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【けいおん!続編!!】 水の螺旋!!! (第二章・疑惑)

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 そう思って、このアルファベットを見ながら色々考えてみたが、やっぱり分からない。

 今の自分には何も分からない。分からない割に、思考だけがぐるぐる回って終わりを知らず、眠れそうにもない。

 何とか、真実を知る方法がないものか…。そうでなければ、ずっとこのまま眠れない日々が続きそうだ。



 2



「憂、大丈夫?疲れてるっぽいよ」

 やや俯きかげんの憂の顔を覗き込む、モップ頭の少女。

「う…うん、大丈夫。心配かけてごめんね」

 憂はモップ頭の方に顔を向け、笑顔を作った。だが、その精一杯の笑顔を見ても、疲れているのが分かる。

 モップ頭の少女は鈴木 純といった。彼女は憂のことを心配して、憂の家までやって来たのだった。

「もう、別に気にすることないじゃん。お姉ちゃん、戻ってきたんでしょ?」

「うん。そうなんだけど」

 あの日の夕刻、唯はいつものカフェに現れなかった。

 メールをしたが返信はなく、電話をかけても出ない。心配した憂は唯の住むアパートまで行ってみた。唯の部屋の前で、「お姉ちゃん?」と声をかけてみたが、返事はない。試しに、ドアノブに手をかけ、横にひねって手前を引く。ドアが開いた。鍵はかかっていない。憂はおそるおそるドアを開いて、中を見た。何度か来ているから、勝手は分かる。明かりのスイッチは、たしかこの辺だ。スイッチを入れると、部屋が明るくなった。とくに変わった様子もなければ、誰かが潜んでいる様子もない。

 机の上には、授業で使っているノート教科書、開いたままスリープ状態になっているノートパソコンが置いてある。部屋を見渡したが、かばんも置いたままで、中には財布や部屋の鍵も入っていた。どうやら、唯は大学にも行かなかったらしい。もしや、昨日のうちに、誰かに連れ去られたのだろうか?

 憂はみんなに連絡を入れた。姉のいそうな場所を聞いてみたが、誰ひとり心当たりのある者はいなかった。

 憂はその日、唯の部屋に泊まることにした。姉が心配であったし、玄関の鍵も開けたまま、鍵も部屋に置いたまま家に帰るわけにもいかない。明日になってお姉ちゃんが見つからなければ、警察に連絡しよう、そう考えていた。

 ところが、その日の真夜中に唯は帰って来た。憂が何があったのか訊こうとしても、唯は相当疲れている風で、ぐったりと倒れ込んで、そのまま眠ってしまった。

 次の日は、澪たちも加えて大騒ぎになった。唯が昨日、どこで何をしていたのか、みんな心配していたのだ。

 特に、憂は泣きそうな勢いで、

「何をしていたの?何があったの?みんなこんなに心配してるんだよ!」

と訴えたが、唯は

「いや、本当に何もないんだよ。みんな、ごめんね」

と云って、何も答えない。何かを隠そうとしていることは、一目瞭然だった。

「まぁ、唯が帰ってきてくれたってことで、よしとするか」

 律がそう云ったのがきっかけで、その場は流れ解散になった。

 たしかに、帰ってきてくれたのは良かった。けれど憂には、帰ってきた姉は人知れず、何か深刻なものを背負わせれているような気がしてならなかった。こんなことは初めての経験だった。私たち姉妹はこれまで何も包み隠さず、すべてを分かち合ってきた。それなのに、なぜ今になって、お姉ちゃんは私にさえ共有させない秘密を作ってしまったのか。

「もう、元気出しなよ。2週間近くも前のこと、いつまでも気にしてるなんて、おかしいよ」

「うん、そうだね。ごめんね」

と返したが、前のことだなんてとんでもない。唯はあの日からずっと、何か重荷を背負わされているような、ずぅんと暗い影を落としているのだ。その影はおさまるどころか、日増しに大きくなっているように見える。

「じゃあ私、今日は帰るから。元気出しなよ」

 純はそう云ってソファから立ち上がった。

「うん、ありがとう」

 憂も立ち上がり、純を玄関まで見送る。

 純が帰った後、憂は玄関に座り込んだ。純ちゃんの云う通り、元気を出すのが、きっと一番いい。でも、今のお姉ちゃんのことを思うと、どうしても苦しくて仕方がない。お姉ちゃん、いったい何を抱えてるの?どうして私に何も教えてくれないの?ああ、できることなら、お姉ちゃんの苦しみを分けて欲しい。苦しくても、今みたいに何も分からなくて苦しむよりはまし…。

 憂はその場にうずくまった。大切な肉親の悲しみを分かってあげられない悲しみで、憂は泣きだしてしまった。今日も朝まで泣いて過ごすことになりそうだ。



 3



 国立K大学といえば、誰しもが認める超難関校である。歴史も古く、数十年前には学生運動も盛んだったらしい。その校風は今なお受け継がれ、学生たちはその個性や行動力を自由に発揮できる。K大とはそんな大学である。

 真鍋 和はここK大の理学部生命科学科に所属している学生である。彼女は今、同学科の先生である石山教授の研究室にいる。彼女はまだ学部生でしかもまだ卒業研究をするような学年でもない。それなのに、なぜ研究室にいるのかといえば、彼女はここで研究補助のアルバイトをしているからであった。とはいえ、まだ研究はズブの素人である。研究テーマを与えられて、自分で実験を進めることは到底できない。つまり、院生たちの実験に使う試薬やサンプルを調整することが主な仕事となる。

 和は遠心機で軽くフラッシュした1.5mlエッペンチューブを、37℃に設定したウォーターバスに持っていくところだった。チューブの中には、先ほど混ぜ合わせたDNAプラスミド、制限酵素、バッファーの混合液が50μl入っている。先ほどのフラッシュの効果で、液はチューブの壁に散らばることなく、チューブの底に溜まっていた。
 それを専用のチューブホルダーに差し込み、ウォーターバスの中に入れる。温度を均一に保つために、機械が水を撹拌する作用に合わせて、ホルダーがぐるぐる回り出した。

「これで、2時間待つんですか?」

 和は自分に実験の手ほどきをしてくれている院生に尋ねた。今、彼女はサザンブロット (特定のDNA領域を検出する実験法) に使うプローブ (検出用のDNA断片) のもとになるDNAサンプルの調整の仕方を教わっているところだった。

「そうだ。これで制限酵素によって、プラスミドからプローブの配列が切り出される」

 和はこれまでに行った作業の過程を自分なりに振り返ってみた。しかし、初めてやる作業であるが故、やはり頭の中で整理がつかず、納得いくまで理解できたとは云い難い。

「すみません。もう一度、これまでの作業の原理を説明してもらえませんか」

 院生は優しく笑って云った。

「OK。まず、プラスミドとは環状のDNAであることは知ってるね」

「はい。このプラスミドにプローブのもととなる配列が組み込まれているんでしたね」

「その通り。ところで、このプラスミドには、制限酵素が認識する配列がいくつか存在する。あ、もちろん制限酵素って何か知ってるよね」

「ええ。DNAの特定の回文配列を切断する酵素ですね」