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ぐらにる 眠り姫5

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「ユニオンに潜入しているエージェントの報告では、捕獲された段階で、すでに、ロックオン・ストラトスは、正常ではなかったそうです。ですが、軍の認識票がなかったことと、パイロットスーツが特殊だったために、かなりの尋問はされたものの、それでも、何も出て来なかった。だから、ユニオンのグラハム・エーカーの保護監視の下へ落ち着いたのだそうですよ。」
 その報告は、宇宙で聞いていた。それから、ロックオン当人と接触したエージェントからも記憶がないことは報告されたが、確かめずにはおれなくて、マイスター全員で接触した。
 結果は、かなり残酷なもので、まったく記憶がないロックオンと対面することになった。だが、当人は、やはり、性格的には変わらなくて、マイスターたちを逃がしてくれた。連れて帰ろうとしたが、発信機と爆薬を仕掛けられていると告白されてしまっては、それもままならなかった。
 記憶がないこと、それが、脳になんらかの障害があって引き起こされているのなら、治療することはできるだろうということで、今度はカルテの入手を、エージェントの一人である王留美に依頼したのだ。
「それで? ロックオンの記憶はどうなの? 」
「それが、このカルテには、脳障害に関するものは一切ないのです。おそらくは、検査もされていないのではないかと・・・・」
 ただし、と、王留美は続けた。ロックオンが心疾患を患っていて、それは現在も進行しているだろうことは、カルテから判断できるということだ。
「近いうちに、ロックオンは手術を受ける事態になるであろうと、カルテを確認してくれた私どものドクターから言質は取りました。・・・その手術で入院する時に、追加検査をさせれば、はっきりするでしょう。」
 治療が可能であるなら、ロックオンに取り付けられた発信機等を、手術の時に同時に取り外し、連れて帰ればいい。
「治療できるものでないのなら、ロックオンは、その場で処分なさいますよね? そちらのほうも手配を・・・」
「待ってっっ、処分って? 」
「ロックオン・ストラトスの存在は、特秘事項レベルセブンだったと記憶しています。治療もできない。敵の保護監視下で生きていること。それらを考えれば、処分すべきではありませんか? 」
 何かが起こって、突然に記憶が蘇る場合もある。その場合、それを自白させられたら、組織の機密事項が漏れる可能性がある。それを阻止するには、存在そのものを消すしかない。王留美の言うことは、そういうことだ。
「その結果が出たら、こちらで処分する。」
「刹那っっ。」
「マイスターであった限り、機密事項を漏らすことは許されない。」
「もちろんだ。処分は、我々でさせてもらう。あなたがたの手を煩わせる必要はない。」
「ティエリアまでっっ、何を。」
「わかりました。では、その結果報告は、早急にお知らせすることにします。・・・ただ、ロックオンが、どのくらいの期間で入院することになるかは、まだ定かではありませんので、しばらくは猶予をいただきますわ。」
 調査報告は、それで終わった。実際の時間は短いものだが、かなり深刻な問題を孕んでいる。エージェントと別れてから、三人のマイスターだけになると、いきなり、アレルヤはふたりに掴みかかった。
「きみたちは、そんなにあっさりと処分なんて言葉使わないでっっ。」
 何年か一緒に働いていた相手だ。それなりに、お互いに通じ合うものがあったし、リーダー格で、何かと心配りしてくれた相手を簡単に、「処分」なんて言葉で消すことを、アレルヤは認められない。記憶を回復させることが絶望的だと判断されても、どこか、組織の施設で過ごさせることはできるだろうと思うからだ。
「エージェントに判断されたら、それで終わりだ。」
 若い方の刹那は、アレルヤの手を振り払って、ぶっきらぼうに言い捨てた。それを横目にして、ティエリアも頬を歪めた。
「どうやら意見は一致しているようだな、刹那・F・セイエイ。」
「当たり前だ。・・・・どうしても、無理なら俺がやる。」
「きみだけの問題じゃない。マイスターの総意だ。・・・アレルヤ・ハプティズム、僕らが、ロックオンを連れ出して組織の施設へ収容してしまえば、そこからは、どうにかしてやれる。とにかく、あの忌々しい発信機と爆薬を除去させることが優先だ。」
 人間というものは、こういうものなんだ、と、ティエリアに教えたのはロックオンだ。彼が生きているというなら、それは生かしておきたいのは、ティエリアの本心でもある。何も覚えていないくせに、自分たちを心配して逃してくれたロックオンは、やはり、以前のロックオンと同じであると、ティエリアは判断した。ティエリアは、ロックオンに以前も庇われて窮地を脱している。その時のように、記憶のないロックオンも自分たちを庇った。二度も助けられてしまったら、次こそは、と、思うのも人間だと、ティエリアは内心で自嘲した。知らないところで、処分されることだけは避けたいから、わざと、そう発言した。
「あ、ティエリア、刹那・・・それじゃあ・・・・」
「忘れてるんなら、そのうち思い出す。」
「髪が長かろうが、記憶がなかろうが、ロックオンはロックオンだ。・・・どうしても処分の判断が下ったら、僕らでやる。出来る限りの抵抗はするつもりだから、きみも手伝え。」
「うん、うん、そうだよね。そのうち思い出すよね。・・・わかった、手伝う。」
 ほっとしてアレルヤも腕の力を抜いた。まだ先は読めないが、助けられるなら助けたい、それは、アレルヤも願っていることだ。
「マイスターとしての判断としては、これは正しいものではない。だが、あの喪失感は・・・二度味わいたいものじゃない。」
「うん、そうだね。」
 四人で行動していたマイスターが、三人になった時に、何かが失われた感覚を味わった。息も抜けない激しい戦闘が続いていたのに、どこかで抜けてしまったものがあって焦った。あれは、たぶん、いつも、指示を出していた陽気な声がなかったからだ。
 本来は、マイスターが直接、手を出すべきミッションではない。不測の事態に遭遇したら、マイスターとしての本来の任務に支障を来たす。だが、それを圧してでも、ロックオンの奪回には手を出したいと、三人は思っている。




「ティエリア、刹那が出かけたみたいだけど? 」
 いつものように、刹那は単独行動に転じた。わかりやすいぐらいにわかりやすい行動だから、アレルヤは見逃すことにした。だが、報告しいわけにはいかないので、ティエリアの部屋をノックする。
「ロックオンに危険が及ぶような真似はしないだろう。」
 窓から外を覗いているティエリアも気付いていたらしい。
「けど、刹那は報告書をちゃんと読んでないよ? 」
「構わない。現実は受け入れるべきだ。」
 報告書に記されていた。
「一時的に正気を保っている時はあるが、普段は、ほとんど、正常ではない」
、ということ。前回の接触時は、奇跡的に正気に近い状態だったらしい。まともではないロックオンを見て、刹那は心を痛めるだろうと、アレルヤは案じた。
作品名:ぐらにる 眠り姫5 作家名:篠義