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『魔竜院 THE MOVIE』AURA二次創作

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 多面的に頭が痛くなるわ。
「魔竜院一族の血が呼んだと言えよう!」
 木下が大げさなジェスチャーでまとめた。
「その血さえあれば……わたしの渇きは永久に……」
 普通にアクエリ飲んでる樋野ちょっと黙れ。
「一郎」
 良子がつい、と学ランの袖を引く。
「一郎の血なら飲めなくない」
「未来永劫飲まんでいい!」
 首筋に頭を寄せ始めた良子の頭をアイアンクロー。
「一郎。視界が、視界が。リサーチャーの視覚装置がクラッキングを」
「魔竜剣士も、ついに青の魔女と血の契約を結ぶか」
「いい加減にしないと、お前らまとめて闇に葬り去るぞ」
 最近、口を開くたびに殺意を漏らしてる気がする。ストレスだな。
「落ち着け。魔竜院……いや、光牙」
「佐藤一郎だ! 一文字も合ってねぇよ!」
 そんな会話を繰り広げながらも、妄想戦士というのは一通りのイタタ設定開陳が終われば、落ち着きを見せる生き物だ。
「で、何でここにいるの。お前ら」
 場が鎮まってから、この中でも比較的御しやすい織田に問う。
「少々、クラスの雰囲気が宜しく無い。以上」
「そうか」
 大体、俺と同じ理由なのかよ。こいつらと目的や目的地が重なるのは切ない。
 いじめられていた頃の癖か、割と早く食事を終えてしまったので、良子に目を遣った。
「どうした、一郎」
 良子はノートに何かを書いている。文字列がびっしりと埋め尽くされており、気になって仕方ない。危険なオーラが漂っている
「お見せ」
 なんかお姉様っぽい喋りになった。
「乙女の秘密である。リサーチャーは女子力同盟盟約五万千五百五十六条一項に基づき、秘匿する」
 良子は素早くノートを閉じる。閉じゆくノートのページの端に、魔竜院という文字列を見た気がした。
 そして放課後、約束のない今日は久々に開放された気分だった。
 欲求不満だったようで、いつになく高いテンションで良子を連れ出した。
「よし、ドイトに行こう!」
 デートに誘う言葉として、有史以来最も色気のない一言だった気がする。正直なところ、俺は色気のある場所ってのを知らない。
「了承した」
 それでもついて来る良子は俺にとってありがたい。
「ドイトとは現代の魔宮ときく」
 目を見張り少し興奮した顔で問う良子。
「魔宮、とまで言えるかは分からないけどな」
「子宮か」
「来た客全て転生するわ!」
 ドイトとは大型ホームセンターだ。生きるために必要なものはここで全て揃う。というのは言い過ぎか。ともあれ、目出し帽にバールのようなものから日常で使えるありとあらゆる凶器など、犯罪に使用出来そうなあれこれもガッツリ販売している。
 ぶっちゃけ歩くだけで楽しい。疲れはするさ、けどその疲れは現代の日本では味わいがたい探索の心地よさも併せ持ってる。
「さあ、相棒。行こうぜ――」
 ドイトの自動ドアの前に立つ。郊外型の電気店を思わせるそれは、現代都市にあって異形の城のようにも見える。
 オープンセサミは必要ない。巨城は俺たちを飲み込む。
 そして、ドイトを満喫する。工具に電化にインテリア、作業着、食物、園芸用具。ありとあらゆる現実世界の生活力。良子にきっと欠けたそいつら。
 楽しかった。好きな場所だ。ただそれ以上に、二人で歩くこと、良子に俺なりの普通のやり方を教えられることが、最高に心地いい。
「元気だな。ダーリン」
「もう返事しないぞてめぇ!」
 俺がツッコんだ瞬間、良子は心から楽しそうにクスリと笑った。それでいい。楽しめれば良いんだ。佐藤リョウコ育成計画なんて本当はどうでも良い。俺は多分、二人で出来るだけ笑っていられる場所を用意したいんだ。この狭苦しい世界に。