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こらぼでほすと 襲撃8

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「それから、フェルト。ティエリアたちにお土産探して来い。ミス・スメラギには、酒。いいな? 」
「・・・う、うん・・・」
「大丈夫だ。刹那もいるし、思い浮かばなかったら、オーナーに相談すりゃいいんだ。そうでしょ? オーナー。」
「はい、お任せくださいな。そういうことでしたら、喜んで。」
 さすが、おかん、と、八戒は感心する。子猫操縦法を把握しているからの提案で、保護者らしい気配りだ。ちゃんと、オーナーに花を持たせる辺りが、円滑な人間関係を考えている。

 軽食を食べ終えて、ひと段落ついたら、そろそろ休む時間だ。部屋の手配をしてもらわないと、と、思っていたら、歌姫が立ち上がった。
「フェルトさん、一緒に。」
「いやです。」
「あらあら嫌われてしまいましたか? 」
「ロックオンと寝ます。」
 また、さっきの問答の始まりだ。それは、まずいから、と、ロックオンは言うのだが、フェルトも頑固だ。刹那がよくて、自分がダメというのは納得できないと反論する。もちろん、黒子猫は親猫の許から離れる気はない。ニャーニャーと騒ぐので、歌姫が微笑みつつ、鶴の一声だ。

「わかりました。それでは、みなさん、ご一緒しましょう。ああ、悟浄さんと八戒さんの邪魔はいたしませんから。」
 私くしの寝室なら、四人並んで寝られます、と、優雅におっしゃって、内線で準備をさせる。すぐに、準備完了の知らせが届いたので、フェルトと刹那の手を取って案内して行った。
「ロックオンは? 」
「すぐに来られますよ。ロックオン、クスリを飲んだらいらっしゃってくださいな。案内係が、すぐに参ります。」
 瞬く間のことだったので、大人三人は、思わず見送ってしまった。もちろん、
すぐに、看護士がクスリを用意して来たし、屋敷の人間が案内するつもりで待機している。
「え? どういう・・」
 とりあえずクスリを飲んで、ロックオンが縋るように悟浄と八戒に視線を向けた。
「悪い、諦めてくれ。歌姫さんは絶大すぎて、俺らには、どうともできねぇー。」
 先に、悟浄が声を出した。歌姫様も、親猫は男性とは見做さないということらしい。
「今日だけだと思います。」
 八戒にも、どうともできないので苦笑するしかない。子猫二匹と歌姫に添い寝されることには同情するが、まあ、贅沢といえば贅沢ではある。なんせ、天下の歌姫様だ。普通は、顔を見るぐらいしかできない高嶺の花という評価を欲しいままにしているお方だ。それが、パジャマ姿で、一緒のベッドで添い寝とくれば、全宇宙の真実を知らない歌姫ファンに八つ裂きにされかねないぐらい有り得ない行幸ということになる。
「あの、俺、一応、男なんですよ? 」
「ママニャンだから、いいんだろ? おまえだって、そういう気はねぇーんだから、いいじゃねぇーか。」
「一晩だけですから、我慢してください、ロックオン。」
 だが、真実の姿を知っている人間にとっては、迷惑な話でしかないのが、事実だったりする。できたら、あまりやりたくない、勘弁してくれが本音だ。
「俺、そんなに男らしくないんですかね? 」
「問題点は、そこじゃありませんよ。あなたが、ママだからです。僕だって悟浄がいなかったら確実に巻き込まれているはずですからね。」
「てかな、俺、ここで何もする気にはならんよ。どこにカメラ仕掛けてるかわかったもんじゃねぇーからな。」
 別荘の寝室には、カメラはないことは確認しているが、ここのは確認していない。わざわざ、確認してまで、何かをしようとは、悟浄だって思わない。
「当たり前です。僕も拒否ですよ、悟浄。」
「まあ、大人の夜の生活は、歌姫さんには刺激的過ぎるだろうからなあ。あはははははは。」
「バカなこと言わないでください。どうして、うちの生活を他人様に見せる必要があるんですか? そういうのは、秘密にするもんです。」
「目の前で惚気ないでください、悟浄さん、八戒さん。」
 年中いちゃこら夫夫に、惚気られるのも迷惑だ。当人たちは、惚気ているつもりじゃないのが、さらに性質が悪い。部屋に逃げ帰りたいのだが、屋敷の構造がわからないので、自分の居る部屋が、今ひとつわからないのだ。どうしようかなーと思っていたら、歌姫が舞い戻ってきた。
「ロックオン、行きますよ。」
 腕を掴まれて、微笑まれると逃げ場がない。おやすみーという、残りの大人二人の声に見送られて連行されてしまった。



 子猫と歌姫は、シャワーだ着替えだと、部屋を走り回っているので、連行されてもすることはない。フェルトのほうは、歌姫が世話をしてくれているし、刹那はカラスの行水で、とっとと戻って来る。刹那だけは、別の部屋のシャワーを使って、着替えて戻って来たので、単独だ。
「ちゃんと洗ったのか? 」
「洗った。」
 髪の毛から雫が零れているので、バスタオルで拭いていると、眠気を催してくる。いつもは、すでに寝ている時間だし、クスリを飲んだ所為で、余計にうとうとしてくる。
「真ん中に寝ろ。両側に、俺とフェルトだ。」
 その様子に、黒子猫は、ベッドへ移動する。確かに、歌姫が言った通り、キングサイズのベッドで、大人四人でも余裕がある。
 なんで、添い寝が必要なんだよ、と、ぶつくさと親猫は文句を言っているが、子猫に誘導されると、大人しく真ん中辺りに横になった。
「あんたが心配だからだ。夜中に具合が悪くなったら、どうするつもりだ? 」
 黒子猫が、親猫にかけ布団をかけつつ、そう叱る。この親猫、具合が悪くなっても、何も言わない。それで、ずっと朝まで我慢するのは、子猫にはわかっている。そんなことしなくてもいい、と、思うのだが、聞いてくれないから実力行使している。
「・・・そっか・・・悪いな・・・」
「寝ろ。」
「おやすみ。」
 それだけ言うと、すうっと身体から力が抜けていく。あの負のGN粒子は曲者で、戦闘中に浴びてしまったラッセも、まだ完全には復帰できていない。遺伝子段階の異常というのは、人それぞれの不具合を生じさせるものらしい。宇宙に上がれない親猫のほうが、障害が大きいのだろう。
・・・・ここで待ってるだけでいいんだ・・・・
 本当に、それだけでいいから、と、刹那は思っている。無理させて逢えなくなるよりは、ずっといい。親猫が、地上に居座るようになって寝顔をよく見られるようになった。以前は、自分のほうが早く寝ていたし、体力的にも負けていたので、疲れて沈没するのも早かったからだ。すうっという寝息を吐く親猫は、穏やかな顔をしている。生きているということを実感できて、この時間は大切だ、と、思うようになった。
 それを飽きずに眺めていたら、そっと肩を叩かれた。背後から歌姫が、こちらに、と、誘導している。風呂上りのパジャマ姿になったフェルトも一緒だ。


 寝室の隣の間に誘導されて、そこで、歌姫は、深く頭を下げた。刹那もフェルトも驚いた。
作品名:こらぼでほすと 襲撃8 作家名:篠義