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みとなんこ@紺
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Hey Mr.travellin' Man

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「あー終わった終わった。今回は楽で良かったぜー。ありがとな、大将」
「・・・結局、何か美味しいトコだけ持ってかれたよーな気がするのは何でだろ…」
待機させていたらしい軍用車の荷台に乗りかかって、錬金術で施した拘束を解いてやって、護送というか連行されていく男をぼんやりと眺めながら、エドワードは虚ろに呟いた。
何を言われたか知らないが完全に消沈というか茫然自失となっている犯人は、屈強なお兄さんに囲まれ、ますますもって小さくなっている。
「…まぁ、何事もなくてよかったじゃない」
や、弟の言う事ももっともなんだけれど。

結局、あの時連結部に仕掛けられていた爆薬の主成分を、さっさと結合解いてバラバラにしてしまうだけであっさりと処理は終わってしまった。それもまぁ事前に構造だの成分を把握していた為だが。
それにしてもあっけない幕切れだった。
捕まえた男は、ただの身なりのいい商人風の男で、テロリストといった風情ではなかったし。
しかしどのみち、今回の犯人ではあるから、問題になっている混合火薬を手に入れていたのは確かなので。結局何だったのかは今から明らかにされていく。
まずは何の犠牲も出さずに未然に防げただけで良しとするべきか。
結局、汽車は中央との境は越えなかった。男はこれからイーストシティへ連れ戻され、入手経路や何やらの背景をネチネチと絞られる事になるのだろう。取りあえず、自分のお役目は終了したので、あとのことはまぁ別に勝手にやるだろうからそれは良いんだが。
…それにしても。

「・・・でも、これでよく大佐出てきたよな」
「ん?」
事後処理の打ち合わせをしているらしい上官の方を遠くに眺めながら、途中からずっと引っ掛かっていた事がさらりと口をついて出た。
「自分が囮とかは進んでやりそうだけどさ。情報、何か全部不確定じゃん。そーゆー確定的なものが何一つない状況で、自分から動くタイプじゃないと思ってた」
・・・鋭い。
さすが何のかんのと反目しつつも、エドワードはあの上官の事をよく見てる。
もしくは身につまされているだけなのかもしれないが。
苦笑を一つ漏らすと、あっさりとハボックは白状した。
「タレコミがあったからな」
「タレコミ?」

「『特別急行セントラル行き293便に、盛大な仕掛け花火』」

もちろん、日付は今日。
「消印のない手紙だ」
「・・・無茶苦茶怪しいじゃん」
まぁごもっとも。
確かにこれだけ言えば、普通であればそうだろうけれど。事情はちょっと違う。東部では。
「それが"顔なし"からの繋ぎだからな。得体は知れないが、信憑性は高い」
「"FACELESS"?」
「時々こーゆーネタを軍にタレ込んでくる情報屋みたいな奴だよ。誰も会った事ないんでそう呼ばれてる」
「…何で、みたいな?」
「本職の情報屋かどうかもわかんねーからさ。ただ、思い出した頃にこーゆータレこみしてくんだよ。・・・大佐をご指名でな」
最後の一言に、兄弟は揃って顔を上げた。
「結構際どいネタも混じってるんだよな。しかも地方は限定せず。そんなネタが来た場合には、提供者は無記名の投書や電話だったとか言って情報だけ流すんだが。東方司令部ではほぼ暗黙」
「じゃあ今回もそれで?」
「ああ。だからオレたち的にはある意味確信があったってわけ」
「でも、誰なんでしょうね。それにどうして大佐宛なんでしょう」
「さーな。・・・ちなみに大佐に直接それ聞くのタブーだから気を付けろよ」
「何で?」
「そのタレコミあったら、しばらく大佐のご機嫌がよろしくないんだ」
「え?」
「もしかしたらあの人、誰だか知ってんじゃねぇかな」
"顔なし"からの連絡が来れば、しばらく何か考え込むような素振りを見せて、そっけない一文だけが書かれた便箋を見下ろして、一つ深く息を付く。
それから一言、仕事が増えるぞ、と告げるのだ。
その告知は少なくとも今までは外れた事はない。必ず何らかの成果を上げるので大変色々助かってはいるが。
あの上官は、その手紙の主を一度も捜そうとはしなかったし、表沙汰にしようとする事もない。それどころかなるべく周りには伏せるように言ってくるし、中央には報告すらしていない。ついでに直球で聞いてもはぐらかされて真っ当な答えが返ってきた事はなかった。
「・・・女のヒトなんじゃねーの?」
代表してエドワードが声を潜めながら聞けば、ハボックはタバコに火を灯し、深く吐き出した。
「…ってご意見は多数派なんだが、どうだろなー…」

「・・・ま、オレには関係ないけど」
よ、と腰掛けていた軍用車の荷台から飛び降りると、エドワードは猫のように大きな伸びを一つ。
「行くのか?」
こちらがしゃがんでいるために珍しく下から見上げながら問えば、ヒラと手を振られた。
「そっちにすぐ戻れって煩いんだ」
なるほどね。
じゃなー、と軽く手をふる兄と、ぺこりと頭を下げる弟を見送って、ハボックは静かにタバコを燻らせた。
白い煙が赤茶けた空に細く立ち上る。
「あー…うま…」



作品名:Hey Mr.travellin' Man 作家名:みとなんこ@紺