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こらぼでほすと アッシー4

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 デスクワークもございますので、何人かのスタッフは出入りすると思います、と、歌姫様はおっしゃって、対面のソファを勧める。年末までの、この時間は空白の時間で、大概のこの時期は別荘で滞在するのだという。クリスマスまでのカウントダウンが始まる頃から、年末まではフル活動になるから、ちょうど身体を休めるにも都合がいいらしい。もちろん、店も、この時期は閑古鳥が鳴いているから、適当に休みにしている。店のほうも、クリスマス前から客が連日、押し寄せるので、それまでの休養期間となる。
「この時期は、どこも年末までの段取りで忙しくて、講演も会議もございませんでしょ? 」
「ラクス嬢ちゃん、キラはどうしてるんだ? 」
 いつもなら、歌姫様はキラも呼んで楽しく過ごすのに、今回は、キラが見当たらないから、鷹が疑問に感じた。
「キラは、お里帰りです。オーヴのヤマト家へアスランと帰りました。ですから、ママ、私と遊んでくださいませね? 」
「いいけど。それなら、仕事を手伝おうか? できそうなことがあったら言ってくれよ? 」
 どうせ、ダラダラナマケモノモードなのだから、手伝えることがあるなら、と、ロックオンは提案したが、はふうと歌姫様は呆れたように息を吐き出した。
「私は遊んでくださいと申し上げましたよ? ママ。」
「でも、仕事すんだろ? 」
「それは、ママがお休みの間にやります。」
「遊べって言っても、俺はゲームもあんまりできないぞ? 」
「レイに聞きましたよ? 世界遺産の映像を解説されて見たいとおっしゃったのでは? 」
「ああ、少しずつ解説してもらってる。」
「では、とりあえず、それを。それから、お菓子作りの手伝いをお願いします。」
「え? ラクスが料理するのか? 」
「ええ、趣味で、休みの時は、自分で食事も賄います。ママの分も作りますから楽しみにしてくださいね。」
「オーナーのお菓子と料理は、なかなかのもんだぜ? ママ。」
 毎年、この時期は、歌姫がラボの差し入れのお菓子を作ったり、食事も準備したりするから、恒例のお楽しみになっている。今年は、忙しくしているので、なかなかいい余興になるだろう。
「いつもは、アスランが助手をしてくださいますが、今年は独りですので、ママにアシスタントをお願いしてもよろしいですか? 」
「ああ、そういうのなら得意だから、任せてくれ。」
 じゃあ、早速、第一弾をお披露目いたしますわね? と、ラクスが居間から出て行った。どうやら、休憩していただけらしい。
「本当に趣味なのか? 鷹さん。」
「ああ、以前、キラのママのカリダさんと一緒に作ってたらしい。オーナーも二年ほど隠遁生活していた時期があるんだ。その時に習ったんだそうだ。」
 いろいろと事情があってな、と、鷹は、そこのところは適当なことを言った。わざわざ、そこいらの事情までも説明する必要はないだろう。なんせ、歌姫様は暗殺されそうになって隠れていたのだから。

 ほどなく、トレイを手にして歌姫様は戻って来た。そこには、まだ温かいシフォンケーキと生クリームが載せられた皿がある。
「味見してください。」
 たくさんは食べられないだろうロックオンの分は、鷹の半分の量だ。それをテーブルに置いてくれる。すぐに、紅茶も運ばれてきた。食べられるかな、と、ロックオンも考えつつ皿を持つ。生クリームを掬って、ケーキを小さくカットして口に含んだ。じわりと生クリームが口中で融けてケーキと一緒に喉へ落ちていく。
「・・・・美味い・・・」
「まあ、それはよろしゅうございました。」
 それを確認して、鷹も口に放り込む。確かに、それほど甘くなくて、大人向けの味に仕上がっている。
「腕を上げたな? ラクス嬢ちゃん。」
「うふふふ・・・今年は欧州のほうを回っていましたから、いい勉強になりました。」
「これなら、みんな、喜ぶぞ? イザークがお墨付きを出しそうだ。」
「いえいえ、なかなか、イザークの舌には適いません。」
 イザークは甘いものに目がない。だが、高級品しか口にしていないから異常に舌が肥えていて、普通のケーキでは満足しないのだ。材料も、作るパティシィエ当人の腕も厳選されたものでないと美味しいとは言わないというセレブリティーな人種だ。歌姫様のお菓子は、カリダ直伝だから、材料なんかに拘りはない。子供が好きそうな素朴なお菓子だから、イザークの舌を唸らせるということはないのだ。
「あいつのは異常だからなあ。」
「キラは喜んでくれますのにね。」
 キラは、カリダの手作りお菓子で育っているので、歌姫様が同じものを作ってくれるから大喜びで食べている。アスランも、十三歳までは、同じことだったから、こちらにも好評だ。鷹が食べ終わって、横を見ると、半分ほど残している皿がある。
「すまない、ラクス。美味しいんだが、全部は無理そうだ。」
「ええ、食べられるだけでよろしいんです。・・・そうそう、お昼は、ミネストローネとカリフラワァーのスープと、どちらがよろしいですか? 」
「え? 俺の? 」
「はい。流動食だとお聞きしましたので、具沢山のスープを用意しようと思っております。」
 もちろん、私くしは普通に食べますので、それに、メインディッシュをつける予定ですが? と、言われて、ロックオンも苦笑する。
「じゃあ、カリフラワァーのスープってやつを。」
「はい、承りました。鷹さんは、ご一緒なさいます? 」
「ああ、ご相伴に預かりたいね。」
 ラボのスタッフ全員の分までは、さすがに作れない。たまに、大鍋料理はするが、毎回ではないので尋ねた。年少組も忙しい時期だから、ちょうど歌姫が来てくれて助かった、と、鷹は内心で安堵する。ほっておくと碌な事がないのは、周知の事実だから、出来る限り、誰かを傍に配置しておきたいのだが、独立治安維持部隊のことで、それもままならなくて考えていたところだったのだ。
「わかりました。では、仕上げてまいりますわ。」
「じゃあ、手伝うよ、ラクス。」
 鷹を残して、歌姫とロックオンは厨房に行ってしまった。まあ、ちょうどいい。歌姫も、甘えられる存在があればいいし、親猫も甘えてくれる子猫の代わりがあれば、少しは気持ちも落ち着くだろう。




 三食の食事を用意するぐらいは、ちょうどいい気晴らしになる。親猫は、まだ、スープだけだから、ラボにいる誰かが順番に一緒に相伴している。食事が終われば片付けも自分たちだ。親猫と歌姫様が、ふたりして食器を洗ったり拭いたりしている光景というのは、ここだけのことだろう。
「野菜を、なるべく摂りたいのですけど、温野菜のサラダやスープぐらいしか思い浮かばなくて。」
「それなら、アイリッシュシチューはどうだ? あれなら、野菜はグダグダになるまで煮込むからいいんじゃないか? 」
「レシピはございますか? ママ。」
「うーん、適当なんだよなあ。試しに俺が作るから、それでよければ教えるよ。その代わり、ケーキの作り方を教えてくれないか? 本格的なのは、やったことがないんだ。」
「それでしたら、お任せください。」