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『にんげんさんの、ゆりいか』人類は衰退しました二次創作

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「ねえ、また数、増えてない?」
「妖精さん、そーいうものです?」
「伝染ってる……ちょっと伝染ってるから……」
 さて、Yが来たことからもわかるように、今回の件は久しぶりに街の便利屋さんでない公的な職務です。しかもかなーり心証を悪くした調査隊の学者さん方からの依頼になってしまうのそうで、面倒だからと断ることもままなりませなんだ。明日には遺跡へ赴かなければならず、わたしは早急に準備を進めます。
ひとまず、都市遺跡が絡んでいる件からも大事になる予感だけはずっきゅん感じているので、パイオニアことP子さんの力を借りるべくハンドルの手回しに勤しんでおりました。
「はあああああ……肉体労働、きつ……」
 おじいさんの提案で自転車を改造し、高速回転による効率化を実現、今や回した時間と同程度のP子さん活動時間を実現しています。
「顔色悪いけど、随分と頑張んね」
「はあ、はあ……禊といいますやら、贖いといいいますやら……」
 ともあれ、今回は調停官の職が懸かっているといっても過言ではないインポータントミッションなわけで、つまりはしくじることが出来ません。
「しかし、自転車でゼンマイ巻きとは、アナクロなお話だね」
 回転するスポーク、呼応するハンドル。飛び散る汗は乙女のアクセサリー。
「わたし、だって、もっと、モダンかつ、効率的な、手段を、訴えたんです!」
 妖精さんにお願いするとか。妖精さんにお願いするとか。
 しかし、おじいさんに「ダイエットにもなるだろう」なんて言われたら、もう……ねえ?
「まあ、あんたがやる気なのはいいことだ。学舎の中にいる頃じゃ、ニンジン戦争以外にあんたが全力出しているところを見たことない」
 Yが恥ずかしい歴史を掘り出してきます。
「それは、あなただって同じじゃないですか……」
「取りあえず、一応用件は伝えたから私は帰る」
 手提げ程度の荷物を手にすると、Yはペダルを漕ぐわたしを横目にくすのき総合文化センターを後にしようとします。
「……あら、もう帰るんですか?」
 わたしは一旦足を止め、Yへと言葉を放ちます。
「さっさと帰って欲しいんじゃなかったっけ? 残念そうな顔しちゃって」
「そ、そんなわけ……ないですし」
 Yはにやりと笑います。
「まあ、どのみち明日にはまた感動もクソもない再会だ。それまでにしっかりダイエットでも運動不足解消でも何でも励むこったね。ほうき頭」
「別にそんなんじゃないんですってば……もう」
 この上なく、図星でしたけれど。

 翌日、わたしは甚だしく愚めかしい事実に気づいてしまいました。
 普段、運動不足の人間が急に運動するとどうなるか――そう、乳酸値が一時的に上昇するとともに筋が著しく損傷し、その修復のための休養期間が必要となるのです。
 つまり――
「筋肉痛だな。運動不足とは聞いていたが、まさかこの程度の運動で悲鳴をあげるような身体だったとは」
 おじいさんが呆れ顔で残酷な事実を告げます。
「文化人と呼んでください」
「……文化と呼べるものがこの世界にあるならな。この総合文化センターの廃れっぷりを見ろ。おまえはそんな廃れた称号が欲しいのかね?」
「いえ……」
 まくし立てるおじいさんの言葉にわたしは考えを改めます。
「とりあえず、今回は迎えもない。歩いてゆくのはきついだろう。チャリを貸してやる」
「ありがとうございます……」
 そんなこんなで、チャリオットこと戦争馬車の出番です。以前のように無燃料車は使えません。隣にYを乗せ、チャリを駆り行くこと数時間、ようやく都市遺跡へとたどり着きました。
 遠くで煙のようなものが上がっています。作業中の証ですかしらね。
 途中色んな事がありましたよ、ええ。激しい揺れで食べ物をもどしたりとか大雑把すぎる地図のおかげで道に迷ったりとか。それでも、なんとか遅刻せず現場までたどり着けたのは幸運でした。
 馬車の車輪を利用して、P子さんのハンドルもかなり巻けたようですし、こと力仕事の類であれば彼女に任せることで楽が出来……こほん、素早い任務遂行が可能なことでしょう。
「あんた、体調悪いっぽいけど、だいじょうぶ?」
「だ〜いじょ〜ぶ〜い……」
 精一杯の笑顔とVサインをYに返します。
「何か今にも死にそうなばあさんみたいだけど。とりあえず、そんな状態で学者さん方には会いたくないだろうから、詳しいことはあたしが聞いといてやる」
 Yらしからぬありがたい申し出。
「いえ、うんげーキツいですが、これも仕事なので」
「壊れてる……言葉壊れてるから……」
 今回、調停理事会から来た人間はわたしだけですゆえ、さすがにそういった手抜きをするわけにもいきますまい。
 代表者の方のテントまで向かいます。この距離を歩くだけでも筋肉がシュプレヒコールをあげやがるので、どうにもままなりません。
 今回は代表者の方とYと三人での会話だったので、以前のような針のむしろ状態にはなりませんでしたけど、まあやはり、怪訝な目では見られました。仕方ないですよね。
 取りあえず、概要としては都市遺跡群にて妖精さんの一団が居座ることによって、発掘調査の進行に多大な遅延が生じているとのこと。勿論、今の人類さんを虫のように追い払うわけにもいかないので、調停官のわたしに折衝をお願いしたいのだそうです。
「しかし、どうしてでしょう……」
 テントを後にしながらひとりごちります。照りつける日差しが、薄手の服を貫いて肌を焼きました。
「なにが?」
「いえ、本来妖精さんは多くの人前に姿を見せるタイプではないのです」
「それは聞いたことあるけど」
「うーむ。昨日事務所にいた人数が割と限界っぽいんですよね。あれを超えてくると場の楽しい度が高くない限り、妖精さん元気なくなっちゃいますし」
 騒がしいと、妖精さんがいても姿を表しませんしね。
「楽しい度って何?」
「そのまんまの意味です」
「胡乱だ……」
「そういう存在なんですよ。妖精さん」
「ひとまず、妖精の集まる場までいかないと解決しそうにないな」
 Yがまっとうなことを言います。
「そういうことです」
 わたしは一旦チャリまで向かい、P子さんの再起動を行いました。

「ミッションでありますか! 隊長殿」
 深宇宙探査機であるとこのネコミミ少女パイオニアさん、久々の再起動でございます。わたし同様運動不足もあって鬱憤がたまっているのか、以前より割増で元気に見えます。
「P子さんにはきりきり頑張ってもらいますからね」
 わたしは機械の体でもないのにギギギと音がしそうな挙動で腕を持ち上げ、P子さんの肩をたたきます。
「お任せください! 隊長殿には多大な借りがありますゆえ、御恩に彷徨させていただく次第であります!」
 彷徨って。もう遺跡内をさまようのはごめんですよ。
「いえ、借りなんて考えなくていいのです。言ってみれば家族みたいなものですし。家族の間で恩を与えたりって気持ちがあっても嫌でしょう。今回はP子さんのストレス解消みたいなものと思っておけばいいですよ」
 そう話すと、P子さんはクリクリとした大きな目をうるうる輝かせ喜びます。
「隊長殿……! ぴおん感動したですよ! より全力で働かせていただきますっ!」