成王ログ
※ナルホドくん×おんにゃのこオドロキくん
ヤバイ、と思われた方は速攻でまわれ右をお願いします。そんなお話です。
「心配して損しました」
多分に含んだ呆れを隠しもせず、王泥喜は溜息と共に言葉を落とした。眼下では顔が真っ青を通り越してビリジアンになった大の男が寝転がっている。
広くはないが狭くも無いソファの端に座り、王泥喜はまた一つ、深い溜息を吐く。それから己の大腿を占領している男のツンツンと尖った頭に手をやって梳きながら、折角の休日を台無しにされた事への不満を心の内で呪いの様に呟いた。
その小さな変化に気付いたのか、男は青褪めた顔のまま苦笑し、一言ごめんと謝罪の言葉を王泥喜へ零した。
「謝る位なら自重して欲しかったです。今日の事、忘れてた訳じゃないでしょう?」
「いや…うん。それはそうなんだけど、何ていうか…久し振りだったから、つい」
「誘惑に負けた、と」
「あー…まあ、そうなる、か、な?奢りだったしねえ」
にへら、と笑う顔にどうしようもなく腹が立って、王泥喜は殴る代わりに射殺す様な視線を男に投げかけた。睨まれた男はひくりと口元が引き攣り硬直している。それに幾分か溜飲が下がり、再度溜息を吐いて、王泥喜は吐露する気は無かった気持ちを吐き出した。
「…楽しみに、してたんですよ」
「………うん、」
「次、何時になるか分からないのに」
「……うん、」
「今日一日、無駄にする気ですか」
「…うん、ごめんね」
謝られて途方に暮れる。そんなつもりも、そんな言葉が欲しかった訳でもない。歯痒さに唇を噛む。
それを制する様に、下から大きな骨ばった手が伸びて王泥喜の頬を包んだ。仄かに馴染む温度にささくれだった気持ちが凪いで行くのが分かる。
「埋め合わせは、今度するから」
「…絶対ですよ」
「うん、約束。まあ僕としてはこれはこれでオイシイ、かな」
「……この状況のどこがですか」
「理由なしにキミにくっついていられる。状態が状態だし、いつもみたいに大声で喚かれたり抵抗されたりしないし。ああ、出来ないし?」
「ッ…、それは、アンタが…!」
「照れ屋な彼女がいると色々大変だよ。まあそれもコレでチャラかな」
そういって幸せそうに笑う男に毒気を抜かれる。呆れたと言わんばかりの態で、その後続いた台詞の疑問を問う。すると男は更に笑みを深くして応えを返した。
「ん?これはコレだよ。ホラ、これ。膝枕。あー柔らかい。気持ちいい」
「張っ倒しますよ」
予想以上に低い声が出たが、それにはほんの少しだけ、照れが含まれている。それを正確に、敏感に感じとったのか、男は堪えた風も無く小さく笑っただけだった。
「ねえ、後ででいいからさ。しじみ汁作ってよ」
「……今回だけですからね」
ぶっきらぼうに返された応えに満足して、男は瞼を閉じた。と同時に小さな柔らかいぬくもりが降りてくる。
細い滑らかな指で剛毛で柔らかくもない髪を丁寧に、まるで割れ物の様に扱う彼女の仕草に安堵とくすぐったさを覚えて、男は細腰に回した腕に少しだけ力を込めた。
end.
*デートの約束をしていたのに、前日羽目外して二日酔いのナルホドくん。
実はそんな記述どっこにもないですが、学パロのつもりで書いていたので先生×生徒です。なので王泥喜君が「次、いつお互い都合がつくか分からないのに!」と怒っている訳です