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【かいねこ】千の祈りと罰当たりの恋

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自分で驚かせておいて・・・・・・。


「この前、買い物に行った時のこと、覚えてる?」
「ほぼ毎日行ってるけど、いつのこと?」
「一緒に行った時よ!バカかあんた!!」
「めーちゃん、ミクが起きるから・・・・・・」

僕が宥めると、メイコは苛々と首を振って、

「神社に寄ったでしょ?あの時、ミクが言ったじゃない。『神様っていると思う?』って」
「あ、ああ。うん」
「あの時、ミクがお願いしてたみたい。『皆がずっと一緒にいられますように』って。それで、マスターの転勤の話を聞いて・・・・・・」
「あ、『いい子じゃなかったから』って、そういう」
「あの時、あたしが言ったこと、本気にしてるのよ。自分がいい子じゃなかったから、カイトが引き取られることになったんだって」
「えー、そんなことで」
「そんなこと、なの?」

メイコがじっと、僕の目を見つめる。

「あんたにとっては、そんなことなの?あたし達、家族じゃないの?」
「じゃあ、めーちゃんならどうする?マスターに、仕事辞めてくださいって言うの?」

逆に聞き返すと、メイコは、言葉に詰まって目を逸らした。

「僕達は家族だよ。家族だから、そんな酷いこと言えない。マスターだって、ぎりぎりまで悩んで、一生懸命お願いしてくれたんだよ。どうしても連れていけないから、安心してお願いできる人を捜してくれたんじゃないか。これ以上マスターを追いつめたら、可哀想だよ」
「それは・・・・・・でも・・・・・・」
「はいはい、この話はこれで終わりー。引っ越しまで時間がないんだから、明日から、早速荷造り始めないと。見積もりも取ってさ、シーズンじゃないから、混んでないと思うけど。もー、やることいっぱいあるんだからね?めーちゃんも、ちゃんと手伝ってよ」

僕の言葉に、メイコは無理矢理笑顔を作ると、

「失礼ね、いつだって手伝ってるじゃない」
「嘘だねー。結局、僕が全部やってるじゃないか。これからは、めーちゃんがマスターの面倒見るんだからね。頼むよ、ほんとに」
「うるっさい。カイトのくせに!」

ばしっと腕を叩かれて、痛みに顔をしかめる。
そっぽを向いた隙に、メイコが素早く目元を拭ったのは、見ない振りをした。



「こっちは燃えるゴミ、こっちは燃えないゴミ。資源はあっちで、瓶とか缶とかはこれね」
「何よ、大掃除でも始める気?」
「いい機会だから、全部整理しようと思って。めーちゃんとミクちゃんも、自分の持ち物は自分で詰めてね」
「はいはい」

面倒くさそうに振る舞うメイコと、まだ泣きそうな顔のミクに、僕はエプロンを渡すと、

「はい、これ着けて。ついでに部屋中磨くよ!敷金を取り戻さないと!!」
「あんた・・・・・・細かすぎると、逆にもてないわよ?」
「うるっさいなー。めーちゃんも、ちゃんと掃除してよね!」

まずは、普段使っていない押し入れや天袋の中の物を、引っ張り出す。
いるものといらないものとに分けたり、未整理のままの写真が出てきたり、それをうっかり全部見てしまったり、箱に敷かれた古い新聞記事を、ついうっかり読みふけってしまったりしていたら、夕方に近い時間になってしまった。

「ああっ!しまった!!買い物行かなきゃ!!」
「何?逃げるの?」
「夕飯抜きでいいんなら、このまま続けるけどさ。急いで行ってくるから、二人は片づけしてて」

買い物袋と財布を手に、急いで玄関に向かう。
後ろから、「カイトの裏切り者ー」「お兄ちゃん、いってらっしゃーい」という声が聞こえた。



神社の横を通り過ぎようとして、足を止める。
せまい境内にいろはの姿はなく、僕は首を振って、そのまま歩きだした。


きっと、誰かに引き取られたんだろう。
だから、ここに来る必要がなくなったんだ。

だから、もう、いろはには会えない。


重苦しい気持ちを無理矢理押しやって、商店街に急いだ。




薄暗い道を、急ぎ足で戻る。


早くしないと、マスターが帰ってきちゃうなあ。


それでも、神社が近づくと速度を緩めて、鳥居の前で立ち止まった。
自分でも諦めが悪いのは分かっているけれど、境内へと足を踏み入れる。
以前ミクがやったように、手を合わせてみた。


どうせ、意味のないことなんだろうけれど。


頭を下げ、背を向けた時、

「カイト」

いろはの声に、驚いて振り向く。
ぼんやりとした明かりの下、いろはがじっとこちらを見つめていた。

「い、いろは!あっ、あの」
「どうしたの?」

言葉に詰まっていると、いろはが近づいてきて、僕の顔を見上げる。

「何かあったの?」
「えっ、あ、な、何も・・・・・・何もないよ。それより、あの、久しぶり・・・・・・だね」

ずっと会いたいと思っていたのに、いざ会うと、何を言っていいのか分からなかった。
一生懸命言葉を探していると、いろはが僕の顔をじっと見つめてから、

「ごめん!あたし、カイトに嘘ついてた!」

いきなり、頭を下げた。

「え!?何!?」
「嘘なの!本当はマスターを待ってたんじゃないの!あたし、捨てられて、マスターいないの!マスターはどっか行っちゃって、他に行くとこなくて、あたし、待ってたら・・・・・・ここで待ってたら、もしかして、迎えに来てくれるんじゃないかって、そう思って。ごめん。ごめんなさい。謝ります。謝る、から」

いろはは、視線を足下に落として、

「だから、カイトも、あたしに嘘つかないで」
「え・・・・・・」
「あ、あたしに話しても、意味ないかもしれないけど。あたしに出来ることなんて、たかが知れてるし。何の解決にもならないだろうけど、でも。でも・・・・・・一人で抱え込まないでよ。そんなカイト見るの、辛いよ」

いろはの手が、そっと僕の手に触れる。

「あたし、カイトのこと、好きだよ。カイトが何を言っても、どんなことしても、好きだから」

真剣ないろはの目と、手に触れる温もりに、息が詰まった。
何かを考える前に、いろはを抱きしめる。ぽろぽろと涙が溢れ、目を開けていられなくなった。

「ごめっ・・・・・・いろは・・・・・・ごめん」

言葉をつっかえながら、いろはに全部話す。
マスターの転勤のこと、僕だけが引き取られること。


どうして僕なのか。どうして・・・・・・メイコやミクじゃないのか。
嫌だった。マスターと離れるのも、皆と別れるのも、一人だけ引き取られるのも。


泣きながら、つっかえながら、要領を得ない話を、いろはは黙って聞いてくれた。


石段に腰掛け、全部話終えた頃には、辺りはすっかり暗くなっている。
僕は、二・三度せき込みながら、袖口で顔を拭い、

「ごめん・・・・・・みっともないとこ、見せちゃったね」


言わなくていいことまで言っちゃうし。
本気で、メイコやミクが引き取られればいいって、思ってる訳じゃないのに。


「あー、最低だね、僕。格好悪いなあ。恥ずかしい」

今更取り返しのつかないことだけれど、言わなければよかったと思う。
いろはは、僕の頭を撫でると、