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ふざけんなぁ!! 6

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自分は大体、こんな兄を持った覚えなんてねぇ。

「門田ぁぁぁ、何でてめぇがここにいやがる、あああ?」
「八つ当たりすんじゃねぇって。今日の現場が、其処の角ビルなんだ。昼飯を買いにコンビニにいく途中でな」
「だったらさっさと行きやがれ!!」
「門田、今日もタイル張りか? 暑いのに精が出るな」

拗ねてる静雄をほっぽって、トムがにこやかに話を振る。
この頃バンに乗る四人組みと上司は、気が合ったのか、静雄という共通の知人抜きでもとっても仲が良い。

「いえ先輩。左官仕事じゃなくて、パソコンのインターネットケーブルやTV配線を隠す作業です。ほら、大量のコードがうねうねっと床にあると、見た目も悪いわ、足引っ掛けるどんくさい奴とかもいて危ないし。だから壁や天井とかのコーナーにコードを這わせてやって、同色のゴムのカバーとかで、見栄え良く、目立たないように隠してやるんです」
「ふーん、ま、難しい事はわかんねぇけど、お前は色々手広くやってんだなぁ」
「うちの会社の場合、メインは左官ですがそれだけじゃ食っていけないし。壁紙の張替えでも何でも、一応内装関係は全般手がけてますんで、仕事あったら紹介してください」
「そっか。じゃ、今度静雄が壁をぶち抜いたら、お前さんに頼むわ」
「はい、任せてください」


軽い挨拶を交わしている二人の会話を、不貞腐れながら煙草を咥えて聞いていた静雄は、突如がばりと門田の両肩を鷲掴んだ。

「おい、てめぇさっきインターネットっつったよな? それって俺の家にも引けるか?」
「はぁ?」

始め、門田は『こいつ何言ってるんだ』という、きょとんとした目で見上げてきた。
「東京都内で、ネットを普通に繋げられないマンションがもしあるんなら、そっちの方が問題だと俺は思うがな」
「じゃ、できるんだな。直ぐにやってくれ」
「………そりゃ、うちは仕事として依頼されりゃ何でもやるけどな、工務店に頼むより、家電量販店に行った方が断然安いぞ。プロダイバーにも加入するからって、店が紹介している奴を込みで取り扱ってるパソコン買えば、オールで7万以下なんてザラだし……」
「……プロダ……、込み? あー、わかんねー………、なんだそりゃ?……」
「…………」

門田はガリガリと、黒い帽子の上から頭を掻いた。
一から説明するの、勘弁してくれや……という、そんな態度がありあり見えてイラッとくる。

「おいおい、どういう心境の変化だ? 静雄がパソコンなんて、ちょっと想像つかないべ。なんで急に? 大体、会社のだってさ、取立て先の地図を調べるのですらお前、人差し指一本でぽちぽちカーソル押しで、うぜぇとか悪態つきながら苦戦してるのに」

「いやトムさん。実は帝人プレゼントしてやりたいんっすよ。あいつ、仕送りゼロの極貧苦学生だし、家事もあるし、俺が骨折って怪我させちまったから、バイトとかも満足にできねぇし。七夕の短冊に、懸賞か何かでパソコンが当たりますようになんて、神頼みで書くぐらいなら、よっぽど欲しいんじゃねーかと思って。なら、叶えてやりてぇじゃないですか」
「そうだなぁ。高校生の遊びたい盛りなのに、献身的にお前に尽くしてくれてるしなぁ。ご褒美に、ここは一つ買ってやってもいいんじゃねぇの? 全部ひっくるめてで七万円ならさ、今のお前ならそんぐらい蓄えあんだろ?」
「うすっ」

帝人と暮らし始めてから、暴れて会社の壁やソファーを壊す回数も、外で食う機会も激減し、出費がかなり減ったのだ。
しかも帝人が毎月要求する折半の食費でさえ、静雄の煙草代とほぼ変わらない今、通帳の残高の数字は確実に増えてきている。
このペースで貯めていけば、帝人が高校を卒業して結婚する頃、彼女が例え私立大学に進学したって、静雄個人のお金で学費を払ってやれるだろう。


「家電量販店なら、やっぱ秋葉原っすかね」
「静雄、不安なら俺が一緒に行ってやるべ。あそこは店も多いが、パソコンも種類が多彩すぎて、きっとお前選ぶ前に挫折すると思うし。帝人ちゃんにサプライズでプレゼントするならさ、彼女と一緒って訳にもいかねぇだろ?」
「トムさん、ありがとうっす!!」
「………やめとけ、静雄………」

優しい上司の気配りもあり、折角静雄もその気になっていたのに、何故か門田が渋い顔になり、重々しく首を横に振っている。
「ああ、何でだ?」
「調べ物やネットなら、携帯やスマートフォンで十分だろが。大体お前、遊びたい盛りの竜ヶ峰が、与えられたパソコンにがっつり夢中になって、チャットやネットゲームとかやりまくってさ、お前を全く構わなくなっても我慢できるのか? キレてパソコンを壊すのがオチだろが」

「おいおい、そんな極端な例をださなくったって」
「嫌、先輩。俺は竜ヶ峰が、重症レベルのパソコン中毒者になると思います」
「……断言かよ……」
「門田、俺の知らねぇ所で、何かあったのか?」

静雄の動物的勘が働いた。
しかも、どんぴしゃだったらしく、みるみる門田の顔が強張っていくし。
イラッと来た。
上司もきょとんと小首を傾げている。

「帝人はTVすら、俺に付き合ってぐれぇしか、殆ど見ないんだ。携帯ゲームとかもやってねぇし、紀田や女友達や親とメールぐらいはするけどさ、チャットなんてしてるの見た事もねぇ。なのに何で反対するんだ? 何か秘密があるんなら、とっとと吐きやがれ」
そう食い下がってる真っ最中だった。


「あー、ドタチンとシズシズとトムトムだぁ♪ こんな所で会うなんて、偶然~♪」
「門田さん、平和島さん、田中さん、こんちわっす♪」


狩沢と遊馬崎が、にこやかに手を振りつつ歩み寄ってきやがった。
「今から私達、電撃文庫の新刊を買って、その後和風メイドカフェにランチを食べにいくんだ♪ 折角だし、三人も一緒にどう?」
「丁度七夕イベント真っ最中とかで、メイドさん、織姫様のコスしてるんです♪♪ 明日で終わりっすよ♪♪ 何度行っても萌えるっす♪♪ さあさあ、一緒にオムライスに、ケチャップで名前を書いて貰いに行きましょう♪♪」
「……だから、お前達は外で堂々とそういう会話をするなって……」

もう何度も注意しているのだろう、心底ウンザリといった風情で、門田が大きく溜息を吐いた。
だが、慣れっこな二人のテンションは全く変わらず、「行こう♪」「行きましょう♪」とウゼェ。
いつも行動を一緒にしている癖に、これでこの二人は付き合ってないというから驚きだ。

すっかり毒気を抜かれてしまい、静雄のムカつきも何処かに消えてしまった。
門田は脅したって簡単に吐くような男じゃねぇし、今の居心地の良い人間関係を崩したくないと思う、静雄自身の欲もある。
それに、己は自分に自信が持てない男で。
トムについさっき頑張れと言われたばかりなのに、そんな事などすっかり忘れ、気弱にも、直ぐに他人に意見を求める小市民へと成り下がる。

「でもなぁ……、俺、マジで帝人の喜ぶ顔も見たいんだ。なぁ、パソコン、プレゼントするの、本当に止めたほうがいいのか?」

そう未練がましく門田に聞いたのに、何故か狩沢と遊馬崎が二人揃って小首を傾げた。
「それ、不味くない?」
「不味いっすね」
「みかぷーにパソコン与えたら最後よね」
「そうっすね」
作品名:ふざけんなぁ!! 6 作家名:みかる