二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

僕らは電脳世界で恋をする!@3/19更新

INDEX|4ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

ちいさくても王子なんです。





「ひめ、ひめ」
高く、そしてどことなく必至めいた声音に、学人は閉じていた意識をふわりと浮上させる。
瞼をゆっくりと押し上げ、その声の主を探した。「ひめ」という名詞は、とある子から学人に与えられたものだからだ。事後承諾だけれども。
学人としてはさすがに「姫」は恥ずかしいので、名前で呼んで欲しいなぁとそれとなく伝えたのだが、「なななななまえをかるがるしくよぶなどとわわわわたしにはむりだ!」と返ってきた。つまり照れ隠しか、と学人は踏んでいる。なので彼が慣れるまではいいかと姫呼びを容認している現在だ。たまにサイケが羨ましがって、同じように学人を「ひめ」と呼びたがるのには少し困ってたりもするがそれは内緒だ。王子様は繊細なのだ。
「日々也さん」
導かれるように、学人の前に現れたのは身体がすっぽりと入りそうなマントを肩に掛け王冠を髪に飾ったスタイルをした子供が学人の視界にぽんっと入ってきた。王子様のような格好をした幼き子は学人をその眸に映した瞬間、安堵するようにほうっと息を吐いた。
「ひめがどこにもいないからさがしたぞ。しんぱいさせるな」
しかし露骨な安堵が彼の羞恥を誘ったのか、隠すようにわざとらしく尊大に告げる日々也に苦笑しつつも、彼の前にふわりと降り立った。
「ごめんなさい、日々也さん。データーの修正の為に少し潜っていたんですよ」
「し、しごとならばよいのだ。・・・・じゃまをしてわるかった」
「いいえ、邪魔だなんてそんなことはありませんよ」
態度が一転して落ち込んだ様子を見せる――彼は役立つアプリケーションという自負が一際強いのだ――日々也に、学人は視線を合わせるように跪いた。小さな両の手をそっと取り、柔らかく握る。一瞬強張った手はすぐに学人の手を握り返した。
「心配してくれたんですね」
「っ、」
躊躇いの後、やがてこくりと小さく頷いた幼い子に学人は優しく微笑む。本当に皆とても良い子たちだと誰に自慢するでもなく学人は思った。
「ありがとうございます、日々也さん。今度からは日々也さんに心配かけないよう、ちゃんと伝えてから潜る様にしますね」
「だ、だいじょうぶだ!しごとならばよいっていっただろ。わたしはこどもではないから、がくとがしごとをするいみをちゃんとわかっている」
「なら、言わない方がいいということですか」
「う、・・・」
自分でも意地悪な言い方だなぁと思いつつも、目の前でもごもごと口を動かす日々也の行動を待つ。応えはもちろんわかっているけれど、言わなければ伝わらない事を知って欲しいのだ。そうして彼らは学ぶ。人間のように、とまではいかなくても、人間と同じように成長していくのだ。
ぎゅううっと小さい手が学人の手を強く握っても、学人は根気よく待った。
「・・・・いってほしい」
小さい王子様は懸命に言葉を紡ぐ。それを最後まで受け止めるのが学人の役目だ。
「どこかにいくなら、ちゃんといってほしい。・・・・しんぱい、するから」
顔を真っ赤にしてやっと言いきった日々也に、学人は良い子と褒めるように手をそっと外し、小さな身体を抱きしめた。
「はい。ちゃんと伝えますね」
「・・・・ん、」
想っていたよりも彼は不安だったのだろう、素直に抱きしめられ――普段は「わたしはおうじだからだきしめるほうだ!」と言われ中々抱きしめられてくれないのだ。なのにサイケ達を抱っこしている時は羨ましそうに馬に乗っかりながら(これも彼のサイズに合わせてミニチュアの馬だ)見上げてくるのだから、可愛いなぁと思う自分は充分親馬鹿なのだ――あまつさえ、首に回った腕に学人はそっと笑って、優しく背中を叩いてあげた。
「王子様を心配させる悪いお姫様でごめんなさい」
すると、勢いよく顔を上げた日々也はぴっと小さな人差し指を学人の顔の前に立てた。
「だいじょうぶだ!おうじはひめをたくさんしんぱいしてもいいが、しんぱいさせるのはいちばんだめなんだ。だからわたしはがくとにはわたしのことでしんぱいさせないようがんばるんだ。だってわたしはがくとのおうじだからな」
ぱちりと瞬きをした学人は、成程、と目元を綻ばせる。小さくても彼はきちんと王子様なのだ。
「ふふ、さすが王子様ですね。かっこいいです」
そう言うと、たちまち真っ赤になってしまった王子様に学人はもう一度、ありがとうございます、と囁いて抱きしめた。