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ユキナ・リュカ ~この世界~

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君と僕(後篇)



結局モンスターは食べられるたぐいだったようで、2人の晩御飯となった。

「なかなか美味しかったでしょ。」
「ああ、ほんとに意外なほどうまかった・・・。」
「なんですか、なんか含みがあるような?」
「いや、気のせいだよ。」

とは言いつつも、ナッシュはあきらかにナナミの事を思い出していたようだ。
ミューズで一度、彼女のシチューを食べる機会があり、即座にぶったおれた記憶が抜けない。
その後、ユキナがその彼女と一緒にミューズの街の入り口で、ジョウイという少年を出迎えていたところを見た。その様子から、きっと身内か何かだと思われた。
そんなユキナが料理がうまいという事に、実はホッとしつつも純粋に驚いていた。

その後とりあえず暗くなると身動きできない(てゆうか道も分からない)為、2人はしかたなく早々に休むことにした。
一応何かあってもお互いすぐに気づけるように、軽く身を寄せ合う。

だがカサリ、という音に、眠っていた2人は目を覚ました。
そのまま静止して様子をうかがう。

「ユキナ・・・」
「うん。」

2人が起き上がり構えるのと同時に音がしたほうから原因が姿を現した。
見るからに獰猛な狼。

「って、なんだ!?」
「マジでか」

ナッシュもユキナも顔をひきつらせ固まった。
数匹かと思われた狼だがわらわらと集まってきた。その数、数十匹。

「え、何コレ、ちょ、マジで?」
「ユキナ、ちょっと抱えるぞ!!」

ナッシュはそう言うが早いか、ユキナを抱え、走り出した。

「って、ちょ、何すんだよ、その抱え方、やめろよ!!」
「言ってる場合じゃないだろっ。」

その抱え方・・・お姫様だっこ。
成長期にあるといえどもまだまだ小さい方のユキナは、ナッシュに軽々と持ち上げられた。
ぎゃあぎゃあ言いながら逃げたが、どうもナッシュという男には運がないのかもしれない。
またもや崖に遭遇した。さすがに飛び降りる無茶は出来ないナッシュはユキナを抱えたまま立ち止る。
振り向けば、囲むように近づいてくる獣。

「ちょ、マジであなた、運、なさすぎだよ。俺けっこう運悪くないってのに、どうしてくれんだよ。」
「・・・。」

言い返せないナッシュ。確かに自分の運のなさは実感していた。

「とりあえずさ、俺おろしてよ。俺はこの崖、飛び降りるからさ、あとはよろしく。」
「ちょ、待て。確かにお前ならこの崖をも乗り越えそうな予感はするが、もしや俺をおきざりか?」
「おとり、なってくれんでしょ?とりあえず、おーろーせー。」
「いやいや、ここで見捨てるとか、どうかと。ね、ほら、俺とユキナは夜をともにした仲じゃないか。」
「まだ夜は終えてないよ。てゆうか、まったくもって意味分からんっての。」

その間も狼はじりじりとせまってきていた。

だがその時、狼の向こうの闇が動いた。
そしてその闇はゾロリと狼たちを飲みこんでいく。
そして気づけばあっという間に、逃げる間もなく、すべての狼がその闇に消えた。
唖然としていた2人は、その闇の近くにいる人物に気づいた。

月明かりに反映している人影は手を差し出す。すると狼たちを飲み込んだ闇は、すっと消えてしまった。
ナッシュは口をぽかんと開けて、その様子を見ていた。
するとその人影から、声が響いた。

「ユキくん・・・誰、それ。」

そうしてから人影が近づいてきた。
見ると、バンダナをした、少年か少女か判断しがたい子供と、緑色の法衣をまとった、これまた綺麗な顔立ちの少年の2人がいる事に気づく。
バンダナの方はニコリとしているがなんとなく睨まれているような気がしないでもない。法衣の方はあきらかに疲れ切ったような表情をしていた。

「マクドールさん!!・・・あとルック。迎えに来てくれたんですか?」

ユキナが嬉しそうな声を出した。ルックはぼそりと、ついでみたいに言うな・・・とつぶやいた。

「えっと、知り合いか・・・?」

ナッシュがユキナに目を合わせて聞いた。

「うん。仲間。探しに来てくれたみたいだ。」
「そうか。それは良かった。」

ナッシュは嬉しそうに言った。
そんな目の前の2人を見ているリュカの表情に気づいたルックは少しだけ下がる。
手を見るとあきらかに右手に何かまだ、黒いものがただよっている。

「こんばんは。あなたは何?なんでユキくんを抱いてるの?」

ニコリとしているがなんとなくうすら寒い感じの笑みで、コテンと首を傾げたリュカが言った。

「へ?」

ナッシュがまぬけな声をあげる。
そういえば・・・。ユキナとナッシュは顔を合わせた。
そういえばまだ抱っこのままじゃん!!

「ちょ、そういえばっ。マジでおろせってっ。」
「いや、なんかつい」
「・・・つい、何?」

慌てておろしているところに、リュカが聞く。

「え、あ、ああ、逃げるのに、な。」
「あ、うん。・・・えっと、マクドールさん・・・?」

リュカが一歩、二歩、と近づく。

「・・・夜をともにした仲・・・?」
「え?いや、それは・・・」
「ほんとにそのままの意味な訳、ないですよー、てマクドールさん、聞いてます?」

どうしたんだろうと不思議そうにしているユキナに、ルックが言った。

「まぁ、聞いてないだろね。ねえ、金髪の人。逃げたほうがいいんじゃない?」
「「へ?」」

ユキナとナッシュの声がかぶさる。
ナッシュはものすごく冷や汗をかき、顔をひきつらせていた。
この子供。
笑っているだけになんだか余計、怖い。なぜか間違いなく、怒っている。
ユキナは首をまたかしげつつ、リュカに向かって言った。

「えーと、マクドールさん?なんかご機嫌斜めそうなんですが・・・とりあえず、この人、悪い人じゃないですよ、一応、助けになってくれたし。なんか不遜な雰囲気なんですが・・・。えっと、まあ恩人といえば恩人です。」

その言葉を聞いて、ナッシュはそれこそ命の恩人とばかりにユキナを見た。

「・・・ユキくんがそう言うなら・・・。」

不服そうなまま、それでもリュカはとりあえず上げようとしていた手を下した。その手のあたりの黒い何かも消えている。

「じゃあ、帰ろう、ユキくん。軍師殿も探しまわってたよ?」
「わぁ・・・一気に帰りたくなくなってきますけど・・・。」
「だめだよ、あれでも軍師殿はユキくんの事、いつも気にかけて心配、してるんだからね。で、この人はどうするの?」

リュカはナッシュの方を見た。
なんだ?といった表情をしているナッシュに、ユキナは聞いた。

「ナッシュはどこ行くつもりだったの?」
「え?ああ、まあとりあえずはどこか近くに街があれば、と・・・」

明確にはどこ、とは言わず、ナッシュが言った。

「ふーん。この辺がよく分からないんですけど、マクドールさん、ルック、この辺に街って?」

リュカは首を傾げるが、ルックが黙ったまま、ユキナとナッシュの後ろの崖の下を差した。

「この下か・・・えらくまた遠いな・・・。」

ナッシュがつぶやいた。するとリュカがニッコリとして言った。

「大丈夫だよ。とっとと送ったげる。ねえ、ルック。」
「・・・分かったよ・・・。」

いつになくルックが素直だ。
そしていつになくマクドールさんが黒い?ユキナはポカンとした。