Hey Mr.travellin' Man
機関室から炭水車を越えて客室側へ乗り換えるとようやく一息つく。
「で、爆弾探せって言われたけど、具体的にどーしてるわけ?」
「あんまりうろつき回るワケにはいかないんだけどなー。今んとこ、地道に怪しい奴や怪しい物が置いてないか見て回るくらいしかねーんだよな、これが」
今まであんまたいしたとこで爆発してないし、停車駅からの時間差も結構バラバラだ。
懐から取り出した簡略化かれた路線図には、数箇所×印が付けられている。その中で東部と中央の境界近い×印を指で差した。
「ここ、中央行きの最後の給水ポイントな。周りは特に何にもないが、いくつかの路線が乗り入れてて、車の通れる街道も近い。身を隠して移動するにはもってこいの場所だ」
そこでハボックは背後を振り返って、オヤッサン、ポイント着くのあとどれくらい?と声を掛けた。
1時間弱ってとこか。途中牛でも横断してなけりゃな、と微妙に呑気な答えが返ってくる。
・・・そういえば以前、飼料を満載した馬車がひっくり返って、近所の放牧地から脱走してそれに群がった牛やら何やらで線路が止められた記憶が。
「・・・ま、それは計算に入れないとして」
「うん」
「おそらく奴さんは降りる直前に仕掛けて、自分はさっさと逃げるはずだ。残ってたら巻き込まれる上に、車中に拘束されたらもーそりゃ上から下まで調べられるからな。まずは狙うは現行犯逮捕」
でもあまりちょろちょろして、警戒させてもアレなんで探して回るにも手が掛かる。
「他にも私服の軍人は乗り込んでるんだけどな。捜索は後半の車輌は車掌さんにおまかせ、中盤は中尉、前半担当がオレ。アルは護衛で大将は差詰め遊撃隊ってとこか」
「大佐何もやってねぇじゃん」
「あの人は動かないのが仕事」
何だそりゃ。
それももっともなのかも知れないが、自ら動くタイプのエドワードからしてみれば、楽してるなーってなものである。
「あの人が動き回ると目立つんだよ」
主に妙齢の女子の方々の気を引くから。
・・・納得した。
「今までの件、総合してみればどっちかってーと後方の人のいない車輌に仕掛けられてる事が多い。オレは今から後ろ行くから、大将は前の車輌からよろしく」
「了解」
頼んだぜ、と言い置いてするするとハボックは屋根に上っていった。目立たないよう動くとなれば、やはりそうなるのか。人に見咎められずに移動となると仕方ないが。
「さて、と」
まずは1両目。
仕掛け人が動くと予測されるポイント到着まであと1時間。
作品名:Hey Mr.travellin' Man 作家名:みとなんこ@紺