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lost heven 02

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エドが今まで見たこと無いほど弱った表情のロイは弱々しく言った。
「それでいいのだ!早く来たまえ鋼の錬金術師」
エドは助けるようにロイを見た・・・しかし、ロイは察してくれという目だった。中尉も目を伏せていた。
―あぁ、しょうがないんだ。上の命令は大佐でさえ抗えないんだ。
エドはそう思った、だから自分も上には逆らわないことにした。
「はい。」
いつものように気を張った声で答えた。それは慣れていないことを表した。また、それを知ってるのは軍の中でも東方司令部だけである…そこでエドは不審に思った。なぜ、東方司令部に大総統やグラマン准将という本来なら中央にいるはずの人間がいるのかと、そこで思った。オレはこれからもっと酷いことを聞かされるのだと。グラン准将もどちらかというと近距離型で、イシュバール戦では大佐に負けず劣らず人を殺めたという。
「鋼の錬金術師」
いきなり、二つ名を呼ばれて驚いたが、明らかに下心というものがある・・・気色の悪い声であった。
「なんでしょう?グラン准将。」
「きみは断らなかったと聞いたが」
その言葉を聞いた時、戦争のことだと思い自分の推理は正しいとエドは思った。
「はい。」
「それは、ロイ・マスタングに強制されたからか?」
「いえ、自主的に選びました大佐に告げられてすぐに決めました。」
「そうか、君が断って無くてよかったよ。」
その言葉がとても不自然に思った。
「断っていたらどうなっていたんですか?」
エドは慣れない敬語で言った。
「それは君に言うことはない…それより。」
どうして伝えないんだ?と思いながら続きの話を聞いた。
「涙の跡があるかどうしたんだ?」
「あ・・・これは。」
「もしかして、戦争という事実を聞いて泣いたのでは?」
グランが言うことはあながち間違ってはいなかった。だが、この状態で大佐の胸で泣いていたなど言えるわけもなくただ、黙っていた。
「まぁ、それは良い。」
それもいいのか・・・と思ったがグランはエドが東方司令部で見たこと無い部屋に連れて行った。
「ここでいいだろう」
グランがエドが知ってはいけないようなことを話し始めた。
一方そのころロイはと言うと―
「なんですって?!」
「・・・すまないな。こればかりはしょうがないのだよ。マスタング君」
「しかし、エド…鋼のにそんなことっ。」
それは、エドが前線として出るのは自分と差ほど変わらない子供たちが多くいる地域であった。きっと、エドは精神崩壊すらするやもしれないなぜなら、人を殺すということに抵抗がある彼が大人・・・ましてや子供などが殺せるわけがないからでもし殺してしでもしようものなら自ら止めるような優しい子なのだから。
「彼はまだ子供っ・・・それに精神さえ不安定です!」
「彼が望んだことなのだろう?」
彼は私のためを思い志願した…すべて私のせいに繋がるじゃないか・・・
「……しかしっ!」
「以上だよ。マスタング君、さて彼を迎えに言ったらどうなんだね?」
「え?」
「鋼の錬金術師をだよ?今頃グランに説明を聞いているだろう」
「・・・!まさかっ、糞っ間に合ってくれよ?!」
ロイは、大総統と話していた部屋を後にし駈け出た。
エドは、東方司令部でもあまり使われていない部屋で一人ポツンと突っ立っていた。その頬には微かに泣いた後も見られた。
「エド!平気か?!」
「ロ…イ」
振り向いたその眼には光が無かった。きっと絶望的な事実と対面したからであろう。
「グラン准将にはなにもされていないな?!」
グランの名が出た瞬間エドは涙を流し始めた。それは、先程見たものではない本当の恐怖からなるものだった。ロイはエドの体と部屋の周りを見た。部屋には一つの机に二人分の椅子、それ以外に何もなかった。きっと、エドには手出ししていないだろう。
「・・・ロイ」
エドは絞り出すように声を発した。焦点が定まらない目でロイを見つめそしてまた下に落とした。蜂蜜色の瞳がふさがれ代わりに涙が零れた。
「とりあえず…仮眠室にっ!」
エドはロイに抱きかかえらるようにして仮眠室に向かった・・・そこにはリザとアルフォンスの姿もあった。
「話は聞きました・・・」
アルフォンスは悲しげに言った。実際顔には現れぬが本当に悲しんでいたのだろう。
「すまない…私が断れなかったばっかりに」
「いえ、いいんです。兄さんが望んだことだろうし」
「アル…ごめん、お前取り戻すのが遅くなっちまうな…」
「いいよ?兄さん、それより早くベットで横になって?僕そんな弱ってる兄さんなんて見たくない。」
エドはロイによって優しく寝かされたのだった。
「エド・・・もう、平気かね?」
「ん・・・ロ、大佐はもう知ってるだろうけど」
「やはりあの事を話されたのだな?」
アルフォンスはあえて口にしなかった、きっとそれはエドが話したくないことだと思い深追いしたくなかったからだ。しかしエドは話し始めた。
「うん…オレが所属する部隊が、オレと差ほど変わらない子供たちがいるところ…だろ?」
「・・・!」
アルフォンスはまるで信じられない・・・そう思ったであろう。
「でも、オレは大丈夫だから!アルは心配しなくていいよ。」
弱々しくエドはアルに告げた。ロイもリザもアルフォンスもそんなエドを見たくなかった。
「だから…アルと中尉、オレのこと心配しないで?今だけ一人にさせて欲しいんだ」
「しかし…エドワード君」
「いいんです、中尉。兄さんの望みなんだから。」
そう言ってリザとアルフォンスは部屋を後にした。
「・・・」
ロイとエドはたがいに口を閉ざしていた。思えば今日一日でいろいろなことが起こった。呼び出されたと思ったら戦争の前線で戦えと言われ、そのあと告白されて答えてなぜかアルフォンスに誤解されてウィンリィ達に報告されたと思いきやいきなり、大総統とグラン准将がやってきて絶望的な報告を聞いて・・・本当にいろんなことが起きた。そう回想しているうちにエドは自分とロイが付き合うことを今日決めたんだ、と思いだした。
「エド…こんなときに言うのもなんだが、私も気持ちの整理がついていなんだ…私の家に来てくれないか?」
「うん…オレも気持ちの整理どころか、まだ状況さえ完璧に理解してねぇし、あんたと一緒のほうが落ち着く―それに・・・」
「それに・・・?」
少し間をおいてエドは言った。
「オレさ、泣いちまうとこアルには見せたくねぇんだ!」
この笑顔ほど痛々しいものはなかった。
「それじゃあ、食事でもして行くかね?」
エドは、びっくりしたがその後こう付け足した。
「アンタがいつも通り奢ってくれよ?」
「君も、高収入なのじゃないのかね?」
「だって、あんたの方が稼いでるだろ?軍の大佐なんだからさ」
「君だって少佐の位を持ってるだろ?」
「い~だろ?ケチぃ…。」
エドは不貞腐れて言った。彼はこれで、照れているのであった。先ほどの涙も窺えるが、明らかにロイのことを舐めている・・・というより苛めているに似たものだ。ロイは少し考えてからエドを抱き上げた。
「あ、あんた何やってんだよ?!」
「いいだろう?等価交換だ。」
頬を赤らめながら、すこし俯いた。
「ん・・・、」
「嫌かい?なら…」
「違う。アンタの地位が・・・」
作品名:lost heven 02 作家名:空音