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いつか愛になる日まで

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 なんかすげぇ冷たい目で睨まれたぞ俺は、と顔をしかめてヤマジが言う。
「カカシさん、怖かったですね」
「それだよ!」
「え?」
「お前、あの上忍のこと名前で呼ぶだろ? あの人をそうやって呼んでるのってお前だけだと思うけど? 名前で呼ばれるの嫌ってるって話だからな。」
「そんなことないです。火影さまも呼んでます」
「そりゃ、火影さまだからな」
 迫力の女傑が『さん』付けで呼んでいたら鳥肌ものだ。
「猿飛上忍も紅上忍も呼んでます」
「同僚だからだろ。なんにしろな、あの上忍様は名前で呼ばれるのが好きじゃない。なんでこんなことお前が知らないのか不思議だよ。ノワキ上忍だって名前で呼んでないっていうのに」
「階級で呼ばれるのは堅苦しいって言ってましたけど」
「だーかーらー、お前限定なんだよ。第一な、あの上忍が毎日毎日晩飯を人と食えるほど暇だと思うか?」
「暇なんじゃないですか。任務の時は1週間くらいいないですもん」
 アホッとヤマジはイルカの頭を軽くたたいた。
「俺はな、上忍様がなんでお前をかまい倒す時間があるのか不思議で調べたんだよ。あの人な、S級の任務を受けることでお前との時間を確保してた。努力してたんだ」
「どういうことですか」
「高度な任務の後は休暇をもらえたり、軽い任務しかまわされないってのは知ってるだろ?」
 イルカは頷いた。過度のストレスを受ける高度な任務の後は強制的に休ませたり、負担にならない程度の任務しか与えないことになっている。精神の崩壊を防ぐためた。下忍や中忍程度ではそのような任務につくことはなく、実際には上忍や暗部に適用されていると聞いた。
「思い出せよ、あの上忍が任務だっていなかったのはいつだ?」
「えぇっと直近ではー、2週間前で、あとは、えーと、えー・・・」
「あぁもういい。いいか、時系列を確認するぞ」
 転がっていた枝を取り上げてガリガリと地面に数字を書く。
「まずお前を食事に誘ったのは9月初めだ」
「なんでそんなこと知ってんですか」
「誰でも知ってるわ、これくらい。ワーワー騒いでたからな」
 トンボを見つけたって言ってたなぁ、とイルカは懐かしく思った。全然怖くなかった。
「で、最初の任務は10月最初の1週間と半ばの3日、2日飛んでまた3日、11月の中旬に1週間、そして2週間前の3日間だ」
「すごい。先輩、どうやって調べたんですか」
 調べたこともすごいが、いちいち覚えているのもすごい。
「5代目になって報告書の整理が追い付いてないんだよ。それをサービス残業で片付けたついでにコソッとな。俺も事務が長いだろ? ま、手伝いを許されるくらいには信用されてんじゃねぇ?」
 お前も黙ってろよ、と先輩はイルカの髪を乱暴にかき回して言った。
「それでだ、あの上忍の報告書を見てみたんだが白紙だ。任務期間と担当部隊の名前があるだけで任務地がどこなのかさえ書かれてないんだぜ」
「変ですね」
 任務結果は詳しく記載し、上層部内で回覧が行われるはずだ。いくらカカシといえど、報告内容を書かずに済ませられるほど特別待遇されているわけではないだろう。それどころか、高度な任務を請け負っているから下忍たちより報告書提出の義務は厳しいはずだ。もっとも回覧先が火影のみということはありえる。
「あの上忍様は文字が書けねぇんだな」
 ニヤニヤ笑いながらヤマジが言うのに、イルカは「なわけないでしょ」と呆れた。
「面倒くさかったとか」
 ・・・ありえる。が、それで許されていたら木の葉も末期だ。あの火影ならカカシにだけは半殺しの目にあわせても報告書を書かすだろう。そういう仲だ。
「無理矢理白紙で押し通したか」
 ・・・否定できない。あの人ならなんでもやりそうだし。
 むむむっと考えだしたイルカを面白そうにながめて、ヤマジは「ま、冗談はここまでにして」とバシンとイルカの背中をたたいた。
「いたっ、何ですか!」
「お前ってさ、真目面だし、人当たりいいし、子供にも好かれてるし、書類整理もけっこうきっちりしてるよな」
「そんなこと言っても先輩の好きな花乃屋のいちご大福は買いませんからね」
「照れんなよ。これは本当だ。でも大福はいつでも持ってきていいぞ」
 ・・・って、どれが嘘なんだよとついネガティブに突っ込む。
 もうっ、とふくれて見せながら、イルカは先輩のことを考えた。
 ヤマジはイルカが教師になったときから、なにくれとなく面倒を見てくれている。何を聞くにも5年の差はちょうど良くて、イルカがわからないことはほとんど経験しているから的確なアドバイスをくれるし、ちゃかしながらも相談事には親身になってくれる。
「先輩っていい人だったんですね」
「過去形かよ」
「いい人なんですね」
「俺のモットーは『親切』だ」
「えー、それはちょっと違うんじゃないですか」
「お前な」
「だったら、昨日マキタ先生の仕事、手伝ってあげたらよかったのに」
 新任教師の浦野マキタ中忍は実動部隊としてノワキ上忍のもと、3年間あちこちで働いていたがアキレス腱に傷を負い、それが致命傷となって事務に移ってきた。まだ若い。
「あいつもなぁ、やっとけよって言っても何でも後回しだからな。いつも後になってからビービー人に泣きつくんだ。痛い目見ないとわかんねぇんだよ」
「でも昨日はさすがに可哀相でしたよ」
「なんで」
「午前中でしたけどアンコさんが来て、散々罵倒されてましたもん」
 アンコの口の悪さも相当なものだ。人に合わせて言い方を変えてくる。ネチネチやったり、声も高らかに罵倒したり、とにかく相手に一番ダメージが残るような言い方を選択する能力にかけては誰も太刀打ちできない。そして、人を罵倒するのは趣味だ、きっと。
 イルカなんてアンコを女だと思うこと事態が失礼のような気がする。自分より強い気がして苦手だ。五代目に報告するときなどはなるべく視界に入れないようにしているほど関わりを持ちたくない。
「たまには女に怒られたほうがいいんだよ、あいつも。ちょっと小綺麗な顔してるからってカワノもユキナも甘やかしすぎだ。あいつは意外としたたかなんだよ。自分に甘い人間にはずうずうしいからな。俺にはびくびくしてる癖して」
 お前もいいように使われてるんじゃないよ、どうせ手伝ったんだろとペシンと叩かれる。
「あの量は一人じゃきついですよ」
「お前はやってきただろうが」
 ため息をついたヤマジは「まぁ今はマキタのことはどうでもいい」と言った。今後もどうでもいいけどな、と憎まれ口を叩くが、ヤマジはマキタを見捨てるようなことはしないだろう。
「上忍様の話に戻るが白紙の報告書ってのは、ちゃんとした理由がある。担当部隊が暗部の時だ。任務地さえ記号でしか書かない」
「え?」
 お前にもそろそろ教えなきゃなと思ってはいたんだが、とヤマジがガシガシと頭を掻く。
「あのな、報告書は俺が知ってるだけでも3種類ある。受付を通るランクの低いものとそれより重要度が高いもの、これは上層部だけに回覧されるものだ。まぁ上忍クラスの任務報告書だな。あとは暗部関係、またはそれに準ずるものの報告書だ。こっちはな、任務報告内容を書かないんだ。報告書は特殊な巻物に書いて火影様に渡すんだよ、直接暗部がな」
作品名:いつか愛になる日まで 作家名:かける