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こらぼでほすと アッシー1

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「ここに居るしかないのは理解しているんだ。ただ、何か些細なことでも、できないかともがいているんだよ。・・・・今まで、そうやって生きてきた人間は、いきなり、何もしないでいるなんて難しいからね。」
「ですが、これだけの騒ぎになったんですよ? 」
「そこも、知らせないで欲しい。ラクス様には連絡して、そうしてくださるようにお願いした。ドクターにも、指示してもらっている。」
 きみは復帰しただろ? だから、ロックオンの気持ちは判り辛いだろうね、と、トダカは付け足して苦笑する。今までやってきたことを、全部、取り上げられてしまったら、誰だって途方に暮れるだろう。それも、自分以外の仲間は、今も、その場所に居るのだ。危険と隣り合わせの場所に、だ。自分だけが取り残されて、安全な場所に居るという状態が、辛いのだとも説明されて、ハイネも気付く。
・・・・もう戦わなくていいから・・・・・
・・・・ゆっくりしててください・・・・

 そうだ、あの言葉はきついと思ったのは、自分だ。あまり、そういう感情があることを表に出さない親猫だが、あの場面で、それがはっきりと現れた。たぶん、抑え切れなかったのだ。
 ・・・・そうだよな。俺は、長くかかったが、復帰はできると言われていたんだ。だから、我慢できたわけだし。・・・・
 ハイネも戦線離脱から、長い時間かかって復帰した。その間、焦れることはあったが、医者から確約されていたから乗り越えられたともいえる。それがなかったら、どうなっていたか、想像はつかない。
「うちの娘、外面はいいからね。もっと吐き出せばいいんだが、なかなかできない性質みたいだ。・・・・だから、ハイネ。叱ったりはしないでくれ。」
「もしかして、まだ、あいつ、ドツボに嵌ったままなんですか? 」
 前回、昏睡するほどにダウンしたのは、戻れないことに落ち込んだ結果だ。じじいーずたちで、立ち直る手助けはしたので、どうにか持ち直したと思っていたが、実情は違うらしい。
「アレルヤ君のことがなかったら、どうにかなってたと思うんだが、ダブルショックだったようだよ。」
 トダカも、はっきりと問い質したことはないが、ぽつりぽつりと漏らすロックオンの言葉は聴いている。トダカには、少し愚痴めいたものは零すようになったので、それを聞いてやるためにも、ここに滞在させていたのだ。

 次期年長者のアレルヤに、後を任せられると思っていた。そのアレルヤが組織から離れているなんてことが発覚して、さらに落ち込んでいる。ティエリアと刹那の二人で、マイスターとしての仕事をこなすことになってしまったし、その片割れの刹那は世界を放浪している。ティエリア一人に、組織の再建の仕事が降りかかってしまった。そちらに行ければ、少しでも手助けできるのだが、ロックオンには、その許可が下りない。多少、無理してでも、と、ドクターに直訴したらしいが、もちろん許可なんて下りるわけがない。数日間、外出しただけで、電池切れをする身体なんて、とてもではないが、宇宙空間の劣悪な環境に耐えられるわけがないからだ。
「かなりマシになったと思ってたが、それじゃあ、前より悪化してる。」
「うん、だから、なんだ。・・・・本当に、無事でよかったよ。もし、運転中に意識がなくなったら大事故になってただろうからね。刹那君のコートが見つかって、気が抜けたんだろう。」
 ちび猫のコートを探すだけで疲れてしまう親猫の状態というのが、ハイネには判り難いものだが、それが、すでに大仕事になっている状態だというのは理解した。
「でも、俺は叱りますよ? トダカさん。じじいーずは叱れないかもしれないが、俺は、叱ります。まあ、叱り方は考えますが。たぶん、三蔵さんも怒鳴りますよ。俺や三蔵さんが怒鳴らないなんてのはおかしいですからね。」
 保護者や兄貴分は、そこに強制力が発生するから叱れない。だが、自分や三蔵は、こちらの都合で怒鳴ってもいい立場だ。夜中に探偵ごっこさせんな、とか、まずい酒を飲ませるな、とか、いう怒鳴り方なら、ロックオンは個人的にハイネや三蔵に悪いことをしたとは思うだろうが、落ち込まない。むしろ、怒鳴り返してくるかもしれない。それで発散させられるなら、それでもいいだろう、と、ハイネとしては意見を伝えた。
「そういうのならやってくれ。・・・・夜分に済まなかった。」
「いや、これは俺の領分です。お疲れ様でした。ママの状態は、明日にでも報告します。」
 トダカは現役引退組だから、本宅のシステムなんか説明も受けていない。それを動かせて迅速に活動できる人間というのは限られてくる。遊撃隊のハイネが、こういう場合は適任であるのは否めない。

 挨拶して、そこを辞してから、本宅へタクシーで戻った。すでに、その頃には処置は終わっていたが、オーナーがハイネの帰りを待っていてくれた。
「お疲れ様でした、ハイネ。」
 とりあえず、一息ついてくださいね、と、軽食が用意されている。それを食べながら、オーナーから処置と経過については説明された。
「ロックオンは回復が遅いというのは、ご存知ですね? 」
「ええ。」
「それは、これから、さらに遅くなっていくそうです。まだ、三ヶ月前の状態に戻ってはいないそうで、そこまで戻すのにも、まだ一ヶ月近くかかるんだそうです。遺伝子段階の異常というのが、細胞異常を引き起こし、それは身体全体に広がっていくもので、これは現在、止める方法もありません。つまり、どんどん弱っていくものなので、回復も、さらに遅れていくことになるとのことです。」
「それって・・・オーナー。それは・・・その・・・」
「ええ、そういう意味です。ただし、回復が遅れるということは、その細胞異常が広がるのも遅くなるので、今すぐ、どうこうということはありません。」
 淡々と語られている言葉は、あまり聞きたい類のものではなかったが、『吉祥富貴』の諜報担当としては聞かなければならないことだ。以前から、親猫の体調についても把握していたつもりだが、そこまでとは思っていなかった。
「それで、どうするつもりです? オーナー。」
 精神状態の悪い親猫を放置しておくわけにもいかないだろう。とりあえず、別荘へでも移して療養させるほうがいいんじゃないか、と、ハイネは言ったのだが、相手は、「何もしません。」 と、おっしゃる。
「何も? 」
「ちょっと言い方がおかしいですかしら。何も、ロックオンにはしませんが、こちらからアプローチは試みようと考えています。アプローチするのは、年少組だけです。・・・・刹那たちの不在を、私たちで紛らわせていただこうと考えておりますの。」
「ああ、そういうことならわかります。」
 その意味はわかる。ティエリアやフェルトが側に居た時は、元気そうだったし、事実、ティエリアの看病で持ち直したのだから、刹那たちが居ない間、そういう存在を別に用意すればいいのだ。
「ママは、寂しがり屋さんなんです、ハイネ。子猫たちがいれば、お元気そうですわ。それから、しばらくは、なるべく、ハイネもママの様子を気遣ってください。」
「わかりました。そちらは、引き受けましょう。せつニャンが、そろそろ戻るはずだ。」