とあるアーチャーの銀河鉄道 第二章
そのせいで、「キャスター」の水晶球が割れ「間桐臓硯」の式が焼かれた事は「アーチャー」でも気がつかなかった。
ちなみに、「言峰綺礼」にいたっては、夜になっても落ち着かず動き回っていたものだから「雑種いい加減にしろ。」と「金色の青年」に鳩尾食らって崩れ落ちてしまった。
遠坂凛は、家の魔術書を読みながら「アーチャー」にあたる英霊を探していた。まったく「異質」な、存在は本来この世界の物ではなく明らかに違う世界「違う次元」と言ってもいい物だった。「どうしても味方につけたい。」そのくらいの力があった。
「もう全然わからない。」
そういって書庫から出ると「魔法石」の保管庫に向かった。
とりあえず、明日の準備に取り掛かった。
〜運命の早送り〜
昨日、魔力の制御が利かず「暴走」したせいで体中が悲鳴を上げていたが、「料理でアイツに遅れをとる訳にはいかない。」と思い夕べは土蔵に行かず、早めに入浴就寝をして朝ご飯を作ろうと考えた。
今朝起きても、筋肉痛みたいに未だ痛いのだがそれでも早起きして台所に立つ事にした。
そして、ヤツより先に朝食を作ることに成功した。
「今日は、やたら早いな。」
いったい、どの部屋に寝ていたのか解らないが、ヤトが起きてきた。
すると、玄関の呼び鈴が鳴り響いた。
桜かタイガーとは思うが、少し速い気がした。
「はあ〜い。すぐ開けま〜す。」
警戒心なく玄関を開けるとそこには、白い帽子とセーターを着た十歳くらいの少女が立っていた。
それは、まるで手に乗せただけで溶けてしまいそうな、雪のように白い少女だった。
「ふう〜ん。直に見るのははじめてね。士郎」
いくら、俺でも年下に呼び捨てられるいわれはないぞ。
「でも、聞いていたよりいい男で良かった。」
何を言っているのだ?
「士郎くん、その子は?」
桜とタイガーがやってきた。
「まさか、士郎が「営利誘拐」なんて、すぐにお爺様に相談してくれれば、それなりの手筈を整えるのに。」
「絶対ちがう。」
「先輩まさか、そんな子供の方が…。」
「ともかく二人とも、変な妄想は辞めてくれ。」
しかし、二人の妄想は俺の制止すら無視して突っ走っていった。
少女も面白そうに「クスクス」と笑っていた。
すると後ろから声が聞こえた。
「その辺にしておけイリヤ。士郎が困っているぞ。」
ヤトである。
「そうね。悪戯が過ぎちゃったみたいね。」
「おいヤトこれは、どういうことだ。」
「朝食の時に話してやるから、とりあえず味噌汁のガスを止めて来い。」
鍋に火をかけていた事を思い出し、急いで台所に戻った。
私は「二人の士郎」を眺めながら、不器用に茶碗に盛られたご飯を口に運んでいた。
「それで、ヤトこの子はいったい何処のお嬢様なんだい?」
「それ気になる。」
タイガーと呼ばれた女の人も士郎とは違い興味シンシンという目で見てきた。
「うむ。何処から説明すべきか、正直解らないのだが今のお前では、その事実に耐えられるかが問題だ。」
「どういう事だ。」
「どういうこと?」
タイガーと呼ばれた女の人も興味に満ちた目で「ヤト」を名乗っている「士郎」を見つめていた。
桜という子も素知らぬふりををしていても、聞き耳をたてていた。
「藤村先生もショックが大きいと思いますが?」
「何故私も?」
「なんと説明したらいいかな。」
こちらに目で合図を送ってよこした。本当はもう少し困らせてやりたかったのだが、話が進みそうにないのをさっし、切り出すことにした。
「私の名前は、「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン」、アインツベルン家の頭首にして、衛宮切嗣の娘よ。」
二人が、一斉に黙ったかと思えば一斉に驚きの声を上げた。
「「えええええええええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」」
「イリヤ、いきなり過ぎるぞ。」
「だって、そのくらいじゃなきゃ静かになりそうに無かったもの。」
「どういう事だ。(よ。)」
もう一人の女性は何か魔力を感じるが、こちらに驚きの顔するだけで何もしなかったが、何か不穏な魔力を感じた。
しかし、静かになるどころかヤトが質問攻めに会いまったく落ち着かない朝食になった。
ヤトは、事情説明は簡単なものだった。
「「切嗣」が疎遠になる前後の足取りを調べていく途中「アインツベルン家」に居ついていた事を調べ上げた。そして、「前頭首アイリスフィールとの間に生まれた実娘。」が彼女で有る事を知った。」
「き、切嗣さんの娘」
藤村というひとの顔が青くなった。
「親父からそんな事、一言も聞いてないぞ。」
「当たり前だ、彼女の家ともごたごたがあったからな。」
間違いではない。
でも私は、切嗣のことは嫌いではないのだ。
「そうか。」
「士郎君、本当にいいの?」
「なにがです?」
「彼女が「切嗣さんの娘」という話」
「可愛い、雪のような「姉」がいて良かったと思いますよ。」
思わず士郎を抱きしめてしまった。
「雪のよう」
その台詞は自分が生まれ立てのころ切嗣が自分に言ってくれた言葉だった。(雪の様に綺麗だね。)いまだにその言葉は心に残っている数少ない「切嗣」との思い出なのだ。
「切嗣も私をそう言ってくれた。」
「こら、士郎君から離れなさい。」
「嫌」
「離れなさい。」
無理に離そうとして実力行使に出たが、イリヤがまるで嫌がる猫みたいに離れようとはしなかった。
「バーサー・」
「藤村先生、大人気ないですよ。」
ヤトが大きな声で「バーサーカー」を呼ぶ声を遮った。
「イリヤも、落ち着いて朝ご飯を一緒に食べよう。」
士郎にやさしく言われると何故か自然に従ってしまう。
母もそんな「衛宮切嗣」に身体を許したのだろうか?
実際士郎は、血縁ではないはずなのに「似ている。」のは何故だろうか?
いろいろ謎は有るが、この賑やかな食卓も悪くないと思い始めていた。
うるさかった朝食が終わり俺は、朝食分の皿洗いをしていた。イリヤは居間でのんびりと紅茶をすすっていた。
「そろそろ、顔を出してもいいかな。」
「すまんな。毎日肩身の狭い思いをさせて。」
「なあにそのくらい気にするな。」
「あれ?そちらの方は?」
「私のことかな、お嬢さん。」
「ええ、よほど高等な血筋のお方にお見受けしますは。」
「はは、その慧眼は百年の年月を得ても変わりませんな。」
いったい、この男は本当に何歳なのだ?
「アレイスターといえば解りますかな。イリヤスフィール・フォン・アインツベルン嬢」
「まあ、貴方があの高名なアレイスター・クローリー様でしたか。」
知っていたようだ。
曲がりにも「アインツベルン家の頭首」なんて名乗ることはできないであろう。
するとアレイスターが僕に話しかけてきた。
「今日は彼に着いていかないのか?」
「ええ、他の先生を用意していますから問題ないはずです。」
「君がいいなら別に構わんがな。」
「それよりいいですか?」
「何かな?」
「結婚式の方法教えてもらえますか?」
さすがに、アレイスターもこればかりは、知識になかったようだ。
その日朝から落ち着かない人間が、三人も学校に来ていた。
まず一人目、朝錬と言われ剣術訓練の事を思い出していた「衛宮士郎」である。
あれは、食事の後のことである。
作品名:とあるアーチャーの銀河鉄道 第二章 作家名:旅する者