虚像を愛した罰をやる
少女に両親はいなかった。
子を生んだ母は、子が生まれてから即死。
子供の顔を拝むことなくこの世に別れを告げた。
それでも残された父親は子供を愛で、育てた。
母親の意思を次いで一身に子に愛情を注いだ。
『フラン、この世で一番美しい私たちの、愛しい子…』
そうして育てられたのが、フランと名づけられた少女だ。
フランは何の病にも臥せずにすくすくと育ち、気質も温厚。
命を懸けて生んだ母と懸命に育ててくれた父のお陰か。
少女は町で一番の美人に育った。
名の通り、町一番の美少女になった。
だが、その美しさ故にか周囲に嫉まれることになり。
持って生まれた特殊な力の所為で魔女とまで呼ばれ。
『この、醜い化け物め…!』
そう化け物として扱われてきた少女は誰一人として親しい知人はいなかった。
そして唯一残された肉親の父は流行り病に罹ってしまい、そのまま息をひきとった。
『おまえは、いつまでも私たちの──愛しい子だ』
それから少女は一人になってしまった。
『…いや…だ……独りに、しないで…っ』
本当の意味での一人になってしまった。
作品名:虚像を愛した罰をやる 作家名:煉@切れ痔