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ふざけんなぁ!! 6

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しゃぶしゃぶのつけ汁を和風ポン酢やゴマダレじゃなく、中華味にしたのは、その方が幽の舌に合うと思ったからだ。
同居を始めた頃の静雄もそうだったけど、今の弟さんに野菜を取らせるのは一苦労で。
ジャンクフードやコンビニ弁当のような、濃い味にすっかり慣らされた彼の味覚は、根野菜の煮物や豆腐料理等の薄味和風は口に合わず、レモンやカボス等のすっぱいものが極端に苦手で、野菜もほぼサラダ意外は箸をつけない徹底振りだった。


「はーい、次でラストですよぉぉぉ♪」


お肉の旨味と野菜のエキスたっぷり出た鍋の最後はうどん、それか卵雑炊がポピュラーなのだろうが、今日はあえて幽が日頃好んで食べていた銘柄の、インスタントの乾メンを5食分たっぷり入れた。
高級醤油を適当に垂らし、トッピングにと、厚みが一センチもある分厚い焼き豚、大量のシナチク、もやし、それにとうもろこしと茹でてスライスした卵もしっかり完備し、ラー油と胡椒を少量入れ、チャーシュー風にしてみたのだ。
乾麺についていた粉末スープも一袋分だけ投入すれば、馴染みの味を感じて貰える筈。


スープの出来栄えは、予想通りとってもコクがあって美味だった。
ただ残念な事に、帝人自身の胃袋はしゃぶしゃぶまでが限界で、ラーメンは二人でつついて貰う事になったのだが、多すぎたかなと心配する帝人の懸念は杞憂に終わりそうだ。

「ああ、てめぇ幽、そんなにチャーシュー大量に取るな!! シナチクともやしを喰え!!」
「兄さんは、俺よりもう三枚多く食べている。それにラーメンも、お椀に盛った回数が、俺より一回多い」
「嘘つくんじゃねーよ」
「知ってるでしょ。俺、記憶力は物凄くいいんだ」
「男がいちいち数えんな、うぜぇ!! それと匙寄越せ!!」


ぎゃあぎゃあと、おたまと菜箸争奪戦まで始めているし。
男にとってラーメンとは別腹なのだろうか?
両名ともあんなにすらりとした体つきなのに、何処に大量の食べ物が入っていくのか不思議だ。

二人の微笑ましい取り合いをBGMに、静雄との約束通り、食後のデザート……、帝人特製のミニサイズなチョコレートフルーツパフェとホットココアを二人分、作ってお盆に載せ持っていけば、鍋はスープも残さず完食だった。
料理人冥利につきる、幸せだ♪


★☆★☆★


(えへへ♪ 明日はひき肉におからを混ぜて、かさ増しした餃子と、豆乳はちみつプリンを作ろう♪ 静雄さん、牛乳じゃないって、気がつくかなぁ?)


大豆は植物性タンパクが豊富だし、繊維もたっぷりで身体にすこぶる良い。
二人のあまりに気持ちよい食べっぷりに、作り手の帝人も上機嫌だった。
何を食べさせるかと考えるだけで、わくわくする。


お湯を溜めた洗い桶の中に、汚れを殆どこそぎ落としたお皿を片っ端から沈めていくと、いつの間にか幽が、食器洗い用のアクリルダワシ(百円均一ショップで買ったアクリル100パーセントの毛糸で、帝人がせっせと編んだもの)を持って横にいた。


「ふえっ!? 今気配、本当に無かったですよ!? びっくりしたぁ!!」
「うん、よく言われる。俺、『幽』(ゆうれい)だし」

今彼は冗談を言ったのか、そうでないのか判断がつかず、帝人はこくりと小首を傾げた。
そんな彼女の戸惑いに、あらゆることに全く動じない彼は、やっぱり無表情のまま、黙々と小鉢をタワシで擦り、泡まみれにしだした。
どうやら洗い物を手伝ってくれるつもりらしい。

「あ、手が荒れますよ」
「大丈夫、俺、頑丈だし」
「ありがとうございます♪」

一応笑顔を作ってお礼を言ってみたが、彼から反応は返ってこない。
仕方なく、帝人も水を出して、黙々と幽がくれる泡まみれの食器を濯ぎだした。


「おい、俺も手伝う」
突如静雄まで気配なく背後に立っていて、帝人はびくんと肩を振るわせた。
仲間はずれが寂しかったか、見たい番組が今は無いからだろうけど、三人シンクに並んでも、仕事が無い。
今夜は鍋料理だったから汚れ物は少ないし、洗い終わったお皿を乾いた布巾で拭いてもらうと、自然乾燥時よりばい菌が付く。
困った。

「静雄さんには、今日お買い物の荷物持ちをしていただいたじゃないですか。ですからコーヒーでも飲みながら、ゆっくりしていてください♪」
「嫌だ、俺も混ぜろ」
(……あはははは、そっか、寂しかった方ですか……)
大きな図体しているのに、相変わらず可愛らしい。
ますます困った。
彼の得意なノンアルコールのカクテルを、作ってください♪と強請っても、今の満腹な胃袋に詰め込むスペースが無いし。
でも、何でもいいから早く用事をつくらないと、ぐずぐずすれば彼は直ぐにキレてしまう。


「兄さん、はいお仕事」


何時の間に連れてきたのだろう。幽がいきなり、独尊丸をぽいっと放り投げた。
「のわああああああああ、おい、あぶねぇじゃねーか!?」
静雄は基本的に、か弱い小動物にとても優しい。
片手の平に乗っかれるぐらい小さい仔猫を、落としたり払いのける暴挙などできず、潰してしまわないよう、かちんこちんに固まって抱っこしている。


「帝人、お風呂ってもう沸いてる?」
「ばっちりです」
時間のやりくりは彼女の得意技だ。鍋をしている時、同時進行で仕掛けておいたとも。
なんせもう直ぐ期末テスト、今の所、大体22時からの約2時間が、彼女の集中できる貴重な勉強時間だ。
自分は勉強にそう熱心ではないが、親に通知表を見せねばならないし、何より正臣だけには負けたくない。
でもタダで置いて貰っている以上、家事の手を抜く訳にはいかないのだ。


「じゃ、洗ってやって。兄さん宜しくね」


そのまま彼は、フリーズを起こしていた兄の背をきゅいきゅい押し、お風呂の方向へと追いやってしまった。
静雄の方も、弟に一方的に用事を言いつけられたというのに、抵抗もせずギクシャクと向かっていくし。
本当に真面目で純朴な人だ。


再び、シンクに戻って泡にまみれて汚れ物を洗っている幽は、やっぱり静雄と兄弟だ。
彼の豪快な洗剤の使い方は、何と帝人の一週間分を一回で使ってしまう勢いだった。
(うわあああああ、もう原液をそのままタワシにつけるなぁぁぁぁ!!)
(其処のボトルに作ってある、1/10に薄めた奴を使いやがれぇぇぇぇ!!)

と思っていても、家主の弟に怒鳴れる訳も無く。
心の中で『うおおおおおおおおおお!!』と、や狂いそうになりながらも、必死で笑顔を作り続けた。


そして洗い物がそろそろ終盤にさしかかった時、今までずっと無言だった彼は、唐突に口火を切った。
「ねぇ帝人。お前、そんな風に、俺や兄さんの前でいい子な演技続けていて、疲れないの?」
帝人の作り笑顔が、ぴしりと強張った。


不意打ちに、顔から血の気が引く。
これってかなりやばいんじゃないの?
青ざめた顔を隠す為、帝人はにっぱり笑顔を作ったが、強張っているのが自分でも判る。


「えへへ、演技って……、私一般人だし、そんな器用な芸当、とてもできませんって」
作品名:ふざけんなぁ!! 6 作家名:みかる