こらぼでほすと 襲撃4
リに、「よしっっ。」 と、内心でガッツポーズをかましたのは言うまでもない。
「見舞いだ。まだ、食べられないんだってな? ロックオン。しょうがないから花にした
ぞ? 」
「おう、ありがとさん。仕事なんだって? 」
「ああ、こっちで国際会議があるんだ。ホテルは面倒だから、ラクスんとこへ泊まること
にしたんだ。今日は、フリーだから看病してやれる。」
「いや、看病してもらうほどじゃない。」
花束を看護士に渡すと、付き添い用の椅子に、どっかりと腰を下ろした。キサカだけは
、ドアの近くに立っているが、それは無視してもいい。だが、カガリは、じっと、こちら
を睨んで肩を落とした。ベッドを起こして座っているので、視線はちょうど一直線になる
。
「どうした? 」
もう、いちいち敬語では喋らない。部下でもなんでもないんだから、ざっくばらんに喋
れ、と、最初に逢った時に言われている。
「・・・悪いな・・・・なかなか見つからない。」
「何が? 」
その言葉で、ロックオンは顔色を変えてベッドから背を離した。誰か行方不明にでもな
っているのか、と、思ったからだ。
「おまえの身体だ。いろいろと探しているんだが、遺伝子の修復っていうのは、難しいら
しい。せめて、右目だけでも、と、思ってるんだが、それすら見つからないんだ。・・・
・すまない、ロックオン。」
ぺこっと頭を下げたカガリに、ロックオンは、ずるりと身体をベッドに倒した。内実、
ロックオンの直感は正解だったわけだが、話が違う方向に逸れてしまった。
「俺かよ? 俺は、これで十分だから、あんま気にしなくていい。おまえさんが忙しいの
は、よくわかってるし、治療方法が開発されてないもんは、しょうがねぇーだろ? 」
「開発を急がせる。」
「だから、それはいいよ。今日一日、フリーなら遊びに行くとか、ゆっくり昼寝するとか
、たまにしか出来ないことをしてこい。」
「だから、おまえの看病を、だな。」
「看病してもらわなくてもいいって。部屋の中を歩くぐらいは、どうにかなってんだよ。
」
「身体ぐらい拭いてやるぞ? 」
キラが怪我した時も、私が看病したんだ、と、胸を張っているのだが、それとこれは違
うだろう、と、ロックオンは髪の毛を掻き上げつつ注意する。
「おま、それ、セクハラだろ? 」
「バカ言うな。立派な看病だ。・・・・キサカ、お湯を貰ってきてくれ。」
「いや、キサカさんっっ。俺、自分でシャワーを浴びてますからっっ。」
出て行こうとするキサカを大声で止めたら、くらくらした。それに反応して看護士が飛
び込んでくるほどだったらしい。
「カガリ様、病人を興奮させないでください。」
ちょっとぐったりしたロックオンを見て、看護士のほうはカガリを叱る。だが、相手は
、それで萎れたりしない。
「すまない。こいつが女みたいに恥ずかしがるんで、からかった。あはははは・・・・お
まえ、清拭ぐらいで、そんなに恥ずかしがらなくてもいいだろ? 」
からからと笑っているカガリの頭を一発拳骨したいところだが、動けなくて、悪態だけ
はついた。
「おまえこそ、恥じらいを持てよっっ。俺は男なんだぞっっ。」
「だからなんだ? いちいち気にしてたら、レジスタンスなんてやってられん。」
「はい? 」
そこで、キサカが、ごちんと拳骨をカガリに見舞って、「申し訳ない。」 と、頭を下
げた。ここの主従も、言葉より拳骨という付き合い方であるらしい。
「カガリは、十五の頃からレジスタンスに参加していたんだ。だから、普通の女性のよう
な繊細さが少々欠けている。」
「そう、私はガサツで大雑把だ。ははははは・・・・こいつが、私の教育係でサバイバル
訓練やら教え込んだ。だから、私が女らしくないのはしょうがない。」
「レジスタンスって・・・」
何で、一国の国家元首が、そんなことを・・・と、ロックオンが開いた口が塞がらない
を実践するように、ぽかんと開けている。キサカが、一応、帝王学の一環で、と、説明だ
けはしてくれた。父親のウズミも実践派の人だったから、娘が世界を知りたいと言った時
に、キサカをお守役につけて放逐したのだそうだ。
「テロリストと似たようなもんだろう。だが、いい経験だったと思う。実戦の怖さは、あ
そこで学んだからな。」
生身でMSと戦うなんて、今、思えば無茶だったな、と、遠い目で微笑んでいるカガリ
に、ロックオンも絶句する。つくづくと、『吉祥富貴』の関係者に、普通の人間は居ない
と思い知らされる。しばらく、無言になった。それから、カガリは、ふっと笑って口を開
いた。
「私に尋ねたいことでもあるんじゃないのか? ロックオン。」
そう言うと、カガリが真顔になった。最初から、どこかそういう雰囲気があることは察
知していた。
「なら、話が早い。何が起こってる? 」
「何も、いや、起こっているといえば起こっているな。地球連合の創設という一大イベン
トが持ち上がっている。それに付随して、独立治安維持部隊の創設という話が纏まりつつ
ある。オーヴは、連合に参加しないが、そちらから技術提供のオファーがきている。」
今回の国際会議も、その流れだ、と、カガリはしらっと説明した。もちろん、ロックオ
ンが尋ねたいことはわかっていて、そう言った。伊達に一国の国家元首はやってない。話
を誤魔化す事だってできるのだ。
「そうじゃない。」
「私の周りで起こっているのは、それだ。他は些細なことだ。」
「その些細なことの中に、マイスター関係のものはないのか? 」
「ないな。・・・おまえは、すでに理解していると思うが、おまえ自身は、マイスターで
はない。組織との縁は切れて、今は、『吉祥富貴』のスタッフだ。向こうに干渉する権利
はないんだぞ? 」
「わかってるよ。でも、俺で、どうにかなることがあるかもしれないだろ? 」
「組織は順調に復興している。オーヴもプラントも数年のうちに、組織との関係は切るだ
ろう。」
「おい、カガリ。誤魔化そうとしてないか? じゃあ、オーナーのMS部隊が留守してい
るのは、どういう理由だ? 」
そこが、とても気になるところだ。MSを大量に投入する用件というのが、ロックオン
を不安にさせている。それに、『吉祥富貴』の活動目的から推察される事柄が、どうして
も不穏でしかない。カガリのほうは、すでに、その答えを用意していた。どちらにせよ、
誤魔化せる間は誤魔化すということになっているから、アスランたちに、その模範解答も
用意してもらったのだ。
「独立治安維持部隊の内定をしている。まともな組織ではないというのが、私とラクスの
統一見解だ。だから、そちらの創設に関して、調査をさせている。」
「じゃあ、うちとは関係ないんだな? 」
「ああ、関係ない。」
互いに真剣に睨んでいる。もし、一瞬でも動揺したら、そこを突こうと、ロックオンも
考えていたが、カガリの瞳は少しも揺るがない。それどころか、「おまえは心配性すぎる
ぞ? ちよっとは、黒子猫たちを信用してやれ。」 と、言われて、自分が動揺して視線
作品名:こらぼでほすと 襲撃4 作家名:篠義