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虚像を愛した罰をやる

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「おい、帰んぞ」
「ミーは“おい”っていう名前じゃありませーん」
「殴りてぇ」
「こんな非力な少女に暴力を振るなんて鬼畜ですかー。さすが堕王子」
「よし、刺す」

ずかずかと近づいて来る青年を少女はただ無表情に見つめた。
青年の瞳は前髪で隠れてしまっていて見えないが、その瞳にはきっと怒りの色を映しているのだろう。

尚も焦りも困惑も見せない。
逆に漂々としている様にも見える。

そんな少女の目の前へと来た、その青年の顔。
下から覗き込んだ少女はぷっ、と吹き出した。

「うわぁ…すっごい情けない顔…」

見上げて見た青年の顔、怒っているかと思ったら。
そこで見たのは、眉を寄せて酷く辛そうな表情で。

思わず手が伸びてしまい、手を掴まれた。

それから数秒、二人で見つめ合った。
言葉は交わさず、唯の視線だけを交わして。

沈黙という時が流れていって、そして、終わる。


「…勝手に、いなくなるな」