消えなかった結果がコレだよ
馬鹿な事をチラとでも考えたせいで夢を見た。
最後に会ったのは、とある国で言う春の頃だろうか。
その時に何を話したかは実の所よく覚えていない。考えるべき事と仕事に追われまくってほぼ完全包囲されていたからだ。
ただそんな時間の合間を縫うようにして顔を合わせた時、景気付けとばかりに背中を叩かれた後の表情はしかと焼き付いた。
なにせそこにあったのは、後付で習得した上品な微笑みなんかではなく、知り合った頃によく見た強かな笑みだったから。
それを大事にしようと思った。
消えるつもりなんざ毛頭なかったが、いつ何時、何があっても物事が回るように備えておかなければならなかったし、そういう手筈を自分で整えていればいつしか覚悟も出来てくる。
二人の間で最後になるかもしれない記憶は、せめて笑いあえた時のものであって欲しかった。
だから仕事に忙殺されるようにして逃げ回ったのだ。
利己的なやせ我慢のかっこつけと笑いたければ笑え。
前向きな勇気と思い切りがあったら、ガキの頃神の御前で幾度も同じ告解を重ねずに済んだ事くらい自覚している。
作品名:消えなかった結果がコレだよ 作家名:on