こらぼでほすと 留守番3
昨日、アイシャの手料理を、ごちそうになりながら、この部屋は寒いという話になっていた。三蔵も悟空も、あまり暑さ寒さを気にしない性質だから、これぐらいならいいだろうと思っていたが、アイシャも寒いと注意した。なんせ、ロックオンは免疫力とか抵抗力がガタ落ちしているので、なんらかのウイルスにやられると、確実に寝込んでしまうからだ。
「ああ、それは助かるな。朝が、めちゃくちゃ寒いんだ。」
「それとさ、刹那のコートだけどのキラのお古でよかったら借りたら、どうかと思うんだ。こいつ、そんなに使わないのに、わざわざ買うのは、もったいなくない? 」
「サイズが合うか? 」
「それはあると思う。あいつ、ものすごい衣装持ちだからさ、サイズの小さいのもあるはずだ。それでよかったらアスランにメールしとく。」
「じゃあ、コートは頼もうかな。セーターとインナーだけ買うとするか。」
あいよ、と、悟空は、携帯端末で、アスランに、それを依頼する。キラの衣食住は、すべて、アスランが管理しているので、そちらに連絡するのが有効だ。
暖房器具は、本堂の裏の物置にあるから、食事が終わってから、刹那と悟空で引っ張り出した。ファンヒーターとか電気ストーブを、あっちこっちに設置する。ちょうど、それが終わる頃にハイネが起き出した。
「なんでハイネがいるんだ? 」
「せつニャンの護衛。あの変態が、また湧いて出た。」
その説明をしつつ居間に顔を出したら、ちゃんと、子供たちのおやつが置かれている。
「お疲れさん、ココアにしたけど、いいか? 」
「あ、ロックオン、俺、朝飯。それと、コーヒー。」
「はいよ。白メシでもいいか? 」
「なんでもいいさ。」
「ハイネ、おまえ、車あるよな? 」
台所で、ハイネのために目玉焼きを焼きつつ尋ねる。ハイネは、自分で淹れろと命じられたコーヒーをインスタントで用意している。
「おう、持ってきてる。」
夜の仕事の時は、行き帰りはタクシーだが、それ以外の仕事には、車で移動している。寺の裏側に、大きな駐車場があるので、そこへ乗り入れてある。
「悪いけど、食料の買出しすんのに貸してもらえないか? 」
「ああ、そういうことなら使ってくれ。今日は予定がないから、付き合ってもいいぞ。」
食べ盛り大食らいとか、勝手な居候とか、突如現れる護衛陣なんかのために、冷蔵庫に食料を目一杯に詰め込んでおく必要がある。今日なら荷物持ちの悟空がいるし、車なら、さらに大量に買い物もできるから借り出すことにした。マイスター組にも、車が一台貸与されていたが、ロックオンが秋にダウンしてから、歌姫様の本宅へ回収されている。
ハイネは食事、それから、子供たちは、おやつを食べて、買い物に出かけた。たまには、昼を外食してもよかろうと、大型スーパーへ出向いた。
本気で、それを食べ尽くせるのか? と、思うほどに買い物して帰ってきたら、キラとアスランが来ていた。
大量の荷物が運び込まれている。
「それは、なんだ? アスラン。」
「キラの小さくなったお古です。刹那に着てもらおうと思って。」
「そんなにいらないんじゃないか? 」
「いや、ここに置いておけば、悟空も着られるだろうから。」
「刹那、これっっ、これ、着てみてっっ。僕の一押しっっ。」
真っ白で、ファーのついたコートをキラは、刹那に押し付けている。どこの女の子? みたいな格好だが、衣服に頓着しない刹那は、それを着てみる。悟空は、こっちだよ、と、同じタイプの黒を渡されて、悟空も、おう、と、試着する。
「なんか倒錯の世界へようこそ、みたいだな。」
「やっぱり、ハイネも、そう思うよな? 」
「うわあーーふたりともいい感じっっ。ねーねー僕、これと、お揃いの青があるから、これで一緒にお出かけしよっっ。」
ハイネとロックオンのまともな感覚からすると、そういうことなのだが、キラは大喜びで自分用のコートを見せている。すると、刹那が、そっちがいい、と、キラの青のコートを引っ張る。
「キラ、刹那が青がいいんだって。それと交換してやれよ。」
「うん、いいよ。こっちのほうが、ちょっとサイズが大きいけどいい?」
言葉の足りない刹那のフォローは悟空がやっている。入れ替えたら、さらに、コートに埋もれそうな可愛い姿だ。
「なんか頭痛くなってきたぞ。」
「あーそれ、正常な反応だ、ロックオン。」
とりあえず、買い出した食糧を冷蔵庫に詰めて、整理することにした。着せ替え大会は勝手にやってもらう。今夜は、鍋にでもしようかな、と、考えていたら、アスランが出かけます、と、言いに来た。
「なんでしたら、今夜このまま、うちへ泊まってもらってもいいですが? 」
「うん、そうしてくれると有難いな。」
せっかくの休日なので、悟空や刹那だって外へ遊びに行きたいだろう。わざわざ、家で燻っている必要はない。それに変態に追い駆けられても、キラたちのマンションだと侵入される心配もない。
「わかりました。・・・ああ、ハイネ。ロックオンさんの昼寝監視は頼む。」
「おう、そっちは任せとけ。」
日曜の夕方まで預かります、と、アスランが連れ出してくれた。あまり親猫から離れたがらない刹那だが、ハイネから、「俺が監視してるから大丈夫だ。」 と、言われると黙って頷いた。それなりに精神的不安は、軽くはなっているらしい。組織の仕事で、二ヶ月近く離れていたのだから、一日くらいは問題なくなったと思うと、ロックオンも安堵する。
ドタバタと出かけた年少組を送り出して、やれやれと、ロックオンとハイネは、こたつに寝転んだ。
「なあ、ママニャン・・・・・あれ? 」
声をかけたのに反応がない。あれ? と、起き上がったら、すでに、ロックオンは昼寝に突入している。買出しやら、刹那の服を買ったり、と、午前中、動きまくったから、電池切れだ。風邪を引かせるわけにはいかないので、毛布を押入れから取り出して、こたつ布団からはみ出している部分に、そっとかけた。卓袱台には、みかんとか、茶菓子が置いてあるから、のんびりと、テレビなんか眺めつつ、ハイネも休日の午後を堪能した。
さて、こちら、ラボでは、頭から湯気でも沸かしているのかもというほどに、かっかしているティエリアがいた。頼まれた仕事が、ことのほか、複雑で、なかなかクリアーできないのだ。
「ティ、ティエリア、少し休憩しなよ。」
そっと、紅茶を差し出して、アレルヤが宥めているが、「うるさいっっ」 と、一喝されて、びくっと身体を震わせる。
「大丈夫だよ、悟空君がいるし、それにね、『吉祥富貴』のスタッフが、ちゃんと常駐してくれてるから。」
とりあえず、あの怒りモードを、どうにかしてくれ、と、ここに残っているスタッフから、アレルヤも頼まれたので、そうやって取り成している。夏に現れた時は、ハレルヤが超兵パワーで撃退した。あの厄介な相手が、再び、現れたのは、アレルヤたちもびっくりだ。
「・・・・ったく、キラもキラだ。どうして、あそこでミサイルのひとつも撃ち込まなかったんだっっ。そうすれば、そのまま圧壊させてしまえただろうにっっ。生半可にするから、こういうことになるんだ。」
作品名:こらぼでほすと 留守番3 作家名:篠義