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こらぼでほすと 来襲2

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 びしっとキラとアスランの頭にもハリセンを叩き込み、三蔵が吼える。未経験者に教える話じゃないっっ、教育上よくないっっ、と、怒鳴っているのは、ひとえに、自分の扶養者のためだ。
「そろそろ、次のお客様の時間じゃないですか? キラ様。」
 トダカが、微笑ましいとでも言うように、キラに声をかける。もう、ここいらの年齢になると懐かしい話クラスになっているので、ただの世間話としか耳に入らない。
「ああ、ほんとだ。久しぶりに、ミリアリアたちが来るんだった。ディアッカ、イザーク、そろそろ時間。」
 そう叫んで、キラがカウンターから玄関ーへと歩き出す。すでに、イザークもディアッカも、玄関でお迎えの体勢だ。
「さあて、俺らも働くか。」
 やれやれ、と、悟浄も腰を上げる。自分の客がない場合は、ヘルプで手伝うのが基本だ。ミリアリアはディアッカとイザークの客だが、女友達をたくさん連れて来るので、ヘルプの人数が必要になる。 




 何ヶ月かぶりだと気付いて、タクシーを降りてから、近くのコンビにまで遠征した。もちろん、ほろ酔いのスメラギも一緒だ、つまみになりそうなものや、ビールなんかを買い出して、マンションに入った。
「ここが社員寮?」
「全部じゃないぜ。俺たちは人数が多いから広いとこを貰ったんだ。」
 秋の終わりにダウンしてから、ほとんど、こちらに戻っていなかった。掃除に、一、二度戻っただけで、どういうことになっているのか確認すらしていないのだが、どうせ酔っ払いは気にしないだろうと、こちらに連れて来た。スメラギの滞在するホテルより、ここのほうが誰も居なくて話し易いだろうと思ったからだ。
 買ってきたものを、居間で広げて、しばらくは陽気に飲んでいた。トダカが用意してくれた酒は、かなり美味いらしく、ガバガバとスメラギによって空けられていく。一応、二本、貰ってきたのだが、足りないか? と、思ったほどだ。さすがに、そのスピードにはついていけないので、ロックオンのほうはビールをちびちびと飲んでいる。
 一本目が空いたところで、スピードはなくなった。それに表情が暗くなってくる。そろそろだろうな、と、ロックオンも酔うために酒に切り替えた。聞くだけでも、相当、神経に障るだろう予想はしていた。そんなものを素面で聞きたいと、ロックオンだって思わない。
「あたしには才能がないっっ。」
 ああ、始まった、と、内心で苦笑する。組織の戦術予報士というのは、かなり重圧のある仕事だ。そこに、たくさんの人間の命が左右される。何事もなければスムーズにいくだろうが、現実は甘くない。例えば、自分のようにミッションより私情を優先して暴走するバカもいる。そんな不確定要素まで予報はできない。それは頭でわかっていても、誰もが戦術予報士の責任にしたがるのだ。
「戦う目的が見当たらないのよ。でも、今、組織は抜けられる状態じゃない。やれることなんて、たかだかしれているのにっっ。また戦う準備なんてナンセンスよっっ。」
 どんっっとグラスが乱暴に机に置かれる。それに、新しい酒を注ぐのがロックオンの役目だ。どんな慰めも助言も、通用しない。そんなものがあるくらいなら、誰かがとっくにやっているだろう。それがないから、こうやって、彼女は口にして外へ吐き出している。イアンやラッセあたりは、この醜態を見ているだろうが、さすがに、組織の人間に見せられる代物ではない。だから、スメラギの愚痴を知っているのは、僅かの人間だけだ。
「マイスターの要であるあなたまで抜けて、どうやって纏めることができるわけ? 」
「うん、悪かった。」
「あたしに、なんでも求めないでよっっ。そんなに万能じゃないわよっっ。」
「うん、そうだな。」
「もう、いやよ。誰かが死んでいくのを見るなんてっっ。」
「ああ、うん。」
「戦いで戦いを止めるなんて無理なのっっ。みんな、わかってるのよっっ。」
「・・・うん・・・」
 とりあえず吐き出したいことを、彼女は吐き出す。相槌なんて聞いていないが、それでも相手は必要なのだ。いろんなことをわめき散らして、また興奮してガバガバと酒を飲む。
「ほら、付き合いなさいっっ。あなたには、その義務があるんだから。」
「あっっ、それ・・・はいはい。」
 何かを言う前に、自分のグラスにも原液が、そのまんま投入される。舐めるようにしているが、それでも結構、飲んでいるだろうな、と、考えつつ口をつけたら、もっと飲め、と、グラスをスメラギが勝手に傾けた。
 こうなるだろうと思っていたが、こりゃ明日、起きられるかどうか怪しいな、と、内心で笑っていた。



 翌日、揺すられて起きたら、すでに午後近い時間だった。案の定、二日酔いで頭がズキズキと痛んでいる。ふたりして、そのままソファで沈没したらしい。スメラギのほうも、ちょっと寝ぼけ顔だ。
「ごめん、帰る。」
「・・・あー・・・たぶん。もうちょっとすると悟浄さんがさ・・・」
「ええ、今、下に来てるらしいわ。送ってもらうから見送りはいいわよ? ごめん、いつものやっちゃって。」
 当人も多少は覚えているので、いつも、朝には謝罪される。
「これぐらいなら、いつでも。・・・本日の予定は? 」
 これぐらいのことしかできないので、と、ロックオンは笑って起き上がる。頭痛はするが、それは誤魔化す方向だ。
「とりあえず、シャワーを浴びて、ベッドで睡眠でしょうね。」
「俺の携帯番号はわかるよな? 」
 何かあれば、と、言いかけたら、スメラギに止められた。
「明日、移動するわ。ちょっとすっきりした。」
「そうか。また、来ればいい。」
「そうね。あなたのところは地上待機所なんだから、私も泊まってもいいものね。」
「いつでも、どうぞ。」
 彼女は、いつも、女性陣を引き連れて、王留美の別荘に居ることが多い。まあ、たまにストレスフルになったら、ここに降りて、愚痴を喚けばいい。それぐらいのことしかできないのだから、付き合うつもりだ。
「またね、ロックオン。」
「ああ、下まで送る。」
「いいわよ。」 
 エントランスまで見送ろうとしたら断られた。というか、部屋の玄関が勝手に開けられて、悟浄がやってきた。
「ハーイ、スメラギさーん。おはようございます。」
「悟浄、おはよう。悪いけど、ホテルまで御願い。」
 こんな格好じゃタクシーは恥ずかしいものね、と、寝癖のついたままの髪を揺らして玄関を出て行く。いや、十分魅力的だよ、と、ホストトークで悟浄も出て行く。やれやれ台風が去った、と、気を抜いたら、頭痛が悪化した。とりあえず漢方薬を飲んで片付けてしまうか、と、冷蔵庫に入れておいたおどろおどろしい色の液体が入ったペットボトルを取り出した。
「うわぁー見るだけで口が苦げぇー。」
 前回は、レイという強制力があったから飲めたが、あまり飲みたくない代物には違いない。それに、今のところは、何も用事があるわけでもないので、ここで沈没して治すほうがいいような気がした。
・・・・寝てりゃいいんじゃねぇーか? ・・・・
作品名:こらぼでほすと 来襲2 作家名:篠義