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 カーテンの波打つ隙間からあふれる光は水谷が閉めたときの淡い白からだんだん赤みを増してきて、もう窓に夕日が当たっていることを知る。30分前にどこぞのテレビドラマのようにオールウェイズと吐き捨て、むくれた水谷がこれ見よがしとばかりに服を着やがったので、だったらオレも裸のままでいる必要はねーなと静かに逆ギレしてかっちりワイシャツのボタンまでとめてしまった。下はズボンで同条件だけど上半身は、オレはワイシャツにTシャツ、水谷はTシャツだけなので1枚厚着しているオレのほうが勝ちだ。……どんな勝負なんだ。水谷が脱がしたオレのTシャツはベッドの下に落ちていた。裏返しになっていたそれはへたりと床へまとまってなんだか不思議とやりきれない気分になる。
 これからやられてしまうのだから当然なんだろうけど、手際悪く乱暴にオレから衣服を取り払う水谷が少し怖かった。水谷もまた組み敷いたオレの上で自分の服を脱ぎ捨てた。背へ受けた蛍光灯に浮かされた肌の色がやたらまぶしかった気がする。ここまで来てしまったらもう後には退けない。でも本気で泣いてやめてって懇願すれば、水谷の熱い手のひらはオレの肌を執拗に撫でるのをやめるだろう。それをしないのはオレが結構水谷のことを好きだからだ。嘘だ、「結構」どころか「かなり本気で」好きなくせに。男なのに男にやられてても構わないくらいの覚悟を持ってしまうほど好きなくせに。
 水谷とつきあうまで普通の高校生だったオレは誰かを抱いたことなんて無く、当然男に抱かれたことも一度も無い。手をどうすればとか声をどうすればとか見当もつかないので、今ベッドの上で執り行われているのはマグロの解体ショーだと思う。ふいに水谷の顔が平坦で柔らかくもない胸元へと近づき、オレはこのやたらでかい心臓の音を聞かれたら格好悪いよなぁと、もう裸にされてしまった時点で整える態勢もないのに心配になる。そんなオレの懸念に気づくことなく、額は胸元にぐいぐい強く押し付けられ、左右に揺れる茶色の髪の中から「うー」という水谷のうめき声が聞こえた。水谷はゆっくり顔を上げ、何事かと驚いているオレの表情を一瞬だけ読むと申し訳なさそうに「ごめん」と吐き捨て、覆い被さっていた身体を退けた。オレは身体を起こして一方的にマグロ解体ショーの終わりを告げた水谷を見た。ベッドの縁に腰掛けた水谷がどうしてがっくりと肩を落としているのかよくわからない。
「水谷、どした?」
「……」
「どっか具合悪い?」
「……ごめん」
 何で謝ってくるんだろう。謝るようなことなんて水谷は何もしていないと思うんだけど。
「なんか自分でもよくわかんないんだけど」
「え?」
「オレ、今日無理みたい」
「なにが?」
「た、立たない?」
 オレが大きく目を見開き驚いてしまったのを水谷は見逃さず、振り返ったと思ったらやたら大きな身振りで弁解した。
「いつもはこうじゃないんだよ!」
「いつもっていつ」
「オールウェイズだよ!」
 そのしょうもないやりとりから30分、密室に2人っきりなのに一言も口をきいていない。水谷はどうしてオレを拒否し続けているのか。ぶっちゃけ傷ついているのはオレのほうだよ。あれだけ好きだのやりたいだの痛くしないだの、ぐだぐだに口説き落とされたからそれなりの覚悟を決めて来たのに、やっぱりオレじゃだめなんだろうか、無理なんだろうか。
 そう、なんてことはない、現実は意外と厳しかっただけなんだよな。水谷はやっぱり男のオレを抱けない。
 それでもすぐにここから立ち去らなかったのは、水谷から何らかのフォローをもらわないと家に帰ってもずっとぐるぐる悩んでしまいそうだからだった。でも水谷がこれ以上オレに何を言えるのだろう。多分オールウェイズで精一杯なんだ。別に水谷にとってオレに入れるのが無理でもいいじゃないか、それで全部がだめになっちゃうわけじゃないし。……でもへこむ。へこまざるを得ない。
作品名:コーコーセーゴーホーム 作家名:さはら