった。ゆえに次々と紡がれている言葉を聞くのが辛かった。この人は自分のことを心配している・・・それはきっと、戦場では伝えられないからであろう。ましては、今度の敵は未知と言われる物理学、それらを研究する・・・いわば彼らも研究者である。彼らが持つ力は錬金術と同等かそれ以上なのである。きっと、彼らにエドはある種の情を持つことになるだろう。しかし、それは戦場において持ってはいけないものだ。
「そして、どちらかが消えるかもしれない・・・意味は解るな。」
エドは、少し間を置き頷いた。もちろん意味は理解していた・・・消えるということは死ぬということなのだから。
「それでだ…エドワード?」
エドはまさか自分の名をロイが呼ぶとは思わなかったので体が過敏に反応した。その低い声で読んだ自分の名を聞いて糸が切れたのだろうか?蜂蜜色の目から涙がこぼれた。
「うん。」
できるだけ、泣き顔を見られないようにうつむきながら肯定の返事をしたエドがいつもの様子と違うので、ロイはまた
「エド…?」
とつぶやいた。
思わず顔をあげたエドの目の前には悲しげに顔を歪めたロイがこちらの覗きこんでいた。
「ロイっ…!」
まるで今まで水を止めていたダムが崩壊したかのように、ぼろぼろと泣き出した。エド自身はどうしてもこの目からあふれ出る涙を止めようとしたが彼の意を反し留まることを知らない。その涙を優しくロイが拭った。
「泣いたらいいよ、今しか泣けないんだ。きっと、戦場では泣く暇さえないだろうから―」
エドは背中にまわされたロイの腕と同じようにロイの背中にまわしロイの胸に顔を押し当て泣いた。もしこれが、この人と触れる最後の機会になってしまったらどうしよう―
不意に唇に違和感を感じた。触れるだけのキスをされたのだと・・・不思議と嫌とは感じなかった
「・・・すまない、エド」
「いいよ?ロイ…」
涙ながらに微笑んだエドにつられてロイも安心したように微笑んだ。
「大佐!」
互いに微笑み合っていた二人・・・その二人の仲を引き裂いた結果となってしまったと中尉は後程思ったがそんなことよりロイとエドに上の者の命令を告げた。
「大佐は大総統室に言ってください…話さなければいけないことがあるそうです。エドワード君はグラン准将がお呼びでした。」
「そうか…」
ロイは不審に思った。大総統が自分を呼ぶのは解るが、エドワードがグラマン准将によばれるのは不自然だからだ。
「鋼の錬金術師!」
そう考えていたのも束の間、グラン准将が直々にエドを呼びに来たからである。
「何をもたもたしている?!」
しんみりとした空気に会わぬ声が、ここにいた三人の耳に響いた。しかし、それを発した本人のグランはいわば上司なのである。三人はそれを拒むことができなかった。
「すみません、グラン准尉・・・今すぐ向かわせます。」
作品名:lost heven 02 作家名:空音