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過去作品を晒してみよう、の巻。

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 3.太公望+光秀 ほんのり"×"風味

 

 開いた口が塞がらないなどと、初めての経験過ぎてどうしようかと思った。










 子供心と春の空










「・・・・・・・・・明智、殿・・・」
「はい?」
 そう言われて振り向いたのは、確かに太公望の記憶にある明智光秀、と言う人物ではあるようだが。
「貴公、その・・・・・・」
「あぁ、太公望殿、何時の間に髪を黒くお染になったのですか?」
 よくお似合いですよ、と、出鼻を挫かれ言葉に詰まった太公望は、微笑みと共に言われた台詞に1人で微かに照れた。
「そっ、そうだろうか・・・」
「えぇとても。日の光を受けて輝く銀も素敵ですが、やはり黒髪だと落ち着きますね。」
(一見普通の人間に見えて、此方としても対応し易い。)、などと言う密かな本音は勿論光秀の心の中だけに留められている代物だ。
 そんな光秀の内心など露とも知らず、光秀の賛辞に嬉しそうにしている太公望は大層に可愛らしかった(性格的な意味で)。
「それに、黒髪ですと普段の太公望殿よりも優しく見えます。」
「そっ、そうか。」
 伊達に織田にて経験を積んで来た訳では無い。
 加え此度は1人娘の世話までもをしなければならない多忙な一児の父親なのだ。
 判断力、考察力に優れた良将は、彼の仙人まで手玉に取ってしまったようだ。



「それで?私に何か用ですか?」
 そう言われ、太公望はハッ、とその目的を思い出した。
「そうだ、明智殿、貴公、一体その格好、は・・・」
「は?格好?」
 光秀は己の体を見下ろした。





 常ならば袴にて覆われている両の脚は、防具が宛がわれているもののスラリとした形を惜しげもなく晒す。
 上半身は森蘭丸が羽織るような紫のモノ。
 全体的に軽装となった姿が、彼の細さをより強調する。
 そして、その身軽な衣裳が要因か、一割増若く見える気さえする。



 今現在でさえ十分に若く見える上年齢不詳だと言うに、それ以上に若く見えるとはどう言う事か。
 太公望は我が目を疑った。

「先日の戦で、前回の着物が破れてしまって縫いに出していてありませんので、代わりの物を着ているだけですが。」
「いや、そうは言っても・・・」
「何所かおかしいですか?」



 おかしいか、と言われれば特に言及する点は無い。
 似合わない訳では無いのだ、その点は太公望も認めている。
 だが、この場合、違和感が無い時点で困りものだとも、太公望は思うのだ。
 仮にも一児の父である筈の男。何故ここまで違和感無く馴染んでしまうものなのか、理解に苦しむ太公望だ。

「おかしな点は無いが、しかし・・・」
「ならば問題無いと思いますが。」
「だが、やはり貴公程の歳でその格好は如何なものかと・・・」
「聞き捨てなりませんね。何ですか。人の年齢など放っておいて下さい。」
「童顔にも程があると言っている。」
「実際の容姿より遥かに年齢の超えている貴方様に言われる筋合いは少しもありませんが。」



 売り言葉に買い言葉。
 出会った当初こそ委縮していた光秀だが、蜀の雰囲気に呑まれたか、はたまた太公望と言う人物と接点を持ちすぎてしまったからか、
神にも等しい太公望相手に容赦無い反論を投げ掛ける。
 まだそれでも遠慮している方ではあるが、飛び出す言葉の矛先に居るべきは、
光秀が己と対等か、若しくは敵と認めた人物なのだ。
 果たして、前者なのか後者なのか。





「とっ、兎にも角にも、何か上に羽織るが良い。」
「何故です?」
「目の毒だろう。」

 何の事だかさっぱり理解出来ない光秀と、自身ですら今一つ理解しきれない感情を持余す太公望。
 その湧き上がる焦燥をどうにかしたくて、恐らくその原因であると思われる彼の格好をどうにかしようと思うのだが、
意図が全く伝わらないせいか、光秀の不審そうな眼差しが太公望を射抜く。

「何を仰っているのか、意味が分かりませんが。」
「私も良く分かっていないのだ。言及しないで頂きたい。」
「御自身の発言にも責任を持てないのですが。」
「貴公、言うようになったな。」
「私も色々と経験者ですので。」
「・・・・・・・・・えぇい!つべこべ言わずにコレを着ろ!!!」










「――――――・・・・・・父上?」
 父親を探して陣営内を彷徨っていたガラシャは、そこで不思議な光景を目にした。
 共に歩いて探していた星彩にしても、滅多に動かない表情を微かに動かし、その光景に見入った。
 加え同行していた稲など、呆気に取られて開いた口が塞がらない状態だ。
「光秀さん、何をしていらっしゃるのかしら。太公望殿まで・・・」
「父上ばかりずるいのじゃ!妾も追いかけっこしたいのじゃ!!」
「・・・・・・仙人相手に?」
「楽しそうではないか!」
「そう見えるのはガラシャ殿だけではないかしら?」



 その光景とは、必死で走り去る光秀と、その後ろを追い掛ける仙人、太公望の姿。
 太公望には、何故か上掛けが握られている。



「いい加減にしつこいですよ!」
「貴公も往生際が悪い!大人しくコレを着れば良いと言うのに。」
「何故私が貴方の言う通りにしなければならないのです!!」
「何の意地を張っているんだ。」
「貴方こそ!!!」





 蜀中を走り回って展開されたこの鬼ごっこ。
 勝利がどちらの手に渡されたかは、蜀の人間のみぞ知る。